「・・・・・・」
僕も木戸も顔を見合わせたまま動こうともしない。
「開けろって・・・お前が開けろよ・・・」
「ビビってんの?」
田中が偉そうに鼻で笑うと立ち上がる。
僕は正直怖かった。
ただ興味はやはり捨てきれない・・・・
「あ!忘れてた!用心の為これ持ってろ」
田中は僕と木戸の手のひらに1つずつ椎の実のような物を置いた。
「何これ?」
「わかんね。くれたんだ。木の実みたいだろ?でも何年経っても腐らないんだ。今度金森先生(化学の先生)に調べてもらおうと思ってる。魔除けになるらしい」
「くれたって誰が?」
「後で話すよ。もしかしたら宇宙人かも。よく判らないんだ」
「・・・・・・」
「じゃ開けるぞ」
僕と木戸は無意識のうちに身体を寄せあっていた。
田中はカーテンを全開にすると、部屋の様子を映すだけのガラス窓を一気に開けた。
「・・・・・・」
来る時ちらと横目で見た公園が街灯に浮かび上がっているだけだ。もう零時を過ぎている。当然人の姿はどこにもない。
「何か見える?」
木戸に尋ねるが首を横に振る。
「何も見えないだろ?俺も見えねえ」田中の言葉に2人キレた。
「ふざけんなよ田中!全部嘘なのか!?」
「嘘じゃねえよ。これ使えば見えるから」
いつの間にか彼は望遠鏡を手にしていた。
それを公園の方へ向けて覗き込む。
「あーいるいる!何回見てもオモロ〜♪」
本気でこいつ狂ったと思った。
「見るか?」田中から望遠鏡を渡されそれで薄暗い公園を見渡した。
「手前に池があるだろ?ナイトモードにしてあるから見える筈だ。」
「何だあれ?何か飛んでる・・・・」
池の上を何かが飛んでいる。カブトムシ虫くらいの大きさだ。
「うわ!!」自分の目を疑った。池の上を人間の首が飛び回っていた。数え切れないくらいの生首が!
木戸が僕から望遠鏡を奪い取る。
「わー何これ?嘘やろ!?首じゃん!!生首じゃん!!これもっと倍率上げられんのか?・・・・・ん?・・・・うわあ!!!」
突然木戸が絶叫して望遠鏡を放り投げた。
転がる望遠鏡の細い方から髪の毛の様な物がぞろりと出ているのが一瞬見えた。
「女と目が合った!赤い着物着てた!!」
「念は飛ばせるみたいだな」田中は静かに窓を閉めるとカーテンを引いた。
「何なんだよ・・・あれ?」
田中は呆然と立ち尽くす2人には目もくれずテレビの前に座ると缶ビールに口をつけた。
木戸の顔真っ青だ。
僕もクラクラして倒れそうだった。
「おい!突っ立ってないで飲み直そうぜ」
僕らは仕方なく元の場所に腰を下ろした。
「あの池を囲んでる花壇が結界になってるんだ。生首の動きを観察するとよく判る。そこから出ようとすると弾かれるんだ。生首小さかったろ?」
「小さかったな」
「うん、小さかった」
「直径5センチくらいだなあの生首」
「それくらいだな」
「だな」
「やっぱりお前らにも見えたな」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「夢じゃないよな・・・何なんだよあれは一体?」僕の問いに田中が逆に問い返してきた。
「俺の話笑わないで聞いてくれるか?」
笑うも何も、今さら何聞かされても驚きはしないよ・・・・
「知っての通り親父は医者だ。科学で証明出来ない物は全て却下というタイプだった。しかしな、母親もそういうのは大嫌いなタイプだったんだ。親父はそれを知ってたから彼女の口から生首という言葉が飛び出した現実を真っ向から否定出来なかったんだな。この家売り払うか、て事で話が纏まりかけてる頃だった」
「・・・・・・」
「俺は下を向いて歩道を歩いてた。例によって怖くてな。幼稚園から帰る途中だった。そしたら、視界にトンでもない物が入って来たんだ」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話