2年前に実際に体験した話です。
車の免許がやっと取れて念願の一人旅に出掛ける事にした。
あまり地方に行ったことの無い世間知らずな私。
インターネットで車でも簡単に行ける場所を探した。
1時間かけてようやく捜し出した場所は、地元から約2時間程で行ける小さな旅館だった。
値段も安いし、写真でみた限りは汚なくもなかった。
早速予約の電話を入れよう。
電話の相手は愛想の無い中年の女の人だった。
少しムカついたが、そんな事は関係無い、一人旅が出来るというだけで舞い上がっていた。
ついにその日が来た。
準備は万全。
出発だ。
車で走る事1時間、山道が前に出てきた。
山道というかあまり補正がされていない汚い道路だ。
本当に合っているのかと思ったが、ナビがその道を示しているのでまず間違いないだろう。
そのまま向かう事に。
山道の入り口に奇妙な看板が立っていた。
【敷き泣き峠×××】
多分【しきなきとうげ】だと思う。
後ろの罰印はよく分からなかった。
まぁそんな事は気にせず、先をどんどん進んだ。
山に入って30分、おかしな事に気付いた。
山に入ってから車と一台もすれ違っていないのだ。
さすがに怖くなってきたが、ここまで来て引き返す訳にはいかない、せっかく楽しみにしていたのと、プライドが許さなかった。
さらに進む事30分、山道の状況は先程より暗くなり霧がでてきた。
咄嗟に車のライトを付けた。
ぱっと霧の中に光が通る。
霧の中を5分程走った頃だろうか、前にトンネルが出てきた。
トンネルの入り口には先程見た【敷き泣き峠×××】という看板もあった。
トンネルの中は電気が無く、車のライトだけが道を照らしていた。
怖くてバックミラーは見れない、両手でハンドルをぎゅっと強く握って前だけを向いていた。
すると出口の方から車が来た。
私はようやく他の車を見ることができた事に安堵感を抱いた。
すれ違いざまに私の車のライトが相手の運転席を照らした。
中年の女性が凄い笑顔で私を見ていた。
歯茎が剥き出しになるくらい満面の笑みで。
私は一瞬ゾッとしたが、軽く会釈だけして通り過ぎた。
トンネルを抜けると、先程とは違い綺麗に舗装された道路が出てきた。
その道をさらに進むとお目当ての旅館が出てきた。
見るからに古く、本当に営業しているのかというくらい寂れていた。
私の車しか停まっていない駐車場を後にして、旅館に入った。
すいません。
返事がない。
誰もいないのか。
すると奥の方から何やら音がする。
ドン… ドン…
人がいると思い、私は中へ入っていった。
音のするほうへと向かって行く。
暗い廊下をヒタヒタと歩いていく。
隙間風の音がより恐怖心を煽る。
ゥゥゥオオオオォォォ
とうとうその前の部屋まで来た。
相変わらず中からは音が聞こえる。
部屋の扉を恐る恐る開けてみた。
ぅわぁぁぁぁー
私は腰を抜かしてへたりこんでしまった。
天井から紐で足を結び、頭を壁にぶつけている音だった。
恐怖のあまり足が思うように動かない。
足に鞭を入れて私は逃げた。
暗い廊下を走っていると、後ろから走ってくる音が聞こえる。
捕まったら最後だ。
私は必死に走った。
出口が見えてきた。
ばっ!と出口を出た瞬間から何故か記憶がない。
気が付いたら、行きしに通ったトンネルの手前にいた。
私はすぐに帰る事にした。
何故記憶がないのか、必死に考えたが分からなかった。
運転中なにげにポケットに手をいれてみたら、何やらじゃらじゃらしたものが入っていた。
手に出してみると、全部爪だった。
私はビックリした余りアクセルを強く踏んでしまい、ガードレールに突っ込んでしまった。
それからまた記憶が無くなり、起きたら家にいた。
夢かと思い外に出ると、車が無い。
ポケットに手を入れてみた。
爪が入っていた。
私はいったいどうやって帰ってきたのか。
何かされたのか。
未だに何もわからない。
ただ一人旅は二度としない。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話