俺の叔母が住んでいる一軒家、古くて未だにボットン便所なんだけど。。。
家の隣にはかなり古い井戸がある。それは誰も使わなくなり、誰も近づこうとしない井戸。
俺は小学の頃たまに叔母の家に行ってたんだが、いつもそこに何があるのか、中はどうなってるのか気になってた。叔母に聞いても「私が生まれる前からずーとあるけど、母に聞いても何も教えてくれなかったねー・・・」としか言ってくれなかった。どうしても見たい。好奇心が強い俺は小さい体で夜、一人で行くことにした。
決して暗闇は好きじゃなかった。むしろ霊とか見るのがめっちゃ怖いぐらいチキンだった。心霊番組見るとおねしょするし、夢にも出てくる。それでも行って、あの井戸には何があるのか、人目見たかった。勇気を振り絞って、その井戸に向かった。
草が覆って原型が分からない井戸、夏なのに凄く寒く感じた(薄着だったかもしれないけど)。。。1歩づつ前に出て、左右前後キョロキョロしてた。そしてやっと井戸に到着。その時点で俺は引き返そうと思ったはず。。。でもやっぱ中がどうなってるのか見たい。
「見ちゃえよ。見ないと気がすまないんだろ?明日にはもう帰るんだから、今しかないって!」
「いやいや、ここまで来たんだよ、十分じゃん!学校に戻ったら、自慢すればいいじゃん!危ないから、やめときな!」
俺は結局見なかった。怖いのは無理なんだ。しかもその時は小学生。見れるわけがない。後悔はするけど、また今度。。。今度来るときに絶対見よう。叔母に聞いても、親に聞いても教えてくれなかったあの井戸、絶対見つけてやる。。。
あの井戸を見ようと思ってからもう5年が経った。中学生になり、久しぶりに叔母の家に行く事になった。相変わらず叔母は不老不死かって思うぐらい若く見える(現在40代入ったばっかな気がする)。。。
そしていつもと変わらず井戸は家の近くにある。正確には家の隣に野原があって、その奥に井戸がある。今思えば小学生でよく行けたなーって思う。ちなみにその井戸の向こうには崖があって、それを上ると森に入る感じなとこ(だった気がする)。今はもう心霊番組も、心霊写真も、ホラー映画も、怖いものは見れるようになった。友達と肝試しした時も「お前あんま驚かないからつまんない」って言われるほど慣れた。
今回はビデオカメラを用意、録音しながら井戸に向かう予定だ。でもやっぱり根っこからチキンだから、お守りもって行こうかとか悩んでた。結局俺は十字架持ってく事にした。キリスト教でもないのに。悪魔が出てくるわけでもないし、バンパイアが出てくるわけでもないのに。
余談だが俺は今日本に住んでない。外国に住んでるから日本語より英語のほうができる。肝試しの時、驚いた時は「うわっ!」とかじゃなくて「wow」とか「shit!!」とか言ってた。
話しは戻って、俺は夜ついに井戸に行く事にした。録音を始める。
「Ummm I’m In a very small road right now walking towards that well and a… its quite cold around here. Just like when I went here when I was a kid…」
と何故かテンパったせいか英語で話し始める俺。恐怖心はそこまでなかったんだが、やっぱ悪寒は感じる。
「今井戸に着きました。えーすっごく寒いです。小学の時よりも寒いです。。。やば。。。」
段々震え始めて、周りのささいな音でも敏感に反応するようになった。
ゴボゴボ。。。ゴボゴブゴボ。。。。
それを聞いて俺ははずかしながらも「おおおおぅ!!!??」って叫んだ。井戸からだ。よく見てみると、井戸には蓋はなく開いてる状態だった。
「よく悪霊を封印するためにお札とかあるのに。。。これないんか。。。?」
こっからまた俺は2択から選ばなきゃいけない:
・頑張って井戸に近づいて最後まで中をビデオカメラで撮るか
・逃げる
迷う時間なんてなかった。俺は決心した
逃げよう。
チキンなんです、ごめんなさい。。。
そっから振り向いて帰ろうとした時、背中が一気に鳥肌が立った。寒さが感じなくなった。震えも止まった。静かになった。
「後ろになんかいる!!!」
俺は怖くて振り向けなくて走って家に戻った。
次の日にはもう行く気が完全に失せた。もう怖いのは無理。。。絶対行かない。。。呪われるかもしれない。。。死ぬかも・・・?
そう思って結局俺は自分の家に戻った。
でもこの頃はまだ知らないだろう。高校になって最後にもう1度、あそこに戻ることを。。。
小学の時も中学の時も、井戸の中を見れなかった俺。高校になってもあの井戸の中には何があるんだろうと今でも思う。ちょうどその時祖父の1回忌があってそれで帰省する事になった。もちろん叔母の家に行く事になる。今度は絶対見よう。。。何としてでも。。。
なんやかんやで日本に着いて、叔母が住んでるとこまで来た。小学の頃は井戸はかろうじて見えてる状態だった。中学になって草が覆い、高校になった今では井戸があんま見えない。それでも場所は覚えてるので夜に行くつもりだった。
今回は井戸以外にももう1個、何か気になる点がある。井戸の後ろにある崖。あの上を上ったら暗い森になってるんだが。。。あの中には何があるんだろうか。。。井戸以上に怖い何かがあるかもしれない。。。相変わらず好奇心の強い俺は井戸の前に崖を探索しようと思った。叔母の家に着いて2日目ぐらいの日に崖のとこ行く事にした。外は暑く、ジメジメしてて汗がハンパない。。。井戸の近くまで行ってみて通りすぎる時、
ゴボ。。。
周りが静かになる。。。自分も固まった。
(どうせ夜怖がって見れないから、今見ればいいんだよ)
そう思って俺は恐る恐る井戸に近づく。。。足が震える。。。後ちょっと。。。鳥肌が。。。また寒くなってきた。。。
「何してんの?」
姉が後ろから話しかけて俺はビビった。
「脅かすなよ。。。井戸の中どうなってんのか見ようとしただけ。」
「。。。やめときな。。。」
「何で?何か知ってるの?」
「ここさ。。。寒くない?」
「うん。来るたびに寒く感じる。。。」
「うちも来たことあるんだよ。一人で。その時は蓋があって見れなかったんだけど、何か音は聞こえたんだよね。。。」
「俺も聞いた。。。って。。。。蓋?」
「うん、蓋あるじゃん。だから見れないよ。」
俺はこの時これはもう好奇心で来るもんじゃないと確信した。
「。。。。蓋。。。俺が来た時はなかったぞ。。てか今蓋ないよ。。。?」
「え???前回うちらが来た時(中学の頃)はあったよ!?」
「分かんない。。。俺は見ようと思わなかった。。。。」
「もう行こう!ヤバイってここ!」
俺らはすぐに家に戻った。その夜、じいちゃんが来たからあの井戸の事について聞いてみた。
「井戸?あーあれか。。。あれがどうした?」
「あの井戸。。。中どうなってんの?」
「。。。。じいちゃんが高校の時にできた奴だからなー。。。あんとき嫌な噂があってな、夜になると使われてない井戸がゴボゴボーって音がするらしい。朝になって人が見に行っても何もない。あそこは絶対行くなよー幽霊がお前を取って食うかもしれんよ!!!」
結局何があったか教えてくれなかった。。。夜行くの怖いから明日の朝行こう。。。そう思って俺は普通に寝た。
そして次の日の朝、朝飯食って井戸に行こうとした。細い道を歩いてたら俺は凍りついた。
目の前に女の子が立ってる。びしょ濡れで髪が顔を隠して見えない。
正直ちびりそうになった。周りがまた静かになる。叫べない。動けない。
「イッショニイコウ。。。」
そう聞こえた。。。彼女はゆっくりと向かう場所を指で指した。井戸だった。
「イコウ。。。」
まだ動けない。。。声も出ない。。。だんだん近づいてる。。。
「イコウ。。。イコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウイコウ!!!!」
突然俺の手をつかんで引きずって井戸に向かった。俺はようやく動くようになり、手を離した。彼女の首が180度回り、後ろ向きで俺を睨んだ。腐敗してような顔でグロかった。
俺はすぐに立って走って逃げた。まさか朝に出てくるとは思わなかった。下見てみたらちょっとちびってた。後ろ振り向くと何もいなかった。俺は中学の時は霊とか見てみたいーとか友達と話してたが、いざ体験するとここまでの恐怖を味わうことだなんて思いもしなかった。
誰にもこの事については言えなかった。結局あの子は何だったのか、何で井戸に引き込もうとしたのか、まったく分からないままだ。。。
てか崖行くとか言って行ってなくね?
怖い話投稿:ホラーテラー 霊打さん
作者怖話