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長編16
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祠 改

私達は、当時大学生。

私と、AとB、それとC。

私達4人は中学の時からの知り合いで、仲が良かった。

ある日、4人でBの家に集まった。

その日は、みんなバイトが休みで久しぶりに集まることが出来たので、結構話が盛り上がった。

その時、Cがあることを言い出した。

C「この前、バイト先の先輩に聞いたんだけどよ、この辺の山のふもと辺りって、妙に不自然な祠があるだろ。

しかも、周りには立ち入り禁止のテープが張ってあるし、

だからよ、その先輩が調べたんだって!

それがなんなのか。

とりあえず、先輩ん家から一番近い山に行っってきたんだって。」

Cの言うとおり、この辺の山のふもとには、変な祠がある。

それが何なのかは、わからなかったが。

私「なんかあったのか?」

C「な~んにも!薄汚い祠と、その中にコケ生えまくりの石みたいのが置いてあっただけなんだってさ。

で、先輩がそれを持ち帰ってきて、コケを全部はらい落としてみてんだって!」

B「お前の先輩、馬鹿じゃねぇの!?

何もって帰ってきてんだよ!」

C「まぁ聞けって! それでコケをはらい落としたら、石に何か書いてあったんだったってよ」

そう言うとCは自分のバックをあさり始めた。

C「これなんだけどさ・・・」

我々は仰天した。

Cはあろうことか、その石を持ってきていたのだ。

A「うわっ!お前何もってきてんだよ!!」

B「馬鹿だろ!お前も!!」

C「なにびびってんだよ。

ほらここ! 何か書いてあんだろ?」

確かに、何か書いてあるようだったが、かすれていてよく読めない。

私「なんて書いてあんだよ?」

C「先輩の話では、読めるとこだけ解読すると{二の点〇〇のみ〇こ}って書いてあるらしいぜ」

・・・・・・・・。

A「意味わかんねぇな」

B「もういいから、さっさと、そんなもん捨てろ!!」

C「そうはいかねぇんだよ。

先輩に、これもとの場所に返してくるように頼まれてさ。

これから付き合ってくんね?」

私「はぁ!? ふざけんなよ」

A「行くわけねぇだろ! 絶対やべぇってそんなとこ!」

B「お前の問題だろ。お前だけで行ってこいよ」

C「そう言わずにさぁ、頼むよ!」

嫌だと言う私達に、Cは何度も頼み込んできた。

C「なぁ?頼むよ!」

我々「・・・・・・しょうがねぇなあ」

Cのしつこさに我々は、仕方なく了承をした。

それから皆で車に乗り、その祠がある山に向かった。

山に着くと、すぐに祠があった。

立ち入り禁止のテープは、Cの先輩が入ったからなのか、少しゆるんでいるように見えた。

C「じゃあ、戻してこようぜ」

B「お前一人で行って来いよ、俺らここで待ってるから」

C「マジかよ!?来てくれよ一緒に!!」

またもやCは頼み込んできた。

こうなるとCは止められない。

A「・・・・・まぁいいか、戻してくるだけだし。」

私・B「ったく!」

C「おぉ!心の友よ!!」

私「本当に調子のいい奴だな・・・」

C「へへっ」

そう言うと我々は、立ち入り禁止のテープの中に入っていった。

祠の前に立ち、我々はCに例の物を、という視線を送った。

Cはバックを開け、石を取り出した。

これでよし。

Cは祠に石を置き、そう言うと、「帰ろうか」と私達に言った。

無言で頷き、私達は車に向かった。

立ち入り禁止のテープをくぐり、車に乗り込もうとした時、

Cが、祠の前で立ち止まってるのが見えた。

私「どうかしたのか?」

A「早く帰るぞ、もう遅くなっちまった」

Cが、口をパクパクさせているのが分かった。

私「何してんだよ? 早く来いって!」

Cは口をパクパクさせている。

何かを言っているようだった。

私とAは顔を見合わせ、Cに近付き、何を言っているのか聞こうとした。

A「何やってるんだよ?

ふざけてんのか?」

するとCの声がかすかに聞こえ始めた。

C「・だ・すけ・・・・で・・・・」

まだ、よく聞こえなかったので、再び立ち入り禁止のテープをくぐろうとしたとき、突然Bに肩をつかまれ止められた。

Bは尋常じゃない顔つきで私達を見つめ、こう言った。

B「今入ったら、連れて行かれるぞ!お前ら!!」

いきなりの言葉で何のことだか分からない私達を引っ張り、Bは私達を車に連れ戻した。

私「一体何なんだよ!?」

A「なんかあったのか?」

するとBは

B「お前ら、あれが見えないのかよ!?」

その言葉と同時に、Cがものすごい声で悲鳴を上げた。

C「うぎゃああぁああ!!!」

Cはその場に倒れこんだ。

Bは車から出て、辺りをしばらく見回した後、立ち入り禁止のテープをくぐり、すごい速さでCを担ぎ、車に戻ってきた。

B「とにかく、ここを離れよう!」

そう言うと、Bは車を急発進させ、荒々しい運転で走り出した。

Cの顔は見ることの出来ないくらい険しい顔つきだった。

死んでいるんじゃないのかと思った度だ。

車の中で、Bに話しかけたが無言。

時折、バックミラーを見ていた。

しばらくして病院に着いた。

事情を説明し急いで診てもらった。

待合室で、待っている時にBが、やっと口を聞いてくれた。

私「なぁB、何があったんだ?」

するとBは

B「Cの周りに黒いモヤが見えたんだ。

それの中に顔がたくさんあって、そいつらが手を伸ばしてCを掴んでた。

祠の前に女が立ってて、お前らが入って来そうになったとき、嬉しそうに笑ってやがった…。

俺が止めに入ったら、どこかに消えちまったけどな。」

A「・・・なんだよそれ。」

Bの話は私達を恐怖におとしいれた。

どうしても、あのままテープの中に入ってしまったときの事を想像させられたからだ。

B「お前らを車に連れ戻して、Cが倒れたとき、そのたくさんの手が、Cから離れていったのが分かった。

周りを見ても、何も無かったからC連れて来たんだが・・・」

話しはここで途切れた。

それからしばらく、私達は口を聞けなかった。

Cの事、Bが言う女の事、もう頭の中がゴチャゴチャだった。

しばらくして

医者がやって来た。

医者「残念ですが…彼はもう助からないでしょう。もって今晩いっぱいなので家族の方に連絡してもらえますか?」

私「そんな!?」

するとBは何も言わず、黙って携帯を取りだし、Cの親に病院の事を説明した。

その途中、Bが言った。

B「すみません…」

Cの母はパニックを起こしていた。

しばらくして、病院についたCの母は、そのまま病室に入って行った。

その晩、Cは死んだ。

なんか、Cを見捨てたみたいで、妙に罪悪感が残った。

その後、私達は役場に行き祠の事を訪ねた。

何度も、役場にその祠の事を聞いていたら、歴史関係の部署で働いている一人のおじさんが出てきた。

その祠のせいで友達が死んだこと、その祠で見たものの事を全部話した。

すると、そのおじさんが話してくれた。

「あの祠は、昔、処刑場があった場所に続く道を塞ぐため、それと封印的なもののために、50年ほど前につくられたんだ。

祠は全部で五つ、それぞれ、山の周囲に作られていて、そこで殺された者を供養する意味でもたてられてるんだ。」

B「祠の中に石が入っていて、何か書いてあったんですが・・・」

だが、おじさんはそのことまで正確には知らなかった。

ただ、

おじさん「きっとその石は、そこの邪念的なものを封じるために置かれたものなんだろう。

それを、君達の友達がもってきてしまった・・・」

B「友達の先輩です」

Bがそう付け足した。

おじさんは、失礼と言うようなそぶりを見せ、話を続けた

おじさん「おそらく、それででしょうな。

一度、その場を離れてしまった石は効力が薄れてしまって、それで君の言う女が・・・」

そこまで言った時、Bがもういいですと、その場から去ってしまった。

私達はおじさんにお礼をいい、Bを追った。

Bは何も話さず、ただ泣いていた。

それから少しして、Cの葬式が行われた。

表向きは病死という事になっていた。

Cの母はひどく泣いていた。

私達も泣いた。

だが、これで終わりではなかった…

次の日、私達は別の山の祠に向かっていました。

Bが、どうしても確かめたい事があるのだそうです。

山に着くと、Bは祠を探し始めました

祠は少し進むと見つかりました。

ここの祠には立ち入り禁止のテープは無く、

代わりにコケだらけのお地蔵様がありました。

祠に近付くに連れて、徐々に雰囲気が重くなり、私は気持ち悪くなりました。

Bは、「そこで待ってろ」と言うと、祠を調べ始め、何かをメモ帳に書いていました。

しばらくして、Bが戻ってくると

Bは

B「次の場所行くぞ」

と言い、車に乗り込みました。

私とAも車に乗り、

次の祠へ向かいました。

昨日の夜、私達はBに集められ話しをされました。

BがCの敵を討とうと言うのです

私達がどうやって?

と訪ねるとBは

B「あの女をまた、封じ込める」

Bが言うには、他の場所にある祠を調べて

そこの謎を解こうと言うのです。

最初は反対しました。

やめとけ、とか、お前も死ぬぞ、とか…

ですが、Bはききませんでした。

仕方なく、調べるのはBだけということで、話しに乗り、祠に行く事にしました。

次の祠に着くと、Bは再びメモ帳を取りだし、

何かを書き始めました。

何を書いているんだ?

と聞くとBはメモ帳を

傾け見せてくれました。

「四の点○ち○すけ」

私「また、こんなのか…」

読めなかったのか、

○で書かれている字もありました。

Bはメモ帳を傾け直すと、また祠を調べ始めました。

そんなこんなで私達は

この辺一帯の山を調べ

合計、5つの祠を見つけました。(初めのも含む)

Bは、そのまま帰宅し、

私達はコンビニで買い物をしようと言いコンビニへ向かいました。

Cの持ってきた石のある、祠の隣の道に差し掛かった時、急に車のエンジンが止まりました。

ギュルルギュルルルル…

私「おい、なんだよ!」

A「どうしたんだ?」

ギュルルル、ボッ…

完全に止まった。

ヤバいなと私達は車の外に出てボンネットを開いてみたりしました。

暗い中での作業なので

どこが悪いのか解らない。

そのうちAがあることに気付きました。

A「おい、見ろよ」

Aが指さした方を見ると、白い何かがみえる。

こっちに向かって走って来ている。

はじめは犬かと思いましたが、それは違いました。

私「女だ…!」

白い服を着た女が、犬のように四つん這いでこっちに走って来ていました。

私「逃げろ!!」

A「わぁあぁあ!」

女は恐ろしい速さで距離を縮めてくる。

20M… 10M…

もうすぐ後ろ!!

A「だ…駄目だ、追い付かれる!」

私「馬鹿!諦めん…」

ガッ!!

言葉を発し終える前に

Aが私の視界から消えました。

振り返ると、Aは頭を女に噛み付かれ、のたれうち回っていました。

A「ぁあ!目がぁ!!」

女はそのまま、Aを頭からガツガツと飲み込み、闇の中へ走り去っていきました。

あまりの一瞬の出来事で

私はただ、立ち尽くし狂ったように声をあげました。

「あぁあぁああぁ!!」

声を聞きつけた近所の叔父さんがやってきて、Aのおびただしい血を見て慌てて警察を呼びました。

後日、事情聴取の後、私は釈放されAは行方不明として捜査が始まりました。

おそらく、二度と見つからないだろう捜査が。

あれから2週間が経ち、

警察の捜査は、相変わらず何の進展もなし…

私が事情聴取で何度、あのときの事を話しても、信じてはもらえませんでした。

Aは死んだ

いや、もしかしたら生きているかも知れない…

1日1日が過ぎるたびに

頭には、この2つの言葉と、Aを助けられなかった罪悪感だけが沸き上がってきました。

そういえば、Bはどうしただろう…

あれから一度も会っていませんでした。

Bなら何か手がかりをつかんでいるかも知れない!

私はBに連絡してみることにしました。

プルプル…プルル…

B「もしもし…」

私「あぁ俺だ、祠について何か解ったか!?」

B「(私の名前)か、だいたいな」

私「そうか…あの…Aの事なんだけどさ…」

B「あぁ聞いてる。行方不明だってな」

私「あぁ、その事なんだけど…」

B「……あの女か?」

私「…うん、多分な。お前が見たのと同じ奴だと思う」

私は見たことを全てBに話しました。

Bは私の話をまじまじと聞いてくれ、信じてくれました。

そのうちBが

B「今から俺んち来いよ、調べたこと教えてやる」

私「分かった。」

そして私はBの家へ向かいました。

Bの家に着き、2階にあがると、Bが部屋の扉を開けました。

B「こっちだ」

部屋に入ると、ものすごい量の本がそこらじゅうに重ねてありました。

私「おい、どうしたんだよこれ!」

B「図書館とかから借りてきた、あとこの地域の歴史館からも。」

Bはやるときはやる男でした。

こんな調べ物を、

たったひとりでやってのけるのですから。

私「で、解った事は!?」

B「うん、まずこれを見てくれ」

そこには厚いノートが。

そしてびっしりと字が書いてありました。

Bが上の方を指差し、説明をしはじめました。

B「まずこれだ、一の点なかはまやちよ」

私「なかはま…やちよ?」

B「あぁ、ここから北の山の祠の石に書いてあった文字だ。」

Bはそのまま、指を下にずらし

B「次にこれ、三の点いなきいち」

私「いな…きいち」

B「これは東の山の祠の文字。」

私「何か…名前みたいだな」

私は口に出して言ってるうちにそう思いました。

するとBは、

B「そうだ、これ全部名前…」

そう言うとBは

一気にノートを読み上げはじめました。

「四の点まちやすけ」

「五の点もがみわへい」

そして、あの祠、

「二の点はちのみやこ」

分からなかった文字は、

全て解読され、見事に埋められていました。

私はBに、この「○の点」というのは何を意味しているのか聞くと、Bは

祠がある場所を8方位で順番つけたものだと言っていました。

私「すげぇなB!どうやって調べたんだよ!?」

B「あぁ、全部これに書いてあった」

そういうとBは、一冊の本を取り出しました。

古いのか、かなり黄ばんだボロボロの本で、読めるか心配でしたが、

中身の字はしっかり読むことができました。

本の表紙には

「五高山伝記」と…

どうやら、あの山々は

全部で「五高山」と言うらしい。

私はBに聞きました。

私「で、肝心の封じ込める方法は!?」

Bは涼しい顔で答えました。

B「もちろん調べた。これ見ろ」

Bは再びノートを開きました。

そこには、祠が置かれる前の事が書かれていました。

※ノート内容

五高山、18××年

35名の処刑が実行された。

が、無実の者も居たため、役人の隠蔽(いんぺい)により処刑人は5名と発表された。

処刑人名簿

「中浜八千代」

(なかはまやちよ)

「八戸宮子」

(はちのみやこ)

「稲喜一」

(いなきいち)

「襠弥助」

(まちやすけ)

「最上和平」

(もがみわへい)

私「これって…!」

B「あぁ、あの名前は処刑された人達の名前だったんだ」

私「マジかよ…」

B「そして、八戸宮子だけが、無罪の人間だ」

私「はぁ!?それじゃあ…」

八戸宮子、二の点の祠に書いてあった名前。

そして、おそらくAとCを殺したあの女の名前である。

私「なんてこった…」

B「あぁ、あいつも復讐ってわけだ…」

私「そうだったのか」

B「…だが、同情すんなよ。いくら怨みがあるからってAとCを殺ったわけだ。俺達は許しちゃなんねぇ」

私「分かってる。」

B「…んじゃあ、これから封じ込める方法を教える」

そう言うと、Bは

次のページを開きました。

B「これだ」

そこには、

必要な物や呪文のような文字が書いてありました。

B「封印の方法はこうだ。

まず、封じ込める(八戸宮子)の名前を書いた石を祠に置き、お経を2回唱える。

その後、祠に塩をまき

炎の中にあの女を追い込む」

Bはそう言いましたが、霊体を追い込むなど、そう易々とできるとは思えません。

私はBにその事を言うと、Bは…

B「大丈夫、俺があの女を炎にぶちこむ!!」

と、自信満々に言ってきました。

私「…!?」

Bの目は本気でした。

B「楽勝だ!!勝算あり!」

まったくもってコイツは…

無謀というか何と言うか。

ですが私は、Bに付いていく事にしました。

本当に、Bならやってくれそうな気がしたからです。

次の日の夕方、

私達はあの祠に向かいました。

二の点の祠…

あの女とも、これで最後にするために。

必要な物を全部揃え、

あの祠に向かうと

何台かのパトカーと途中すれ違いました。

B「ついてるな、Aの捜査の帰りじゃねえか?」

Bが言いました。

私は後ろを振り向いただけで何も言いませんでした。

正直、怖くて仕方ありませんでした。

なぜBがこれほど冷静でいられるのか不思議でしょうがありませんでした。

もうすぐ祠に着く…

それだけで私は心臓がはち切れそうでした。

遠目に祠が見えてくるとBは車を止めました。

そして私に

「Aがやられた場所まで連れてってくれ」

と言ってきました。

私は車から降り、Aが殺された場所まで

Bを連れて行きました。

現場はカラーコーンが4つ置かれていて、立ち入り禁止のテープが張ってあり

中に入る事は出来ませんでしたが

外から中を見ることが

できました。

黒く道にシミが残っていました。

おそらくAの血痕でしょう

私はBに

「ここだ」と言うと、

Bは持ってきた花を

その場に供え

手を合わせました。

そのままBは祠の方に向かって歩き出し、祠の前でも同じように

花と手を合わせました。

車に戻り、荷物を降ろすと

さっそく私達は準備に

取りかかりました。

炎を灯す炭や薪。

八戸宮子の名前を書いた新しい石。

全てを用意し終え、

「よし、じゃあこれから始めるぞ」

と、Bが言うと

Bは前あった石を退かし、新しい石を祠に置きました。

「そんな事して大丈夫か!?」

と私が聞くと

Bはすでにお経を唱え始めていました。

もう始まっている…

改めて認識すると

緊張が体を縛りつけました。

Bが祠に塩をまき始め、薪に火をつけろと言ってきたので、火をつけようとライターを取り出しましたが、

手が小刻みに震えて、

上手く火がつけられない。

両手で持ち、やっと火をつけると

Bが塩をまき終わり

こっちに向かってきました。

B「どうだ、火の加減は?」

私「あぁ、今つけたところ」

思いの外、火は早く大きくなり、

人一人くらいは入れるくらいになりました。

B「よし、準備万端だな」

私「でもどうやって、あの女を誘き出すんだ?」

するとBは大きく息を吸い

山全体に響くような声で叫びました。

「八戸宮子出てこい!

夏川一徳(なつかわかずとく)はここにいるぞ!」

私「おい誰だよ、それ…」

Bに訪ねようとした時

突然、突風が吹きはじめ、危うく炎が消えてしまいそうになりました。

B「絶対に火を消すなよ!もうあいつが来るから」

私「はぁ!?」

吹き荒れる風から火を守りながら愚問の声をあげると、

「来た!!」

とBが叫びました。

その声と同時に

ふっと風がやみ、不気味な空気が祠に漂いました。

時間が止まったように静かな山から

ザ…ザ…

という足音が聞こえてきます。

B「来るぞ…」

私が後退りすると

足音の主が山から現れました。

私「………A」

そこに立っていたのは

紛れもなくAでした。

私「A、生きてたのか!」

駆け寄ろうとした私に、

Bが怒鳴りました。

B「違う!Aじゃない!!」

Bに言われ、振り返るとそこには不服そうにBを睨みつけるあの女の姿が…

私「うわぁあ!!」

たおれた私を尻目に

Bは女に向かって走りだし、挑発でもするように叫び続けました。

B「ほらこっちだ!夏川一徳はここにいるぞ!!」

すると女は

Bを追いかける気か、

四つん這いの体制になり

そのままBに向かって

ものすごい速さで走り出しました。

Bは炎の前まで行くと止まり、

こっちだこっちだと

女に向かって手招きをしました。

女は一直線にBに向かい距離が縮まったと同時にBに飛びかかりました。

それをBはヒョイとかわし、そのまま女は炎の中に飛び込んでいきました。

女が飛び込んだ炎は

大きく燃え上がり、

女の悲鳴か断末魔か

不気味な音が山じゅうに響きました。

B「終わった…」

私「やったのか…?」

炎のパチパチという音以外

何も聞こえない山に歓喜の声があがりました。

私・B「やったぁぁ~!!」

緊張の糸が切れ、その場に倒れ込む私達。

そのまま笑いあかしました。

B「ハハハ!」

私「そういえば、さっき叫んでたの誰の名前だよ」

B「あぁ、あれはこの祠を建てた人の名前だ」

私「建てた人?」

B「うん、夏川一徳。俺のじいちゃんだ。」

私「じいちゃん!?」

B「おう、俺の親父の旧姓は夏川なんだ。婿とりで今の名字なったけどな」

私「マジかよ、初耳だぞ」

B「あぁ、だから俺の家族の不始末でAとCが死んじまって、申し訳なくてな…」

私「あぁ、だからお前、自分が悪いんでもないのに、Cの親に謝ったり、あんな必死になって祠の事調べたりしたのか?」

B「まぁな」

私「…やっぱすげぇよ、お前」

再び笑い声が山に響きました。

時計を見ると時刻は6時過ぎ。

B「そろそろ帰るか」

そう言いBは火を消そうと炎に近づきました。

その時…

炎の中から幾つもの手が飛び出し、Bを炎の中に引きずり込みました。

B「ぎゃあぁあぁぁあ!!」

私「B!」

私が駆けつけた時には

すでにBは全身を炎に飲まれていました。

私「待ってろ!今消してやる!」

そう言い持ってきた水をかけようとした時、

力尽きたように炎が消え、灰が風に流されていきました。

私「B……」

その後、いくら灰の中を探しても、

Bの体は出てきませんでした。

BはAと同様に行方不明として扱われ

捜査が始まりましたが

今現在に至るまで

見つかっていません。

あの祠は今でも

あの山のふもとに存在しています。

怖い話投稿:ホラーテラー ネギさん  

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