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中編4
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長いです。

中学の時に、Aという友人がいた。

そいつは小学時代から探検とかが好きで、よく秘密基地とかも一緒に作った。

Aの最も好きなことは廃墟探検だった。

僕の住んでた町は、いわゆる「昔は栄えてた」というやつで、

近所には新旧関わらず人の出入りのない建物が、

ゴロゴロあった。

Aはそういう近所の廃墟のほとんどに行ったことがあって、

どこから簡単に入れてとか、何階にアレがあってとか、とにかく詳しかった。

ある日僕は、Aに廃墟に行かないかと誘われた。

それはいつもの町の方ではなく、学校の裏山にあった。

山を少し登った所にポツンとある、小さな一軒家がそれだった。

見た目はただの一軒家だった。

壁もそれほど汚れておらず白いままで、全体的にこざっぱりとした家だったけど、

窓が割れていることや、玄関の戸が半分開いていることが、人の住んでいないことを表していた。

何よりも、家の裏にある竹林の葉が、

屋根全体を覆っていて、

何ともいえない雰囲気を醸し出していた。

Aは全く躊躇せず玄関の戸を開け、中に入った。

自分も慌てて続けて入り、驚いた。

綺麗なのだ。

Aと今まで何度か行った廃墟は、どれもゴミは散らかっているわ、

落書きはあるわで、ひどい有様だった。

この家はそうではなかった。

埃っぽいがゴミも落書きもなく、住民の生活の跡がほぼ完璧に残っていた。

綺麗に並べられた靴や、靴入れの上に置かれた子供が作ったであろう、

木彫りの人形が静謐に佇み、まるで住民が突然いなくなり、

そのまま時間が止まってしまったかのような印象を受けた。

「おい、U!見てみろよ!」

玄関の先にあるリビングに先に向かっていたAが叫んだ。

リビングには異様な光景が広がっていた。

角机の上には、食事(だったもの)がそのまま残っていた。

茶碗は全部で4個あり、1個は子供用の小さなものだった。

それ以外にも魚を乗せていたであろう平皿や、味噌汁の椀などが、

机の上に並んだままだった。

しかしそれよりも異様だったのは、その上に撒かれていた「砂」だった。

いや机の上だけじゃない。

それはリビングじゅうに満遍なく撒かれ、

地が出ていない所は無いくらいだった。

「砂」はすごく薄い茶色をしていて、すごくサラサラしていた。

例えるなら、泥団子を作る時に使うさら粉。

あれの色をもっと薄くしたようなものが、リビング全体に積もっていた。

床の上に紙が落ちていた。

拾って見ると、クレヨンで絵が描いてあった。

子供が、父親らしき大人と電車に乗っている。

ずっと見ていると、妙なことに気づいた。

色のついた部分が、でこぼこしている。

「…これ、砂?」

「上に砂がかかったんだろ」

「でも、砂の上から描いたように見える・・・」

「まさか。こんな砂まみれの所で子供が絵なんか描くかよ?」

砂はなおも部屋全体を覆っていた。

リビングから繋がる書斎。

大きな箪笥と仏壇の置いてある和室。

どれも余すところ無く砂に支配されていた。

「なんか、砂に飲み込まれたみたいだよね・・・?」

一番奥の風呂場に辿り着いた時、

僕達の不安と恐怖は確実なものになった。

浴槽は砂で満たされていた。

コテでならしたように、縁に沿って平坦になっており、

その四方には、砂よりも白い蝋燭が、1本ずつ立っていた。

「・・・U、帰ろう」

この異常な空間と空気から、一刻も早く逃れたかった。

でも僕は、玄関まで戻る最中に見つけてしまった。

食器の残された机の上に、子供の小さな手形が残っていることに。

それはそこにだけ異様にはっきりと残っており、

まるで本当に砂の中で生活した跡のようだった。

でも親の足跡などは全く見つからなかった。

Aも僕も、後ろを見ずに玄関を出て、

真っ直ぐ山を降りた。

ずっと無言だった。

家に帰って何日かした後、あの砂について調べてみた。

流石に家の中に砂を撒く、なんて話は見つからなかったけど、

玄関に置く盛り塩、という話が目に止まった。

盛り塩はもともと塩ではなく、白い砂を用いていたのだそうだ。

魔除けとして、鬼門である玄関と、裏鬼門である裏口に、それぞれ盛るらしい。

あの家は、玄関には盛らずに、家の一番奥(裏口は無かった)に、

異様なほど砂が盛ってあった。

そんなことしたら、魔は玄関から入ってきて、

裏から出ずに家の中でどんどん増えていくのでは?

しかも本来の白砂でも塩でもなく、薄茶色い砂では、

余計に魔は除けられず、

一ヶ所に溜まるのでは?

僕はあの家の雰囲気を思い出し、改めてゾッとした。

あれ以来Aは廃墟探検をやめてしまったらしい。

僕もAとは疎遠になって、そのまま違う高校に行ってしまった。

裏山はまだある。恐らくあの家もある。

でももう行きたいとは思わない。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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