短編2
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贄-にえ-は捧げられた

僕は窮地に立たされた。

一秒がとても長く感じられる…

その間に走馬灯が浮かんでは消える。

いや、最初から…こうなるかもしれないと考えたことは…なかったわけではない。

だが、飽くまで“万が一”の仮定だったはず。

バレるはずはなかった。

だが、こうしてコトが露呈してしまった今では、僕の計画は所詮取るに足らぬものだったという事だ。

敢えて自分でこの状況を弁解するならば、全く以て不可抗力の一言。

事の始まりは、友人から頼まれた“ブツ”を輸送するところからだ…

“ブツ”を鞄に忍ばせるのは完璧だった。今回が初ではない。

目的地へ向かう途中、通りかかった林…木々の途切れたところで見つけたモノが災いの始まりだったのか?

だが少なくとも“ソレ”を見つけた僕の心は躍っていたはず。

僕は素早い動きで“ソレ”を回収し、鞄に潜ませた。

目的地に着き、僕の席に着くと、遠くから依頼人のSが視線を送ってきた。

『“ブツ”は持ってきたのか?』

Sの視線はそう語っていた。

『勿論』の意味を込めてニヤリと笑った。

だが、今すぐSに渡すわけにはいかない。

これから訪れる長い拘束時間…その間にSにヘマをされてコトが発覚し、大変な事態になるのは避けたい…

Sが口を割るとも限らない…Sだけの問題ではないのだ。

だからこそ、今はオレが管理しなければならない。

どれほどの時間が経ったことだろう。

正直、退屈過ぎる…。

鞄の中にある、予期せぬ拾得物が一層この時間を長く感じさせる。

…少しだけなら…見たってバレないはず…

最早オレの辛抱は限界だった。

鞄を少し開け、片手で“ソレ”をめくる…

ぅうん見づらいっ!もう少し…

僕が鞄の中で戦っていると、突如として崩壊が訪れたのだ…

『おい!K!授業中にコソコソ何やってる!?』

『ぇえ!?あぁ~いや、先生何でもないです!』

『嘘をつけ。今鞄の中の物をいじりながらニヤニヤしてただろ!出せ!』

む、無理!こんな本出したらカタストロフィーが起きちゃう!

『早くしろ!』

尚も先生の追及は続く。

…どうする!?

パニック状態の僕の目に、Sから頼まれた“ブツ”が写る。

…これで…乗り越えるしかない!

『…スイマセン…学校にゲーム持ってきました…』

『なに?学校にゲーム持って来ちゃ駄目だろうが!』

『…あの…S君に頼まれて…』

ごめん…

僕はゲームとSを生贄に捧げた。

Sの視線が痛い…

怖い話投稿:ホラーテラー うみんちゅさん  

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