うだるような暑さの中、俺は何かの物音で目が覚めた。
時刻は、もう昼を回ったところか。
頭はまだボーッとしている。
完全に覚めきらぬ頭をゆっくり動かし、俺は物音の方に目をやる。
…そこで、一気に俺の目は見開かれた。
窓の外に、見たこともない男が顔を押し付けるようにして、俺を覗いていたのだ。
「…ぅお゙ぉーーお゙…!」
お゙ぉおーーーぃ!!」
―ドンドン!ドンドン!
男は何か叫びながら、窓を叩いたり、無理矢理開けようとしている。
その恐ろしく歪んだ形相に、俺は恐怖で体が固まった。
―ドンドンドン!
―ガチャ!ガチャガチャ!
おいおい、お前誰だよ?
てか、そもそもそこから顔を覗かせるって、どんだけ背が高いんだよ?
俺が縦に2人並んだとしても、そんなとこ届かねーぞ?
そんことを妙に冷静に考えながら、体を動かそうとしたが…。
ああ…案の定、動かない。
手足だけは、かろうじて動くが、まるで何かで縛り付けられたように動けない。
声を出そうとした。
…出ない。
なぜか喉がカラカラで、しわがれたような掠れた声が、かろうじて絞り出せる程度だ。
これも、あいつの仕業か?
「ゔおぉおーーーーっ!!
…開けろー!開けろー!」
男は、必死の形相で窓を叩いている。
―ドンドンドンドンドンドンドンドンドン!!!
バカ野郎。
開けられる訳ないだろうが。
そんな悪態をつきながらも、おれの意識はまた飛びそうになっていた。
全身は汗でぐっしょり濡れている。
情けないが、こんなときに頭に浮かぶのは、母親の顔だ。
人間、いくつになっても最後は、母親に抱かれた記憶に戻るのかなー…。
激しく窓を叩く音を遠くに感じながら…俺は気を失った。
―――――――
「…あっ!やっと救急車が来た。
おーい!こっちです!
この車です!!」
「…可哀想に。
こんな赤ちゃんを炎天下に駐車場に置き去りにするなんて…。
あー…良かった…。
まだかろうじて息はありますね。」
怖い話投稿:ホラーテラー 海星さん
作者怖話