スケートの織田信成は信長の末裔だし、加山雄三はなんと、岩倉具視の末裔らしい。
先祖が有名だと子孫は末裔、末裔って、もてはやされるんだよな。
でも俺だって誰かの末裔には違いない。
多分、百姓か何かだろうけど。
せいぜい足軽兵止まりだな(笑)
今回はそんな末裔の話。
俺の知り合いに、ある有名武将の末裔がいる。
名前を聞けば誰でも知ってるくらいのビックネームだ。
実はその子と昔付き合ってたんだけど、その時に末裔に纏わる怖い話を聞いた。
その子の先祖は有名武将の子供を産んだんだけど、正室じゃなく側室でもなかった。
まぁあの時代だから仕方ないけど、正室や側室に子供が出来ないと侍女とも関係を持ったってわけだ。
で、可哀想なのは女の子が産まれた場合。
正室や側室の娘なら姫君として政略結婚にも利用出来るが、召使い同然の女の娘じゃ何の役にも立たないって煙たがられた。
男尊女卑もいいとこだよな。
一応仮にも武将の子供だから食いっぱぐれる事はないらしいが、嫉妬とかハンパなかったらしい。
ただ武将の正室に待望の男の子が出来てからは違った。
側室もその他の女衆も要無しなわけ。
後継ぎが出来た武将は男の子と正室だけを愛した。
要するに側室以下は捨てられた。
それでも何とか城の端っこの部屋は与えられたみたいだけど。
捨てられた側室の中には武将や正室を恨む者もいた。
そりゃ当然だわな。
やがて正室に2人目の男の子が出来ると、ますます側室以下の者の立場は悪くなった。
そんなある日、とうとう側室の1人が正室に刃物を持って襲い掛かった。
家臣達が取り押さえたから命に別状はなかったけど、その側室は当然、斬首刑になった。
それからというもの、正室は側室以下の女衆を毛嫌いし、武将に頼んで全員と手を切らせた。
城を追い出された彼女達は生きて行くのがやっとで、今で言うホームレスみたいな生活を送ったらしい。
時は流れて、武将が天下を分ける合戦に参加した。
武将の隣には元服したばかりの息子が2人。
初陣と言う事もあり、気合を込めて臨んだが、相手の数の多さには勝てなかった。
家来達が武将と2人の息子を守りながら、何とか近くの農村まで逃げこんだ。
しかし逃げこんだ村が悪かった。
その村は武将が昔捨てた女達が暮らす村だった。
女達は始めは介抱するかに見せて、寝込みを襲った。
武将を含め息子1人と数名の家来も殺された。
女達も無傷ではおれず、呪いの言葉と共に殆どが殺された。
その呪いの言葉は、
「あの時の怨み、果ては末裔まで忘れんぞよ。世継に残さん。」
とか、そんな感じだったみたいだ。
唯一、もう1人の息子は生き残ったが、これがきっかけとなり気が狂ってしまった。
この事件は民衆への体裁を保つ為、戦による死と伝えられた。
確かに歴史の教科書でも武将と息子は戦死になっているんだなぁ。
生き残った方の息子はお家存続の為に同盟国の姫と結婚したが、捨てられた女衆の怨みか、とうとう最期まで世継には恵まれなかった。
だから養子を取って形式的にお家を存続させた。
しかし、その次の代でも世継は出来ず、養子に頼るしかなかった。
そうやってどんどん直系と言うか、武将から続く血は薄まった。
何とか江戸時代後期までお家は続いたらしいが、結局年号が明治に変わる頃に滅亡しちゃったようだ。
俺の知り合いの子の先祖はあの事件以降も生き残ったんだけど(当たり前か)、何故か武将一族同様に女の子しか産まれず、完全な女系家庭が続いているみたいだ。
確かにあの子も三姉妹の末っ子だったし。
上のお姉さん2人の子供も皆、女の子だったんだ。
呪いってやっぱ存在するなって改めて思わされた話だった。
実はその子と結婚する予定だったんだけど、あっちの家はお姉さん2人が嫁に行ったお陰で末っ子のあの子は養子を貰わないといけなかった。
こっちはこっちで、俺長男だし、妹しかいないから嫁を貰うしかなかった。
で、結局お互いの両親に反対され流れちゃったってわけ。
本気で好きだったんだけどなぁ。
まぁ歳も若かったのもあったし。
落ちとしては、先月妹が兄より先に婿を貰ったって事。
じゃああの時、あの子と結婚出来たじゃん(汗)
妹曰く、30近くになってもいっこうに結婚しない俺を憂いての決断だと。
人生ってわからないねぇ〜。
あの子元気にやってるかな?
完
怖い話投稿:ホラーテラー 紅天狗さん
作者怖話