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中編4
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ナースコール

何の病気かも分からず入院すること5ヶ月。この頃になって滅多に見舞いに来なかった親戚方が来るようになりました。

胸の痛みを訴えても少ししか効き目のない痛み止めの薬をくれるだけになりました。

病室からも自由に外に出ることができ、食べ物の制限も以前より緩くなりました。

私ももう長くないのは誰が伝えるというわけでもなく感じ取っていました。

これはそんな頃のお話です。

ある日の夜中のこと、身体の傷みで目が覚めて、息苦しく声も出すことが出来ませんでした。

看護師さんからは忙しいんだからナースコールは押さないでと怒られていましたが、額の汗は留まらず我慢も限界になり、ワラを掴む思いでコールボタンを押し続けました。

しかし誰も来ません。私は何回もボタンを押しましたが、故障しているのか何の反応もありません。

結局意識を失って気が付けば朝になっていました。

私、まだ生きてる。というのがその時の思いです。

私の目覚めとほぼ同時刻に看護師さんが部屋に入ってきました。第一声は耳を疑いました。

「あれほどナースコールは押さないでと言ってたのにどうして押すの!おかげであんまり眠れなかったじゃないの!途中でスイッチ切って寝たわ!」

「……ごめんなさい。あまりにも苦しくて……。」

(ふんっ、死ねばいいのに。)

小声ではありましたが、私にはっきりと聞こえるぐらいの大きさで言いました。

この看護師さんに何か嫌われるような事をした覚えはありません。今までボタンを押した事もなく、本当に辛かったから初めて押したのに……。

お昼前にお母さんがお世話しに来てくれました。その看護師さんは私に対する態度とは全く違って、凄く優しい口調で話します。

お母さんが帰ると、また私に罵声を浴びせたりします。

「あなたの病気は癌よ。もって2ヶ月ぐらいかしらねぇ。」

「えっ?」

「やあねぇ、後2ヶ月って言ったの!だあれも言わないから教えてあげたのに。感謝しなさいよ。残り僅かな人生なんだから、せいぜい楽しみなさい。」

薄々は分かっていましたが、こんな形で余命を宣告されるとは思ってもいませんでした。

ショックと身体の苦しさで、夜は眠れなかったです。

3日後の夜、衰弱しきっていたので、ようやく眠りにつくことができました。

この夜、私は忘れもしない夢を見ることになります。

私が幼い頃亡くなったおじいちゃんでした。

いつも私のことを大切に可愛がってくれたおじいちゃん。でも夢に出てきたおじいちゃんは、とても哀しそうな表情で少し厳しく言いました。

「お前はまだこっちへ来てはいけん。お前にはやり残したことがあるじゃろう。死んじゃいけん。」

「でも、私、もう助からないって……。」

「それは、お前が生きる気力を失っとるからじゃ。前を向いて頑張りなさい。そうせんとワシが神様に叱られるんじゃけん。」

「神様っているの?」

「おるおる。地上から崇められて有頂天になって怠けとるから、ちぃたぁ(少しは)ワシの孫を助けたりせんか!って怒鳴ったら、世界を見るのに忙しいんじゃと。孫ならお前に任せると言われてここに来たんじゃ。」

「ふふっ神様に怒鳴るなんておじいちゃんらしいね。」

「おっ、やっと笑ったなあ。久しく見んかったけど笑顔が一番じゃ。それじゃ頑張って生きておくれ。」

「えっ?どこ行くの?私、どうすればいいのかわからないよ。」

「何もせんでいい。ただ、笑顔でいることじゃ。辛い時、苦しい時こそ笑って過ごしておれ。ワシはいつもそばにおるけん。」

目が覚めた時、私は泣いていました。でも、おじいちゃんは笑っていなさいと言っていたので、これからは泣くのをやめました。

あまりにもリアルな夢だったので、私はおじいちゃんが守ってくれていると信じて病気と闘いました。

それから数年後、私は退院することになりました。

お医者さんからも末期癌だったことを告げられ、回復したことは奇跡だと驚かれています。

これもおじいちゃんやお母さん、周りの皆の助けがあったからだと思います。

最後にあの看護師さんですが、退院する前にこう言われました。

「今までごめんねぇ。別にあなたが憎くて虐めていたわけじゃないのよぉ。こういう仕事ってストレスたまるからねぇ。たまぁに誰かがマトになることだってあるのよぅ。恨まないでねぇん。」

と言いながら私に見せたのは、私が病院のお風呂に入っているところの隠し撮りした写真でした。

口先だけの謝罪に口止めの写真、かなり引きましたが看護師を不憫に思い、許してあげたいです。

なぜなら、おじいちゃんと約束したから。辛いときこそ笑って過ごせって。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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