フィクションと言う事で。
ある夜。私はまだ眠くないと言う娘を寝かしつけるため、お話をしてあげる事にした。
「あるところに二人の仲のいい子供がいました。その子達はとてもいたずら好きでね、いつも大人達を困らせてたんだ。
ある時この地域に奉られている憑墨様の像を一人が壊してしまってね。
憑墨様って言うのはね、とても怖い存在として神様みたいに崇められてたんだよ。そして一度でも怒らして、憑墨様の姿を見てしまうと恐ろしい事が起きると言われているんだ。
だから二人はとても焦ってすぐそこから逃げ出したんだ。
その像があったのは、西の森の中だったんだけれど、あちこち逃げているうちに出口が分からなくなってね。
二人は途方にくれてその森の中の神社で休んでいたんだ、しかしその時向こうから何かが近付いて来てね。
二人はすぐさま憑墨様とわかったんだ。
捕まったら何をされるか、二人は迅速に行動を起こした。
まず社の中に時計を置き、社の裏に回る。
そして憑墨様が社に入った隙に逃げる事にしてたんだ。
ピピピピ!
社の中に仕掛けといた時計のアラームがなった。
憑墨様がそのアラームの音に反応して社に入った隙に。
二人は逃げた。
その瞬間涙が出た…
どうしようもできないくらい怖かったんだ。
その後ある程度逃げたあと一人が転んでしまった。すぐ逃げようと立ち上がったら…憑墨様が…こちらを見ていた…
その後やっとの思いで森の出口までやって来た。
一気に緊張が解け、一人がもう大丈夫だと横に声を掛けた。
憑墨様がいた
はい おしまい」
娘「えー!、そこで終り?男の子は?その後どうなったの!」
「はいはい また今度ね」
私はぎゃーぎゃー騒ぐ娘を寝かしつけ、部屋を出た。
こんな話を信じてくれるなんて、やはり子供は無邪気で良いな。
大人達はなにも信じてくれなかったけどな。
私は自分の身に起こった事を改めて思い出していた。
その時部屋の隅から音がした。
そちらを振り向くと憑墨様がいた。
その墨のような真っ黒な目で、こちらを見ていた。
私は言った。
「すまない。」
そう言うと憑墨様は頷き消えていった。
「許してくれ…」
私は今では憑墨様になってしまった親友の姿に涙した。
罰を受けるのは
あの時像を壊した私のはずだったのに…
怖い話投稿:ホラーテラー 石花さん
作者怖話