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短編2
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田舎の暗部(二つ目)

 良いタイトルが思いつかなかった。おなじく先生の初任校の話だ。

 ある朝、ホームルームから帰ってきた担任教師が、しきりに首を傾げていた。

 先生がどうしたのか尋ねると、ある生徒の様子がおかしかったと言う。

 その生徒は先生もよく知る子で、バイオリンが好きなおとなしい男子生徒であった。

 担任教師が朝の連絡をしていると、教師の目の前に座っていたその男子生徒が、すっと担任教師の顔を見上げて、

「ばかやろう」

 と、言った。

 普段は声を荒げることも無いおとなしい生徒であるから、担任教師は最初幻聴だと思ったらしい。

「ばかやろう」

 また、言った。

 色白の顔を一層蒼白にして、目をぎょろりとさせて、担任教師に悪態をつく。

 担任教師はわけが分からず、そそくさと連絡を終えて職員室に逃げ帰って来たのだ。

 あれはなんだったのだろうか。と話していると、職員室の電話が鳴った。警察からであった。

「おたくの生徒が駅前で、上半身裸で包丁を振り回しているのを保護した」

 その男子生徒であった。教室を抜け出し、近所の駅で包丁片手に練り歩いていたのだ。

 今、気付いたのだが、おそらく朝に教室にいた時点で包丁を隠し持っていたのだから、担任教師は何も言わなくて正解だったかもしれない。

 男子生徒は次の日から学校に来なくなった。

「急にオカシくなる生徒がとても多い地域だったよ」と言って、先生はこんな話もしてくれた。

 修学旅行の夜、先生の部屋のドアがどんどん!と叩かれた。出てみると、女子生徒が数人、恐慌状態でドアを叩いていた。

 涙ぐみ、パニック状態の女子生徒になんとか話を聞くと「○○ちゃんがおかしい。とにかく来てくれ」と言う。先生は女子生徒の部屋へ向かった。

 部屋の隅でうずくまった○○ちゃんは、鏡を覗き込んで髪を梳いていた。女子生徒は怖がって○○ちゃんに近づこうとしない。

 先生はおそるおそる近付いて、彼女の肩を叩いた。

「あ゙ぁははははぁ!」

 彼女は真っ赤に充血した目をひん剥いて先生を見上げてけたたましく笑ったという。

「こりゃ駄目だって思ったよ。一目で」

 先生は救急車を呼んだ。救急隊員も一目彼女を見ると

「ああこれは駄目だ」

 と言うなり彼女に何かを注射して、搬送して行った。

 彼女も学校に来なくなった。

 少し昔の、閉鎖的な山村の話だ。

「血が濃かったんだね」

 と先生は言った。

怖い話投稿:ホラーテラー 元美術部員さん  

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