真面目に描いたから全然面白くないよ!
やっぱうんこの力ってでかいな。
駄作です。
森の中に美しい湖があり、その近くに一本の葉の付いた木があった。
背丈80cmほどのその木は周りの花や草よりも明らかに輝いていて、煌めくような生気を放っていた。
不思議なことにこの木はすべての葉が年中枯れることなく、いつ見ても瑞々しく綺麗な緑の光を映していた。
この木の美しさを守るある少女がいた。
この少女もまた綺麗で可愛らしい。
無垢な笑顔は周りの人々を笑顔にし、白い肌は日の光を元気に跳ね返した。
人柄としては普段明るいが、どこか儚げなところがある不思議な女の子だった。
たくさん友人がいたが、特に仲良くしている男の子がいた。
この男の子はギターが好きで、よくアコースティックギターを弾いていた。
2人きりの時は男の子がギターを弾き、女の子が歌う。
その歌声は天使のように彩り豊かでもあり、生きる力を注がれるような力強さもあった。
でも恋人同士ではない。
女の子は恋をしているのだが、男の子は純粋に音楽に恋をしていた。
男の子は彼女の声の素晴らしさを十分に理解したと思い、「曲を作ろう。」と持ちかけた。
共同作業ができることのうれしさに女の子は張り裂けそうな胸を必死に抑えた。
赤くなった顔を恥ずかしく思いながら小さな声で返事をした。
男の子が作曲し、女の子が詞を作ることになった。
まず、男の子が曲を作るため女の子は暇になる。
「ちょっと待ってて。」
女の子は席をはずしどこかへ向かった。
あの木の場所である。
彼女は毎日のこの木の世話をしている。
いや、せざるを得ないのである。
これが彼女の悩みの種だった。
彼女にとって世界一嫌いな植物である。
だれにも見られたくないので、いつも一人でやる。
用を済ませて男の子のところに戻った。
男の子は、「曲できるのにしばらくかかるみたいだからまた今度にしよう。」といった。
彼女は寂しくもあり今度の再会の約束がとてもうれしかった。
数日経ち、女の子は姿を見せなくなった。
男の子の曲はもう出来ているのに…。
よく考えると彼女の家を知らなかった。
「どうしたんだろう?」
曲のことと彼女のことが頭から離れなくなった。
死ぬほど気になる。
ふと近所の人話を盗み聞きした。
「最近いろんな植物が病気のせいで枯れていってるらしいわ。」
「そういえば、同じことが前にあったわね。」
というものだった。
また日が経ち、男の子は友人と森でかくれんぼをしていた。
実はまだ女の子のことは忘れていなかった。
のどに刺さった小骨のようである。
男の子は他の子とはぐれ、何か引力のようなものを感じた。
「こっちにいかなきゃ!」
そんな衝動に駆られ、誘われていく。
行き着いた先には一本の木。
あの驚くほど美しい木である。
距離が近づくごとに誘惑が薄れていく。
「何だろうこの木。」
木に興味のなくなった男の子は家に帰ろうとした。
この森は全く知らなかったが、何度も人の通った道があり、それに沿っていった。
先のほうで何か動いていた。
「えっ!」
彼は生まれて一番の驚きを覚えた。
彼女だった。
一生懸命地面を這ってくる。
「み…みずをあげて…。」
「ん?何?」
「向こうの木に水をあげて…!」
男の子は湖の水を木に与えた。
そして女の子のもとに走る。
「なぁ、どうしたんだよ!」
「わ、分かった。帰ろう。案内しろ。」
女の子を担いで家に走った。
これまた知らない場所だった。
ダイワハウスのような閑静な一軒家、しかしかなり古い。
女の子をベッドにやるなり病院に電話しようとした。
すると、「やめて!!!」
女の子が止めた。
「なんだよ!具合悪いんだろ?」
「ごめん…今から話すからちょっと聞いて。」
女の子は男の子を信じて話し始めた。
「だれにも言わないでね…。実は私の祖先はある契約を交わしたの。私の祖先はあの森の近くに住んでいたの。そしてその契約っていうのが、森を枯らさないこと。そうすれば、森が生きている限り命を失わないというものなの。祖先の一人一人に木を授けられてそれを守り続けるっていう流れになったの。だからあの森、前より小さくなったでしょう?それはこの契約を結ぶ人間が私一人になったから。今の植物が枯れていく病気でたくさんの祖先が死んでいった。私の両親も。だから私は毎日あの木の世話をしているの。」
「じゃぁ、あの木が枯れれば…。」
女の子は男の子に抱きついて泣き出した。
「そうか。辛かったな独りで。よし!俺に任せろ!!」
その日から木の世話が彼の日課になった。
彼女の家に寄り、湖の水をあげるのだ。
曲ができていたことを彼女に話し、詞を作るように頼んだ。
植物が枯れていっているため彼女の体調は万全ではないが、2人でいるときは本当に楽しそうで、男の子もうれしかった。
彼女が紡ぎだす詞というのがまた秀逸なもので、彼は心から感動した。
もちろん中身はラブソングだが、男の子に宛てていることは気付いてないようだ。
新たなインスピレーションを求めて彼は彼女を外へ連れだした。
「知らないところなイイよね。」、男の子は彼女に元気になってほしかった。
行った先で彼女は無邪気にはしゃいだ。
不安の影を薄れさせるほどに。
その後ももっと遠くへ行った。
遊び疲れた気持ちよさに抱かれ帰り道を歩いていく。
ところで、とても大きな工場が見える。
この地域では有名で公害問題が発生しているため、生き物がほとんどいない。
読者とこの男の子の頭に何かよぎるのもがあったろうと思う。
「こいつらが植物を枯らしているのか?」
しかしその可能性は低かろう。
距離の問題がある。
2人はもとの町からかなり遠くまで移動してきた。
有害物質の類は届かないだろう。
いつかは原因を突き止めたいと思っている。
彼女のために動き出している自分に気づく。
男の子は音楽バカで勉強していなかったが、いろんなことを調べに通いなれない図書館に行ってみた。
彼女を救う答えがあると信じ、眼を血走らせる。
埃でせきが出ようとかまわなかった。
情報の波が脳に押し寄せ、一瞬のめまい。
そのとき、救いの手が差し伸べられた。
この一行だった。
「この地域は特殊な地形によって、一年のうち数ヶ月間北のほうからとてつもない突風が吹く。」ということである。
頭の中で点と線が繋がった。
植物の枯れる現象が定期的に起こっていた理由。
「やっぱりあの工場だ!」
真実を突き止めた男の子の心は希望であふれかえった。
「あの子を助けられる!!」
すぐさま工場の人間と話をしたが、相手がこともだということもあり、聞く耳を持たない。
この工場で行われているのは新薬の開発であったが、工場ができて以来全く成果を出しておらず、有害物質を垂れ流しているだけなのだ。
こんなくだらない奴らに大切な人を奪われるのか?
絶対許さん。
彼はこの工場を潰すことを心に決めた。
日がたつごとに彼女は弱っていく。
まるで何かに食われていくように。
それでも音楽をやる時は元気になってくれる。
工場のことは彼女には伏せておいた。
やさしい彼女は復讐を止めるだろう。
この世のどんなルールを破っても彼女を守りたかった。
人生で初めて人を殺す覚悟をした。
数日後、計画を実行することになった。
彼女には木に水をやったあと少しあった。
何気ない会話をしたが、変に元気がなく悲しげだった。
殺人鬼と化したその子は工場へと向かう。
外が明るかろうが関係ない。
全員殺すだけだから。
社員数は20人らしい。
その20人の命より汚れのない一人の少女の命のほうがよっぽど重く感じた。
社内に忍び込んだ彼は景気づけに一人殺した。
いろんなものが押し寄せた。
人を殺したショック・憎きを殺める快感・目に映るグロテスクな死体。
もう戻れなくなったと知り、次を殺りに行く。
大掛かりな機械に薬品を流し込んでいる奴がいた。
こいつはそのまま足を持ち上げて機械に突っ込んでやった。
人間圧搾機と化した機械に元気に血を撒き散らしながら呑まれていく。
闇にのまれいていく少女と重なるものを感じた。
理性をなくし、機械的に人を殺していく。
工場の機械と一体化したように。
三人目を殺そうとした次の瞬間!
涙があふれてきた、視界を覆って見えなくするほどに。
「う!うわぁーーーーーー!」
訳が分からない中で体の力が抜けていく。
とりあえず工場の外に出た。
涙は流れ続けどうにもできなくなり、帰ることになった。
理性が戻ってくるのを感じ、よく考えてみた。
一番最初に思い出したのは、顔を見られた奴はみんな殺したということだった。
証拠を残した覚えもなかった。
次に考えたのはあの涙だ。
異様な量だった。
「もしかしたらあの子の涙だったのか?」
この考えは彼の中でいやにはっきりと確信を持たせた。
彼女が止めてくれたんだ。
あぁ、人としていちばんしてはいけないことを…。
また涙が出てきた。
彼の中の汚れを連れ出すように流れていく。
そのまま夜になった。
人生で一番長い夜。
もうどうにもできないことを悟った。
それと同時に彼女のためにできることをしようとも思った。
曲の完成だった。
次の日、彼女に会っても変わった様子はなかった。
彼女がこのことを知っているのか、知らないふりをしているのか分からなかったが、会話を汚したくなかったため触れなかった。
あの優しい時間に溶けていく。
昨日に比べてなんて心地いいんだろう。
できる限りこの時間が続くように努めた。
何度もセッションを重ねてついに曲ができた。
ギターの澄んだ音色、彼女のあまりに愛しい声。
この世のものとは思えぬほど美しかった。
その日を軸に彼女の衰弱は目に見えて加速した。
受けた痛みと同じだけ時を戻せたら…。
彼女は儚さを増していく。
しっかり抱きしめていても消えていきそうだ。
近づく終幕に言葉が出ない。
社員の生き残りは毒を撒き散らし続けた。
そして彼女は消え去った。
素敵な記憶と歌を残して…。
それでも彼女は自分の中で生き続ける。
死んでも忘れない。
…。
数日後、あの木は枯れ果てて、少年は処刑されようとしていた。
僅かながら証拠を残してしまっていたらしい。
少年は執行人にお願いした。
「俺が死んだら遠い町の森の中の湖に沈めてくれ。頼むぜ。」
彼女に元気を与え続けたいということだったのか。
命は光を受け煌めき、次の季節に向かう。
怖い話投稿:ホラーテラー tkさん
作者怖話