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短編2
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70年後に見えたもの

父は最近、昔のネガをフィルムスキャナーで取り込んで、デジタルデータ化して整理しています。モニターで映して懐かしんだり楽しみながらなので、なかなか進みませんが。

すると、祖母が煎餅の缶を持ってきました。

「これもどうにかできるかい?」

そこには古い写真が沢山入っていました。

ネガではないけれど、陰影もだんだん薄れてきているし、紙そのものもボロボロになってきているし、というのです。たしかに、今の紙よりも多少荒いような紙は、古さも相成って、角が取れてきていました。

サイズが今の写真と違って小さく、一定ではないので、ポケットタイプには合わないし、貼るタイプのものは印面や紙が剥がれそうで、アルバムにしまえなかったのです。仕方がないので、空気に触れたり折れたりしないように、と缶に入れて保管されていたものでした。

撮り込み作業は、ネガをフィルムスキャナーにかけるのに比べれば面倒なものでした。

一枚一枚を取り込んではモニターに映し、手による僅かな傾きを調節し、コントラストが薄れてしまった物は調整し、祖母の記憶と写真の裏書を頼りに順番に並べていくのです。意外とこまかく、これは誰の姿、これは幾つぐらいの時、と覚えていたので、いっしょくたに「昔の」というよりは良かったですが。

そうして作業をしていくうちに、奇妙な一枚がモニターに映し出されました。

祖母を含む数人の子供たちが写る写真に被って、一人でアップに写っている形で、笑顔の男の子が写っているのです。

よく心霊写真としてある、顔に見えるモヤのようなもの、とか、顔の一部、とかではなく、半透明の写真が上に被ってしまったようにハッキリとした笑顔が、ちょうど収まるように写っているのです。

これだけハッキリと写っている顔ですし、普通なら「昔の写真なら、たんにフィルムの巻き取りの所為で被ったんじゃないの?」と思うところでした。

ところが、他の写真も、問題の写真も単色なのに、その顔だけはカラーなんです。

元の写真では目をこらしても、何も見えません。

なのに、大きく映してみると、カラーの男の子が被っている……。

ちなみに、こんな子は知らないと祖母は言います。フィルムが高価で貴重な時代、趣味や仕事でもないのに見知らぬ他人を、一人で一枚消費する形で写したりするとも思えません。

大きく引き伸ばさなければ見えない、一人だけカラー写真の透き通った男の子……。

写真を撮ってから約70年目のその笑顔は、謎のまま、他の写真データと共に「ばあちゃんの写真」と書かれたCD-ROMに収録されています。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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