『今から飯食いに行かないか?』
突然、新山から飯の誘いがかかってきた。
『いいけど…オレ今金ないぜ?』オレは情けない実状をこぼした。
『大丈夫!金なら心配するなって!じゃあ、7時に駅の駐輪場な。』
いつも金のない新山にしては、珍しいな…
そんなことを考えながら、オレは身支度を整えた。
待ち合わせに少し遅れて、新山が原チャリに乗ってやってきた。
『遅れて悪いな、新井!』と、謝りながら新山は原チャリを停めた。
『いや…で、どこに食いに行くんだ?』
『新井、焼き肉好きだよな?J苑でどうだ?』
『J苑って、メッチャ高いんじゃねぇか!?』
『大丈夫!オレが全部出すよ。』
マジで言ってんのか…?と訝しみつつも、オレ達は店に向かった。
『新山、本当に金大丈夫か?』肉をついばみながらオレは疑問をぶつけた。
『大丈夫だって。金なら…捨てるほどあるんだ。』口元をにやつかせながら、新山は言ってのけた。
『…?…何でだよ?お前何でそんなに金回りいいんだ?』オレが肉を箸で運びつつ聞くと、オレの想像を逸脱した言葉が返ってきた。
『実はな…当たったんだよ…五千万円。』
オレの箸が止まった。マジか…コイツ…何言ってる?
困惑しているオレに対し、新山はさらに続けた。『いや、宝くじで手に入ったんだよ。』
『…本当か!?』もはや肉の味など分からなくなったオレは、目の前の男の顔を凝視した。
『本当だって。家族には話したんだが、友達は新井が初めてだよ。』
『宝くじ当たったら、親戚とか急に増えるって言うけど、大丈夫かよ!?』
『あぁ、疎遠だった親戚が来たよ。その日の内にな。事業に金が必要だって言うんで、一千万ほどあげた。』
“あげた”とは…人は急に大金を手にすると変わるものだな…
その後、新山の家に向かった。
その移動時間は、オレの欲が大きくなるのには十分だった。
『新山…焼き肉ゴチになって言うのもなんだが…金、20万ほど…貸してくれないか?』オレは、後ろ暗い期待を抱いていた。
『あぁ別に、いいぜ。』
『助かるよ。時間かかっても返すから。』
『いいって、おすそ分けだ。』
…まさにオレの“期待”通りだよ新山。
帰り際、新山に例のクジを見せてもらった。
どうやら、本当に当たったようだな…。
しかし…新山の部屋にはその金で購入した物は見当たらなかったが…。
まさか、貯金?そんな事を考えながら、オレは帰途についた。
翌日から新山に“友人”が増えた。
怖い話投稿:ホラーテラー うみんちゅさん
作者怖話