『キャー!首吊ってる…!』
その光景を見た父兄の一人がパニックになり、取り乱しました。私は震えが止まらず、その後友人の母に連れられて公民館に戻りました。
団地の敷地内で鳴り響く救急車のサイレンの音、野次馬も沢山居ました。公民館内で関係ない野次馬たちが集まりこう言っていました。
『あそこの旦那、コレしてたってよ』
首吊ったというジェスチャーをしながら。私はその野次馬たちを睨み付けました。
弟は状況がおかしい事に気付いたのか、大泣きしています。
当時弟は小学1年。
私と弟は友人宅へ行き、迎えを待つ事に。友人の家族は私にこう言いました。
『お父さんね、具合悪くて倒れちゃって、今病院いるからね、お迎え来るまで遊んで待ってようね。』
運動会日和だったのに、外は大雨でした。どれくらい時間がたったのか、迎えに来たのは母方の叔母でした。弟はおんぶされ、私は叔母の手を取り、歩き出しました。後ろを振り返ると、友人や友人の家族が心配そうにこちらを見ていました。
『お父さんは?』
叔母に聞くと、表情を変えずに叔母は…
『お家で寝てるよ…』
自宅まであっという間に到着し、玄関前でまた震えがし出しました。ドアを開けると、線香の匂いがしました。母の泣き声…玄関から見える、正座した父兄達のやりきれない表情。
父はいつも寝ている部屋の隣の部屋に寝ていました。
顔には白い布をかけて。
私はその場に座りこんで声をあげて泣きました。
父は、浴室で首を吊った状態で亡くなっていました。後日分かった事ですが、亡くなる前日に病院にかかっていたそうです。
父は、うつ病でした。
遺書などもなく、亡くなる前日もいつもと変わらない父でした。私が生きている父を見たのは、運動会の日の朝、足を踏んでしまった時…顔を上げた父を見たのが最後でした。
父が発見される前、私の脳裏に出てきた言葉。
あれは一体何だったんだろうと…16年たった今も不思議で仕方ありません。
母にも話しましたが、もちろん信じてもらえるわけもなく…。
10月3日は…父さんの日です。
長々と読んで頂いて有り難う御座いました。
怖い話投稿:ホラーテラー 11歳の私さん
作者怖話