私が中学生の時、合わせ鏡の怪談が流行った。
学校のどこかに呪いの鏡があり、夜12時にその鏡で合わせ鏡をすると、死の世界へ連れ去られるという。
昔校内で、手首を切って自殺した女子がおり、その血が鏡にたっぷりかかったせいで呪いが籠った、という話も聞いた。
級友のカナに誘われ、私はある夜学校に忍び込み、その鏡を探すことになった。
カナの事は正直苦手だったが、嫌だと言えない私の性格を見込んで(?)抜擢されてしまった。
夜中、各教室を順に見、科学室に入った時、カナが言った。
「何あの鏡」
科学室の黒板の左横には、ガラスの覗き窓の付いた準備室へのドアがあるのだが、黒板とドアの間に画板くらいの大きさの鏡が架けてあった。
「どこかの委員会からの寄贈とかじゃないかな」
この時丁度12時になってしまった事が気になり、私は携帯の時刻表示を見ながら答えた。
顔をあげるとカナの姿が消えていた。
準備室のドアはノブが有り、科学室側に引いて開けるタイプの扉なのだが、それが開いていたので準備室の中も見ても、カナは見当たらない。
蝶番がキイキイと鳴り不気味だった。
カナは先に帰ったのかと、不愉快なまま私も帰宅した。
翌日からカナが行方不明になった。
私は彼女と最後にいた科学室が気になり、放課後に訪れてみた。
例の鏡が無くなっていた。
夕闇の中、準備室のドアの覗き窓が鏡の様に私の顔を写している。
あの時カナは鏡の前に立っていた。
昨夜の位置にあの鏡があったら、
このドアを壁に着くまで
開ききれば、覗き窓と鏡で
合わせ鏡になり、カナは
その間に立っていた事になる。
それに気付いたら何故か
寒気がした。
やがて新たな怪談が流れた。
夜12時に校内のどこかの窓を覗くと、真っ暗闇の中必死に助けを求めて来る女子の姿が見える。
その後ろには手首から血を流した女が立っている。
級友のミカが、噂を確かめてみようと私を誘って来た。
私は珍しく、嫌だと断った。
怖い話投稿:ホラーテラー さわさん
作者怖話