秋も終わろうかという、かなり肌寒い時期だった。
クラスのイジメられっ子だった僕がついにキレた。
キレた理由は言いたくない。
奴らは一線を越えたんだ。
我慢の限界だった僕を、喘ぎながら何とか生きていた僕を、いとも簡単に蹴落としたんだ。
復讐の領域へ。
僕は早速、祖母から聞いた呪法を実行に移した。
一人殺せば十年、自分の寿命が縮むのは分かっていた。
でも、もう誰にも止められない。
僕はまず捕まえた四匹のバッタの足をもいだ。
そしてそのバッタの背中に虐めた奴の名前を書く。
いよいよだ!
僕は神社に行き、蜘蛛の巣を探した。
でかい巣を見つけた。
手の平程もある女郎蜘蛛が秋風に揺れながらも静止していた。
「死ね!田中!」
今では殿様とはとても呼べない、手足のないバッタを巣に投げる。
見事ピタッとくっついたそれに、女郎蜘蛛が、静かに、しかし迫力満点で近付いた。
(うっひょ~♪ざまあみろ田中~!!)
「次は木島~お前だ~♪」
家に帰った時にはもう日は暮れかかっていた。
「婆ちゃん、言われた通りやったよ」
祖母は
「そうかい、あれは強力だからね。イチコロだよ」
と言いながら僕の頭を撫でてくれた。
あれから二年が経つ。
それなのに、奴らは平気で生きている。
生きたまま、ついに卒業式を迎えてしまった。
「婆ちゃん!あいつらまだピンピンしてるよ!」
僕は、すぐ後ろに座っている祖母に小声で話し掛けた。
祖母はクスクス笑いながら
「そりゃあそうさ、嘘だもの。でも、卒業式まで耐えられただろ」
と言いさらに笑った。
「清水浩君」
僕の名前が体育館に響いた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話