猿蟹合戦。それは有名な昔話。
たくさんの教訓が詰まっている話だが、
あれはあくまでも偽りの話。
実際はもっと残酷で欲深い話なのである。
権造はその頃、自分の生まれた山から少し離れた里の女、「たみ」と所帯を持ったばかりだった。
権造は、いつもどおりいばりくさった。
村の者はみな、権造のことを非難していた。
畑もしない者がいばりくされば、そう言われるのも無理はない・・・
だが、たみは権造に文句すら言うことも許されなかった。
文句なんて言ってしまえば、暴力をふるわれるからだった。
権造は猟をやっていたが、全然捕れる見込みはなく、畑をやっていた方が儲かるはずだった。
なぜか、猟というこだわりのせいで、次第に貧乏になっていくのである。
今日も猟をしていたが、いつも通りだった。
捕れる見込みもなく、木の上の柿を食べて変えることにした。
家に帰ると、たみがおにぎりを持っていた。
「握り飯じゃねぇか!」
「これはさっき、旅の者が残して置いていったのをオラがもらって・・・
でも、何か獲物があったら、取り替えてやってもええよ・・・。」
「・・・え、獲物はこれだ・・・。」
取り出したのは先ほどの柿の種だった。
「握り飯は食ったら無くなるが、これは育てれば今にいっぱい実がなる。
こっちを取った方が偉いぞ・・・。」
そう。
これは猿の言葉である。
「よこせっ!」
握り飯を取られてしまった。
仕方なく、たみは家の庭に種をまいた。
それから8年経ったある日。
「やっと実がなるようになったか。」
権造は木に登り柿を取った。
「うまいなぁ。」
「オラにも取ってけれ。この腹じゃ上れねえ」
たみは妊娠していた。
「あぁ?柿は体を冷やすんだぞ。お前が食ったらいけないぞ。」
「あんたはいっつもそうだ!これはオラが育てたんだぞ!
くれないならあの時の握り飯返せ!!!」
それを言うのも無理はない・・・
「家のモノは全部俺のモンだ!」
権造はたみの腹を蹴った。
絶対にしてはいけないと知っていながら・・・・・。
もちろんたみは即死だった。
腹から血が出てきた。
権造は怖さのあまり、逃げてしまった。
死んだ直後、赤子は生まれた。
たみの死から12年が経った。
みんな権造を憎んでいた。
「・・・憎かろう・・・憎かろう・・・」
たみの息子は12歳になっていた。
息子は生きるため、権造の家に盗み食いに来ていた。
「・・・憎かろう・・・憎かろう・・・」
たみの息子はある計画を立てていた。
その計画は周りの人々と共に実行した。
息子は権造の家に入り、権造の待った。
謙三が帰ってきた瞬間、包丁で権造の顔に傷を負わせた。
そして息子は、ドアの向こうに走り去ろうとした。
もちろん権造も追いかけてくる。
すると権造はこけてしまった。
足をロープで結ばれていた。
こけた先には針がたくさん埋め込まれていた。
ここまでは計算通りだ。
グシャァ!
生々しい音が響き渡る。
息子たちのしかえしは、これだけでは終わらなかった。
紐でぐるぐる巻きにされた権造がそこにいた。
「やっと仇が討てるよなぁ・・・」
「助けてくれ・・・たみの子は俺の子だろ・・・。」
「ああ、そうだ。」
「俺のおっ父は、おっ母の畑を手伝わなかった。
おっ母の握り飯を取り上げた。
おっ母に柿を食わせなかった。
おっ母の家でいばりくさった。
そして・・・
おっ母の腹を蹴って殺した!!!」
包丁で切り刻まれた権造は、無惨な姿になっていた。
「あの世で、おっ母に謝れ・・・。」
怖い話投稿:ホラーテラー 名無さん
作者怖話