以前、「軽自動車」を投稿させていただいた者です。今回は私が20歳のとき、某大手デパートで清掃のアルバイトをしていた時の体験談をお話します。
アルバイトの時間帯は閉店後の夜7時から10時くらいまででした。一年後くらいしてからバイトの責任者に「稼がないか?」と言われて月1,2回のペースで夜勤の床清掃をすることになりました。仕事は4人で店内の床のワックスを新しく掛け直すものです。よく深夜のコンビニに行くと店舗の通路を清掃しているアレです。
デパートの店舗は当時、世界でも一番広い店舗数で有名でした。ですから一晩にできる量なんて微々たるものです。私は稼ぎたいのもあり、夜勤の仕事は積極的に参加するようになりました。
最初の頃は、雑用です。「あの洗剤を持ってこい」とか「水持ってこい」とかハードなものでした。7階のバックヤードに大きい倉庫があって洗剤を持ってくる時には7階まで一旦戻らないといけません。
夜中の深夜1時とか2時にバックヤードには社員はおろかひとっこひとりいないのが現状です。長い廊下を電灯もついていない状態で走っていくのはいつも心細く感じました。というより不気味でした。
時には巡回中の警備さんに会ったりした時は心臓が飛び出るくらい驚いたりしたときもありましたが、なにしろ清掃場所が7階から遠のくフロアに行けばいくほど戻る時間が遅くなるのです。例えば2階で清掃中でしたら7階まで行って戻ってくる時には30分くらいかかっていましたのでB3階で作業なんていったら余裕で4,50分はかかっていたと思います。
そんな夜勤の作業中、私はリーダーの人から「洗剤が足りないから持ってきてくれ」と言われてすぐさま、バックヤードをすり抜けて大型のエレベーターの前に着いて待っていると、背後からいきなり
「御苦労さまです。」と声をかけられました。驚いて振り向くとそこには抑揚のない顔つきをした、警備の方が佇んでいる、というより、いつからそこにいたのかさえ分からない程、気配がありませんでした。私は
「あ・・・どうも、御苦労さまです。」と返事を返しました。横で二人で立つような形でエレベーターを5分近く待っていたのですが、一言も話さない隣の警備員に不気味さを感じ始めていました。
早く来い!!と思いながら待っていたエレベーターが着いた瞬間、後ろから
「おーい!待ってくれー!」と声が聞こえたので振り向くと、どうやら同じ会社の警備員のようでした。
私は、助かった!と思いながら、安心してエレベーターに乗り込みました。
「いや、いや、まいったよ。このエレベーター、なかなか降りてこないからさぁ。」と息をきらしながら私に話しかけてきました。私も
「巡回も大変ですね。」と言いました。
不気味な警備員は端っこにいてじっとこちらを薄気味悪く伺っているようでした。あまりにも目をギラギラさせた目付きで睨んでいたので恐怖を感じていました。
隣にいた警備員が私に話しかけてきました。
「前にね、このエレベーターで事故があったんですよ。夜中に止まったエレベーターの中で変死体で見つかったんだ。私の同僚の警備員だったんですよね。」
「えっ!?」と言った瞬間、理解しました。背後にいる警備員が・・・そうなのか?
そして私は後ろにものすごい力でひっぱられました。
背後にいた不気味な警備員に肩を掴まれたのです。私は無我夢中で
「助けてっ!助けてーっ!」と大声で前にいた警備員に叫び、後ろに引きずられながらも、前に行こうと力任せに抗ったのです。
すると私の肩を掴んでいる背後の警備員が
「前にいくなっ!!!」と叫んだのです。私は混乱しました。
すると前にいた警備員が突然、首をガクン!と前に倒したかと思うと
「イーヒッヒッヒッヒ!ヒヒヒ!ヒャーハッハッア!」と笑い始めました。そのまま前にバタン!と倒れて顔面から大量の血を噴き出したのです。
「ゆ~る~ざぁ~ねぇ~(ゆるさねえ?)」と言いいながら顔をあげたのを見た時、血を垂らしながら恨めしい目付きで私の顔をみているのでした。
背後の警備員から「見るな!」と言われましたが、肩の震えが止まらなかった私を優しく抱き抱えてくれ、気がついた時にはその幽霊も警備員も消えていたのでした。
もちろん私がそのバイトをすぐに辞めたのはいうまでもありません。
いまでもあの警備員の人は何だったのだろうと思い返す時があります。
もしも私を助けてくれた警備員が現れなかったら・・・
もしもあの時、背後の警備員を振り切って前の警備員に行ってしまっていたら・・・
と思うと身の毛がよだつ思いです。
長々、読んで下さった方ありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー MYさん
作者怖話