同じ大学の友人から聞いた高校時代の昔話。
友人は死にたかったらしい。
人見知りなそいつは学校の交友関係は皆無。そのせいかハブられていた。頭の出来も運動神経も悪い。
そういう事を考えたことはないので彼の気持ちはわからないが、死を決意したらしい。
深夜、彼は近くの雑木林へ向かう。自宅の台所から拝借した包丁を鞄に。
ライトをつけ暗い雑木林を進み、しばらく歩いたその先で死ぬ事にした。
決意をしたのはいいが、やはり死ぬのは怖い。しばらく刃物を手首に当てて震えていた。
どれくらい逡巡していたか、ようやく行動に移る。
目を閉じて手首に横たえた刃をグッと押し込み、気持ち悪い感触が手に伝わる。
が、痛みは無かった。
ハッとして手首を見ると、別の手が刃を押さえていた。
振り向いて、何者かと見る。
女だった。
年の頃は友人と同じぐらいか、見覚えのない女性。
呆然とする彼に向けてぼそりとただ一言呟いてスッと消えてった。
お返し、だってさ。
その日は気が削がれて彼はそのまま帰っていった。
その帰り道にふと思い返す。
小学校の頃、いじめられてたクラスの女の子を助けた。それから女の子は転校してったそうな。
名前も顔もよく覚えてないが、思い当たる事といえばそれくらい。
話はまだ続く。
俺はオカルトは信じないが話としては面白い。が、こういう救いのある話はつまらんと茶化してやった。
で、童貞ゆえか色恋方面には関心のある俺は彼に最近付き合い悪いが女でも出来たか?と話を振った。
すると、彼は笑って肯定した。
当然俺は食いつき詳しい話を聞き出そうとして、馴れ初めは今話したろ、なんて言った。
真顔で言う奴に正直ビビった。
何でもないように言うもんだし、何より怖かったので深くは突っ込まなかった。
嫌いではないから今でも奴との付き合いは続いている。たまに居もしない人間の惚気話を聞かされる。
俺がおかしいのか奴がおかしいのか、二人で精神科で看てもらおうか悩んでいる。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話