M下君は、会社の二ヶ月先輩で3コ下だ。お互いに敬語で話し、釣りとお酒が大好き。
自分からはあまり言わないけど、みえるらしい。
いつものように、仕事終わりにM下君の部屋でお酒を飲んでいる時に、聞いてみた。
「そういえば、なんで九州から出てきたんですか?」彼は九州の出身で、会社の寮に住んでいる。
「あー、いろいろあるんですけど…。まぁ、Y内さんならいいか…」
会社の他の人には、絶対に言わないで下さいよと前置きして話し始めた。
「実は僕の実家って、拝み屋なんすよ」
「拝み屋?」
「神仏に拝むんです。先祖供養、水子供養、お祓い、お清め、個人相談とかですね。祈祷師とか言う人もいますけど」
以下、M下君の話
すっげえ、胡散臭い感じしません?拝み屋って…。
でも、親父だからかばうわけじゃないですけど、ちゃんとしてましたよ。料金もぼったくるわけじゃないですし。他のトコに比べたら安いんじゃないっすかね?貧乏でしたし(笑)
まぁ、親父は好きですけど、普通のサラリーマンのが良かったですね。だって、夜中に走り回る足音は聞こえるし、霊はたまに家の中でも見るし…。
朝夕と有志の人達が集まって、みんなでお経あげてるんで、いつの間にかいなくなってますけどね。
でも、また集まってくるんですけど(笑)
そういえば、高校生の時の話なんですけど、自分の部屋に入ったら、誰かいる気配がするんですよ…。
押し入れを開ける。……いない。
机の下を覗く。……いない。
ベッドの下。……いない。
おかしい…。絶対にいるはずなんです。もう残るのは、押し入れの上にある小さい押し入れだけなんですよ。
まさか、こんなトコには…。って思いつつ一気に開けたんです。
そしたら、そこには白髪のババァがうつ伏せで頬杖をついてんすよ。
「やっぱここかよっ!!」って思わず突っ込んじゃいましたね(笑)
いやぁ、あの時は後で自分でも笑いましたよ(笑)慣れすぎだろって思いましたもん。
あとは、霊でもいいから若い女が部屋に来てくれたら、オ〇ニーしてるトコを見せたかったとか、笑いながら話してたけど、無理してる感じもした。
小学生のころは学校でも、からかわれたりしたようで、それ以来誰にも父親の仕事の事は言わなくなったと言っていた。
またM下君の話に戻る。
で、家を出るきっかけなんですけど、ある日曜日に自分の部屋で転がっていたら、とんでもない殺気のようなものを感じて、飛び起きたんすよ!
「うそっ!!」って口に出して言ったのをはっきり覚えてますもん。
一階に降りてみると、親父が母さんに、〇〇さんと××を大至急呼べ!
って怒鳴ってたからビックリしましたよ。
いつも冷静沈着でしたからね。
で、二人のおばさんと一緒に中学生くらいの男の子が来てたんですけど、ガリガリなんですよ。
その男の子の隣に、鋭い目つきのオッサンの霊が見えるんです。
聞こえないんですけど、何かブツブツ言ってて、その男の子の手を握ってるんですよ、ずっと…。
人間でも、たまに話が全く通じない頭のおかしいヤツいるじゃないですか?
めちゃめちゃそんな感じなんですよ。まぁ、霊だって元人間ですからね。
で、除霊が始まったら、親父の顔を間近で下からすっごい覗き込んでましたね…。
僕は、久々に怖くてめっちゃビクビクしてましたよ。自分の部屋に避難しました。
親父達は交代しながら、ずっとお経あげ続けてましたね。
月曜の夕方に僕が仕事から帰って来ても、まだやってて引きましたよ…。
で、夜中の1時くらいにやっと、男の子とおばさんが帰ってったみたいなんで、一階に様子を見に降りたら、あのオッサンが親父の肩に顔をのせて、後ろから抱きついてました…。
親父もこれは時間をかけて浄霊するしかないって、あきらめたみたいでした。
それまでは、微熱だったり、軽い関節痛だったりあまりひどい霊障ってなかったんですけど、この日からは急に膝が曲がらなくなったり、いきなり吐いたり出勤出来ない日もあって、親父にも言われて逃げてきたんす。
あっ、オッサンの浄霊ですか?1ヶ月ぐらいかかったみたいですね。
いつもは興味本位で聞いても、相談に来た人の事は絶対に教えてくれないんですけど、今回は僕も引っ越すはめになったんで、教えてくれましたね。
あのオッサン、男の子の親父だったって…。
その日は、M下君の部屋に泊めてもらった。
怖い話投稿:ホラーテラー Y内さん
作者怖話