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中編3
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私が幼稚園の頃の話です。

幼稚園に入りたての私は、毎日とても楽しく過ごしていました。

ある日の通園時のことです。

いつもの道を通っていました。その道は住宅に挟まれるようにある一本道で、車一台通るのがやっと・・・といった道でした。

いつもの道 いつもの時間

私がそれに気づいたのは、その道を半分ほど通ったあとでした。

真っ黒のシャツに真っ黒のズボン。背は軽く曲がり、足は裸足。

見たことのないおじいさんが、遠くを見つめる感じで立っていました。

私は一瞬足をとめたものの、特に気にせずそのおじいさんの横をすり抜けました。

瞬間

「おーい、坊や」

機械のような、無機質な声がおじいさんの方から聞こえました。

あまりに唐突だったため、私は思わず振り向いてしまいました。

すると、すぐそこにおじいさんの顔がありました。

目はくぼんでいて 顔中シワだらけで、歯は一本もなく口元はありえないほどつり上がり、気持ち悪い笑顔をしていました。

私は 叫ぶことも泣くことも忘れ、すぐに逃げ出しました。

恐いー……恐い恐い!!

本当にそれだけしか考えられず、また、その感情が私の足を動かせていました。 後ろからは「かかかかかかか!」という笑い声が聞こえてきました。

追いかけられてるー!!

そう直感しました。

幼稚園につく前の長い坂道を必死に走る頃には、笑い声は消えていました。

私はそこで初めて後ろを振り返りました。

坂の下の方におじいさんがいました。

おじいさんは手招きをしながら「おーい…おーい…」と呼んでいました。

私は恐くなり、走って幼稚園へ向かいました。

多分その時には泣いていたと思います。

幼稚園に着いて、私はすぐ先生にその話をしました。

先生達は、泣きながら訴える私を見て信用したらしく、すぐに、注意を払うよう近隣の小学校などに連絡をしていました。

それでも私は、安心できませんでした。先生方はそのおじいさんを不審者として扱っていましたが、私は、あれを確実に人間ではないと思っていました。

私は、その日の帰りは母親に迎えに来てもらいました。

帰るときにもその道を通りましたが、何もなく、普段通りお風呂に入り食事をし、眠りにつきました。

ですが、深夜一時ほどかなりの寝苦しさに目をさましました。汗をかなりかいていました。

当時は部屋にクーラーがなかったので、少し窓を開けようと思いました。

カーテンに手をかけた時、外から声が聞こえました。

「おーい…おーい…………坊や、坊や………」

私はビクッとして、すぐさま母の布団に潜り込みました。

アパートの二階のベランダから聞こえる声ー…その時には、私の考えは確信に変わりました。

「絶対人間じゃない…!」

外では、まだ声がしてます。

「坊やー…坊やー…いるんだろ?坊やー…おーい…おーい…」

もう恐くて耐えられなくなり、何度も「やめろ!やめろ!」と泣きながらつぶやいていました。

朝になるころには声も聞こえなくなり、私は急に来た安心感から小便をもらしていました。

それを未だに父親は笑い話にしてからかいますが………

その日以来私は一本道を通るのをやめ、かなり遠くなる回り道で幼稚園に通っていました。

小学校あがるころには親戚の事情で別の町へ引越し、完全におじいさんを見ることはなくなりました。

あとから聞いた話ですが、私の家のベランダに現れた次の夜、他の友達の家にも現れたそうです。

多分、手当たり次第に私を探していたのだと思います。

それから20年近くして、免許をとった私は、卒園まで過ごしてたその町の懐かしさに誘われ行ってみました。

最初、恐々と一本道を歩いてみましたが、何もおこりませんでした。

結局、あのおじいさんがなんだったのかわかりません。

その後その頃の友達と会い、通ってた幼稚園を見たり、遊んだ公園を見たりしていました。

友達がふと、「お前が小さい頃はなしてたジジイって……黒シャツか?」と聞いてきました。

一瞬びっくりしましたが、咄嗟に「そうだけど…なんで?」と聞きました。

友達はボソッと言いました。「一週間くらい前にお前が昔住んでた部屋のベランダにいた…まだお前を探してるかも…」

その話を聞いて、最後に行こうとしていたアパートは断念しました。今は見つからないことを祈っています

怖い話投稿:ホラーテラー ころんさん

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