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中編4
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『僕は今…手紙を…』

僕は今手紙を読んでいる。三通目の手紙だ…。

事の起こりは、一つの『噂』からだった。

廃墟巡りや肝試しで差出人不明の『手紙』を見つける事があるらしい。

あまり目立たない場所にさり気なく置かれているソレの内容までは判らない。

『悪魔の手紙』『天使の言伝』などと言われていて、書かれた内容を一人で実行すると望みが叶うとされる話もあるという。

友人数名と行った肝試しの廃病院。真新しい封筒。ついさっき置きましたと言わんばかりの状態で…僕はそれを見つけた。

思わずズボンの後ろポケットに突っ込み、心霊スポットを一巡して帰りについた。

自宅に戻り(やってしまった)との後悔の中でポケットから『手紙』を取り出す。

封はしておらず中身を確認すると雑に畳まれた紙が当然のように入っていた。

一瞬、胸の高鳴りを覚え次いで不安と幾ばくかの恐怖を感じる。

思い切って紙を広げる。

ギョッとした。

悪戯なら大成功だ。

文字が不気味に見えたのだ。字を覚えさめの子供が書いたような歪な文字。

一気になぶり書いたような文体は良く見ると何度もなぞり、または時間をかけて書いた様子がうかがえた。

不快感が込み上げる…まさしくこれは『悪魔の手紙』だ。

内容と言えば隣県の住所と大きく乱れた文字で…『箱の下』とだけ…

僕はたまらず手紙をクシャクシャに丸めてゴミ箱へと投げ捨てた。

不幸にも『それ』は壁に当たりまた僕の足元へ転がって来てしまった。

不安に駆られ丸めたそれを開き住所を別の紙に書き写すと、台所で燃やした。燃やした時気のせいだろうがインクの匂いとはまた別の何だか変な臭いが鼻についた…。

…隣県の住所はやはり有名な心霊スポットのそれで…

…僕は…誘惑に負け…友人達と其処へ向かってしまった。

移動中の車内で僕は終始無言でいた。周りには怖がっていると思われたかも知れない…いや実際にある種の恐怖に苛まれていたのは事実だ。

やがて車は目的地に到着した。駆け出して『箱』を探しに行きたい衝動を抑えみんなの後ろからついて行く…。

その心霊スポットの一室で僕達は必然的にその『箱』を見つけた。

色めき立つ友人達。

そのうちの一人が勇気を出して蓋に手をかけ勢いよく開けた。蓋は反動であらぬ方向へ飛んで行き派手な音をたてた。一同の悲鳴があがる…。

…がしかし…中身はみんなの期待に反して空っぽだった…。友人達は笑いながら部屋を後にする…

…まだ緊張しているのは僕…ただ一人。

『箱』を持ち上げると…そこには『恐怖』があった…。

どうやって帰ったのか記憶にない…さぞや友人達は心配しただろう。

僕は…その『恐怖』をまた…自宅へと持ち帰ったのだ。

その『恐怖』は最初の『それ』と違い何かを拭ったように茶色く汚れていた。

中を確認すると白紙に包まれて『恐怖』の中身が出て来た。

…ある住所と…一言…『小石の下』…

気がつくと僕は一人車を飛ばし『其処』へと向かっていたようだ。慌てて車を停めナビで現在地を確認し改めて目的地を検索した。

到着したのは人里を離れ放置された工場のような場所だ。

建物が風のせいか揺れて見える。いかにも倒壊寸前といった感じだが意を決し場内に入る。

中には茶色い砂が広範囲に堆積していた。砂の中の砂鉄が錆びたような感じだった。どこかで嗅いだ事のある独特の臭いが立ち込めていた。

奥へ進むと少し開けた場所へ出た。

そこも茶色い砂…ただ違うのは無数の『手紙』が床一面にばらまかれていた事だった…。

一瞬めまいがしたが混乱する程ではない。

…僕の望む『恐怖』は判っている。

……『小石の下』……

僕は辺りを見渡す………見つけた…。

僕は今手紙を読んでいる。三通目の恐らくは最後の手紙だ…。

僕は今手紙を読んでいる。三通目の恐らく最後の手紙だ。

内容は…

大きめの見たことのない文字が綴られていた…。思わず見直すと、文字はいびつに蠢きながら形を変えていく…。

『おめでとう。きみのねがいはかなう。』

最初の二通とは明らかに違う人物が書いたであろう整った綺麗な字だ。

幻覚を見てビビりながらも僕は思わず鼻で笑ってしまった。

暇人さん。お疲れ様。

…そして馬鹿な僕…。

カサッという音でふと足元に目を落とすと白紙を踏みつけていた。足をどけると綺麗に靴跡がついている。

『…あれ?』

僕は白紙を拾い上げ手で汚れを払ってみる。

文字が浮かんだ…

『ぜったいくるなくるな』

心臓が一気に高鳴り始める。…ポケットに入れている二通目の手紙…

…それを包んでいた白紙…

封筒と手紙を捨て僕は白紙に茶色い砂をかけて手で軽くこすりつけ、息を吹きかける。

…やはり文字が浮かんだ。

『くるなころされる』

背後に気配のようなものを感じた刹那…後頭部に鈍い熱さを感じた…。

天地が分からなくなり白黒に景色が見える…。

目の横で白い砂に黒い水がゆっくりと流れて水たまりを作り始めた…。

世界が暗くなる。

どれくらい時間が過ぎたのだろう?

耐え難い痛みと恐怖の中で…

僕は今君に宛てて手紙を書いている。

怖い話投稿:ホラーテラー 最後の悪魔さん   

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