中編3
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M下君

先日、久しぶりに彼から連絡があり、いろいろと思い出した。話す相手もいないし、少し昔話に付き合って欲しい。

M下君と会ったのは、僕が24の時だ。転職した会社の二ヶ月先輩で、僕の3コ下。僕は二ヶ月でも先輩だから敬語を使ったし、彼も僕のが年上だから敬語を使ってくれた。

最初はさん付けだったけど、彼が嫌がったのでM下君と呼ぶようにした。

お互いに敬語のままだったけど、バス釣りという共通の趣味があったためにすぐに仲良くなった。

毎日のように、彼の住む会社の寮に寄って酒を飲み、バカな話で盛り上がった。

ある日、一緒に釣りに行く事になった。彼は九州の出身で、このI県に来てまだ半年らしく、釣り場もわからないと言うので、僕がガイドをする事にした。

夜中の二時に出発し、明け方に目的のダムに着く予定だ。

その車中で夜中ということもあり、僕がなんとなく怖い話をした。すると彼は、「Y内さん(僕のこと)霊とか信じてるんですか?絶対、信じそうにないっすけど。」と聞いてきた。

「まぁ、怖い話やホラー映画は好きですけど、あまり信じてないっす。合コンで、自称霊感女を泣かしたくらいですから(笑)」

「あー、いますよねぇ…。いやー、ここ何かいるぅとか言うヤツ(笑)」

「そんなにそこら辺にいてたまるかっつーの!(笑)」

で、新しく買って今日が初出勤のルアーの話などをしながら、ようやく目的のKダムに到着した。

僕も久しぶりの釣りとあって、テンションあがりまくり。ゴムボートも急いで準備して、荷物を積み込みさっそく出航。

まずは、良さそうな場所を探しながらアッチコッチとルアーを投げてみる。

僕はペンシル。彼はワーム。(ルアーの種類だと思って下さい。)M下君はとりあえず一匹は釣りたいらしい。坊主は絶対にイヤだと。

僕はトップしか持ってきてない。坊主にも慣れっこだ。

バシャッ!バスが僕のルアーに食い付いてきた。惜しい!のらず…。

昼まで、バスの反応はその一度きり…。M下君も全くダメ。

ゴムボートで、めんどくさいのはトイレだ。どこにでも上陸出来るわけではない。足場なんてなかなかない。

なんとか小さいスペースを見つけ、そこにボートを寄せる。小さい川が流れ込んできてて、天然の水洗トイレのようなスペース。

「よりによって、そこにします?」とM下君。

「そうっすか?いい場所じゃないっすか?」

僕だけ陸に上がり、ゴムボートの紐を持ちながら、立ちション。

カシャッ。後ろから、シャッター音。

「マジッすか!(笑)」

その後も全くアタリもなく、暗くなってきたので終了。クタクタになりながら、帰り支度。釣れなかった時は本当にしんどい。

何とか荷物も積み込み、車に乗ろうとすると、

「オイッ!!」と急に叫ぶM下君。

「あっ、すいません。」とだけ言って、そそくさと車に乗り込むM下君。

帰りに寄ったそば屋で、M下君が急にカミングアウト。

「信じなくてもいいっすけど、Y内さん、女におしっこかけてましたよ(笑)」

「なにそれ?」

「あの流れ込んでた小さい川あったじゃないっすか?あそこから、鼻から上だけ出してた女がいたんですよ。証拠写真を一応撮っておきました。」

「えーっ!見える人なの!?っていうか、おしっこする前に言ってよ!もう、突っ込むトコ多すぎますよ」

「まさか、帰りのオイッって…」

「乗りそうな雰囲気でしたね」

「マジでぇ……」

なぜか彼の話は信じる気になり、初めての体験に一気にテンションが下がった。

それから1週間後、写真を現像に出した。

出来上がった写真をドキドキしながら見たら、僕がおしっこしてる写真だけがなかったが、店に理由を聞く気にはなれなかった。

怖い話投稿:ホラーテラー Y内さん  

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