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中編3
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ラーメン屋

本当にこんな事あるんだな、と感動した話。

ある日、夜中に無性にラーメンが食べたくなった。

『コンビニにカップ麺でも買いに行くか』と支度をしている時、大学の先輩が、俺が住んでいるマンションの近くに美味いラーメン屋があるといっていた事を思い出した。

一応、場所も聞いていたので、記憶を頼りに自転車をこいだ。

教えてもらった場所周辺を彷徨っていると、それらしきラーメン屋を発見した。

薄汚れた暖簾、塗装が剥げて下手をすれば「ラーノン」と読めそうな看板、はっきりいって自ら進んで入ろうとは思えない外観だった。

とりあえず店に入る。

内装は、テーブルカウンターのごく一般的な作りで、厨房には愛想の良さそうなおじいさんが、「いらっしゃい」と、笑顔で迎えてくれた。

席について、醤油ラーメンを注文した。

店内をぼーっと見渡していると、調理中のおじいさんと目が合った。しかし、すぐに視線をそらされる。また目が合う、そらされる。どうやらチラチラと俺の様子をうかがっているようだった。

『俺が食い逃げしそうに見えるのかな?』と思っていると、「お待ち」と、ラーメンが出て来た。

見た目は、味付け玉子、メンマ、少し厚めのチャーシュー、刻み葱ののった普通の醤油ラーメン。

正直、『本当にうまいのかよ』と不安を覚えながら、一口食べてみた。

衝撃だった。

美味い‼

本当に美味しかった。

今まで食べてきたラーメンと比べ物にならない程に美味かった。

思わず、「うまっ‼」と声に出してしまった。

夢中で麺を啜り、普段は残してしまうスープさえも飲み干してしまった。

『これは良い店おしえてもらったな』と大満足で会計を終えて、店を出ようとした時だった。

「ちょっと」

店主であるおじいさんに呼び止められた。

「つかぬ事を聞くけど、お客さんどうやって来たの?」

俺はこの店で酒は飲んでいないし、飲酒運転の確認はないはず。

何故そんな事を尋ねられるのか不思議思った。

「自転車で来ましたけど」

すると、おじいさんは考え込む様に腕を組み、首を捻っていたが、「まあいいや。呼び止めて悪かったね。ありがとう」と、笑顔で見送ってくれた。

帰り道。早速先輩に電話をかけた。

「先輩に教えてもらったラーメン屋、行って来ましたよ」

「おお。どうだった?美味かっただろ?」

「はい。あんな美味い醤油ラーメン、はじめて食べましたよ」

「醤油?俺が教えた店は豚骨しかないぞ」

「え?先輩が教えてくれた店っておじいさん1人でやってる……」

「違うよ。おばさんと息子さん、二人でやってる店だよ」

どうも話が噛み合わない。

まさか間違えた?

そう思い、確認のため、その店の外観を写真に写してメールで送ろうと来た道を引き返した。

唖然とした。

これ程まで唖然としたのは、初めてかもしれない。

さっきまでラーメン屋だった場所は駐車場になっていた。

店を出てからまだ数分しか経っていない。場所を間違えるわけもない。でも、確かにラーメン屋があった場所は駐車場になっていた。俺はその場に立ち尽くす事しか出来なかった。

のちに分かった事だか、その駐車場があった場所は昔ラーメン屋がおり、おじいさんが1人で切り盛りしていたそうだ。しかし、そのおじいさんが亡くなり、後を継ぐ者もおらず、潰れてしまった。

そして、そのラーメン屋は醤油ラーメンが美味いと評判だったそうな。

あの時、おじいさんがなんで、「どうやって来たの?」と尋ねたのか分かったような気がした。

因みに、先輩オススメのラーメン屋にも行ってみたが、あの醤油ラーメンの味を超える事はなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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