初投稿です。
とても長い割に内容が薄くありがちですがよかったら読んでください。
「はやく!車だそうよ!」
「待って、エンジンかかんない…」
「早くしないと追いつかれる!」
「わかって…」
「あああぁ!」
ある日、友達と思い立ちドライブに行こうということになった。
季節は夏が終わり金木犀の香りがしたりして秋の訪れを感じさせる頃。
二人でよく行く山中で夜景がよく見える場所を目的地として私たちは車を走らせた。
車内ではバイトの話や学校の話、恋の話など他愛のない話をしていたのを覚えている。
目的地が近くなって内心もうすぐだなど心を躍らせていた。
しかし目的地のお勧めスポットにはすでに先客がいて、水を差すのも申し訳なかったので他のスポットに移ることに。
踊っていた心は折れかけていたが、少し先に夜景の見栄えは劣るが同じような駐車場があったのを思い出した。
友達にも了解を得てその場所へ。
そこに着いた時、車は私たちの物だけだった。
その場所は何度か通り過ぎたことがあるのだが不思議といつも車が止っていなかった。
私はそこに車を止め二人で連れだって車を降りた。
まだ夏が終わったばかりなのだが夜中の山中ということもあり不思議なくらいの寒さを感じた。
今思えば温度的な物ではなかったのかもしれない。
冬の寒さのような心地よいものではなかった気がする。
二人で夜景を見つつ煙草に火をつけ再び話を咲かせる。
そこで流れから怖い話になった。
その友達はしばしば不思議な体験をする子。
いわゆる見える子。
その体験談を話してもらっていた。
私は嫌な雰囲気を感じる程度なので興味津津に話に食らいついていた。
友達が
「もし目の前の林から何か出てきたらどうする?」
そんな質問をぶつけてきた。
「とりあえず車に乗って逃げる。
」
そんなありきたりな答えを述べた。
「自分だったら走って逃げるな。
」
「走ってって追いつかれたらどうするの(笑)」
なんて笑いながら話していた。
しばらくそんな討論を繰り広げていると友達が
「そういえばここそんなに雰囲気よくないよね。
寒いからかな?」
なんて言い出した。
確かに自分も思っていた。
言葉では言い表し難いような雰囲気。
なんというか閉鎖空間に閉じ込められたような圧迫感に似た焦燥感と重苦しさ。
「それ思った。
」
と答え、自分も考えすぎだろうくらいにしか思わなかった。
友達が立て続けに言う。
「不思議体験の前兆見たい」
いやいや、怖いじゃないか。
と思いながら冗談だと思っていた。
「場所変えよう。
」
友達が少し真剣に言いだしたので、了解して煙草の火を消し車のキーを探すためポケットに手を突っ込んだ。
風が出てきたな。
妙に寒い。
でも風は生ぬるいな。
ふと友達に視線を向ける。
友達は一点を見つめ微動だにしない。
「どうした?」
声をかけてみた。
しばしの沈黙。
友達が口を開く。
「あそこでなんか動いてない?」
「鹿か猪じゃない?この辺よくいるし。
」
ん?ふと違和感。
友達は目が悪い。
眼鏡をかけないと車を運転できないくらい。
自分は目がいいのでどの程度なのかはわからないが友達の目が悪いことは知っていた。
その上、街灯がなくほぼ真っ暗である。
「目悪いのによく見えるね」
「ね。
良くない物かも」
「なんか感じる?」
「うん。
」
その時、私は生まれて初めて「見えた」。
ゆっくりと、だが確実にこちらに向かってくる。
山の斜面をふらふらと左右に揺れながら動いている。
動物ではない。
そこだけやけに鮮明に見える。
写真から浮き出したようにソレは動いている。
あれはいけない。
直感的に感じた。
「逃げよう」
不意につんざく様に耳に届いた声。
私は目が離せず友達の声で我に返った。
車まで走った。
が、途中でキーを落としてしまった。
キーを拾おうとして振り返った。
目が合ってしまった。
犬の目を斜めから見た時のような赤っぽく光る二つの目。
紛れもなくそれはこちらを見据えている。
ソレはさっきの速さで動いていればまだ斜面を登っているはずだ。
ソレは30mくらい離れたところに佇んでこっちを見ていた。
キーを拾って走る。
ただそれだけのことをしたいだけなのに体が思うように動かない。
膝が笑っている。
堪えながら走って車にたどりつく。
インテリジェンスキーでよかった。
なんて思う余裕はなかったがすぐさまドアを開け車に乗り込みドアとロックを閉める。
ふとドアの外を見る。
ソレはさっきの場所から動いていなかった。
少し安心した。
が友達は少し焦っていた。
「早く!車だそうよ!」
わかってる。
自分だって早く逃げたいんだから。
再び窓の外に視線を移す。
ソレが動き出していた。
しかもそれはさっきよりも近くなっていた。
「早くエンジンかけてよ!」
言われなくてもやってる。
外見たときから。
しかしおかしい。
ありがちな話だ。
エンジンがかからない。
「早く早く!」
「待って、エンジンかかんない…」
「早くしないと追いつかれる!」
「わかって…」
「あああぁ!」
その声と同時にエンジンがかかった。
窓の外にはソレ。
手をのばせば届きそうな距離。
車を出す。
速度なんて気にしてる暇はない。
ただ山から下るためにひた走る。
友達がしきりに後ろを気にしている。
これだけのスピード出している、追いつかれない。
この根拠のない思い込みが間違いだった。
ソレは自分の足で動いているように見えたが、地面をスーと動いている。
揺れている速さと足の動きは関係なく車に吸い込まれるように動いているのだ。
納まっていたいた脈が再び舞い上がる。
ソレは車にすぐ後ろにぴったりと付いてくる。
車に異常が出始めた。
オーディオから変な音が出始めタイヤが凹凸の付いたオレンジ線を踏んだ様にブーブーと鳴り始めた。
ハンドルまでバイブレーションを起こしている。
その時、エアコンの吹き出し口から何か聞こえた。
「…えか」
オーディオの異常が治った。
やっと納まったと思った瞬間。
目の前に黒い影が現れた。
急ブレーキ。
間に合わない。
。
衝撃が伝わる。
しかし衝撃は上から。
後ろを見た。
ソレはいない。
助かったのか?友達と目を見合わせ溜息をついた。
しかしその瞬間。
車内が凍りついた。
フロントガラス上部からするすると流れてきた液体。
色はわからなかった。
それと一緒に消えたソレが顔を見せた。
口が動いている。
聞こえない、はずだった。
吹き出し口から聞こえた音。
「呼んだのはお前か」
車が揺れる。
友達は気を失っている。
自分も意識が遠のく。
自分はマンションか学校かわからないが階段を昇っていた。
何かに追われている。
見覚えがある。
どこだ?あぁ思い出した。
この後、変なおじさんが踊り場でニヤニヤしながら私の事みてるんだ。
そこで後ろ向くと追いつかれちゃうんだっけ。
ああ、これ夢だ。
見たことある。
追いつかれてどうなるんだっけ。
覚えてないや、デジャブだね。
そんなことを思いながら階段を昇り続ける。
そして思った通り変なおじさんに会う。
やっぱり嘲笑うかのような顔。
後ろを振り返る。
見たこともない怖ろしい形相をした…人間?一瞬感じた。
これ見たことある。
そこで目が覚めた。
あぁまた夢か。
車の中。
あれなんで車に乗ってるんだ?あぁ気を失って…友達を起こす。
外は夜が明けてはいたが雨が降っていて霧が深い。
恐怖心が残っていたが外に出て車の上を確認する。
異常はない。
後ろは…絶句。
手形がいくつも付いている。
何故あんなことの後にあんな夢…と思って車にもどり煙草に火をつける。
夢の中のあの顔になんで見覚えが…思いだした、昨日のアレだ。
同じ顔だった。
でもなんで追いかけてきた?呼んだのはお前だ?何のことかさっぱりわからなかった。
家に帰り、昔霊が見えたという父親に事情を話すと人を紹介してもらった。
いろいろ見えてしまう人らしい。
その人に会って事情を話した。
「貴方、友達と一緒になにか話してたでしょう。
それに呼ばれて来てしまったみたい。
でも呼ばれたのは貴方に無関係ではないみたい。
」
関係ある?自分の周りで亡くなっている人は親類しかいない。
いったい誰が?
「貴方、事故を見たことあるわね?」
忘れかけていた。
学校へ行く途中でふと見た事故。
大きい事故だった。
アスファルトを濡らすおびただしい血。
思わず目を背けてしまったがあの血を見て被害者の身を按じた。
「その方亡くなってるわね。
貴方可哀そうだとか思ったのね?悪いことじゃないけど付いてきてしまってるわね。
」そういうことか、夢を見たのは。
そして私はお寺も紹介してもらい友達と共にお祓いを受けた。
今は何もなく暮らしている。
怖い話投稿:ホラーテラー とろまめさん
作者怖話