僕は窮地に立たされた。
一秒がとても長く感じられる…
その間に走馬灯が浮かんでは消える。
いや、最初から…こうなるかもしれないと考えたことは…なかったわけではない。
だが、飽くまで“万が一”の仮定だったはず。
バレるはずはなかった。
だが、こうしてコトが露呈してしまった今では、僕の計画は所詮取るに足らぬものだったという事だ。
敢えて自分でこの状況を弁解するならば、全く以て不可抗力の一言。
事の始まりは、友人から頼まれた“ブツ”を輸送するところからだ…
“ブツ”を鞄に忍ばせるのは完璧だった。今回が初ではない。
目的地へ向かう途中、通りかかった林…木々の途切れたところで見つけたモノが災いの始まりだったのか?
だが少なくとも“ソレ”を見つけた僕の心は躍っていたはず。
僕は素早い動きで“ソレ”を回収し、鞄に潜ませた。
目的地に着き、僕の席に着くと、遠くから依頼人のSが視線を送ってきた。
『“ブツ”は持ってきたのか?』
Sの視線はそう語っていた。
『勿論』の意味を込めてニヤリと笑った。
だが、今すぐSに渡すわけにはいかない。
これから訪れる長い拘束時間…その間にSにヘマをされてコトが発覚し、大変な事態になるのは避けたい…
Sが口を割るとも限らない…Sだけの問題ではないのだ。
だからこそ、今はオレが管理しなければならない。
どれほどの時間が経ったことだろう。
正直、退屈過ぎる…。
鞄の中にある、予期せぬ拾得物が一層この時間を長く感じさせる。
…少しだけなら…見たってバレないはず…
最早オレの辛抱は限界だった。
鞄を少し開け、片手で“ソレ”をめくる…
ぅうん見づらいっ!もう少し…
僕が鞄の中で戦っていると、突如として崩壊が訪れたのだ…
『おい!K!授業中にコソコソ何やってる!?』
『ぇえ!?あぁ~いや、先生何でもないです!』
『嘘をつけ。今鞄の中の物をいじりながらニヤニヤしてただろ!出せ!』
む、無理!こんな本出したらカタストロフィーが起きちゃう!
『早くしろ!』
尚も先生の追及は続く。
…どうする!?
パニック状態の僕の目に、Sから頼まれた“ブツ”が写る。
…これで…乗り越えるしかない!
『…スイマセン…学校にゲーム持ってきました…』
『なに?学校にゲーム持って来ちゃ駄目だろうが!』
『…あの…S君に頼まれて…』
ごめん…
僕はゲームとSを生贄に捧げた。
Sの視線が痛い…
怖い話投稿:ホラーテラー うみんちゅさん
作者怖話