これは、俺と俺の友達Aの話だ。
その日、俺は嫌な予感がしていた。
「D!(俺)ちょっとつ付き合ってくんねぇ?」
「ヤダ」
「お・ね・が・い!愛してるからぁ~」
「顔がキモイからヤダ」
「あ!!人の容姿のことを言っちゃダメなんだよ!!」
うざい。
めんどくさい。
そして絶対ろくなことじゃない。
俺を巻き込むのはやめてくれ。
・・・と思いつつ、結局巻き込まれる俺のバカ。
Aは自称霊感少年だ。そしてそれを隠そうともしない。普通、そういうのってあんまり言わなくね?まぁ、皆ネタだと思っているらしく、信じてるヤツはいなかったけど。
そしてAは俺をとあるボロアパートに連れてきた。俺らの地元の駅から電車で約1時間半。
Aよ。どうでもいいけど遠いわ。俺の電車賃、往復で1.560円払ってくれんだろうな?
そしてAはアパートの集合ポストのひとつを開けた。そのポストにはダイヤル錠がついていたけど、Aは暗証番号を知っていた。そして中から鍵を取り出し、アパートの階段を上り鍵を鍵穴へ・・・・・ってちょっと待てい!!!
「A!!」
「なに?」
「お前んチ?」
「いや。」
ですよね。
お前んチ、俺んチのナナメ前にあるもんね。
「知ってる人?」
「いや」
おまっ・・・
それって不法侵にゅ・・
ガチャ
玄関が開いた。
Aは部屋に入っていく。
俺も入ろうとしたけど、やめた。その部屋はゴミ屋敷顔負けの凄まじさだった。Aはゴミをかき分け部屋の押入れの前で立ち止まった。
「おい、D!ちょっと来て手伝ってくれ」
・・・いやだ。
すげぇ嫌な予感するよその押入れ。
だけど、俺は覚悟を決めて部屋に入った。
Aは俺に黒いゴミ袋を渡し、口を開いておいてくれと頼んだ。俺は言われるがままゴミ袋をスタンバイ。
俺の心臓はバクバクしていた。
この押入れの中には、何が入っているんだよ。
「じゃあ、開けるぞ」
「おっ・・・おう}
そしてAは勢いよく押入れを開けた。
押入れの中から出てきたもの・・・それは、
『若奥様の情事』
若奥様の情事・・・?
エロDVDだった。
まぁ出てくるわ出てくるわ。
ってかどんだけ若奥様好きなんだよ。
Aは無言でエロDVDをゴミ袋に入れていく。
そして全てのエロを入れ終わると、押入れの奥から、キレイにラッピングされた包みが出てきた。
その包みはだいぶ前のものなのだろう、かなりホコリをかぶっていた。
Aはその包みを丁寧にはがしていく。
何が入ってるのか。
俺も興味津々で見てた。
中からでてきたのは、
エプロン。
白いフリフリのエプロンだ。
ま、まさか、若奥様プレイか???
俺はさっきと違うドキドキを感じていた。
Aは包みを丁寧に元通りにすると、
「次、行くぞ」
と言った。
それから、若奥様達をゴミ置き場に捨て、電車とバスを乗り継ぎさらに1時間。
たどりついたのは、さらにボロいアパートだった。
Aは、とある部屋のインターホンを押す。
ピンポーン。
すると中から知らないばぁちゃんが出てきた。
「・・・どちら様?」
「こんにちは!!突然すみません!!あの、俺はAといいます。こっちは友達のDです!」
俺はなるべく関わらないように、ちょっと遠い所にいたんだが・・・紹介されてしまったので渋々挨拶した。
「はじめまして」
「何の用ですか?」
ほら。ばぁちゃんめっちゃ怪しんでるよ。
だが、ミスターKYは構わずしゃべる。
「あの、今日は○○さんのお使いで来ました」
「○○の?」
「はい!」
「それにしては、ずいぶんお若いのね?」
「あ、俺達バイト先で○○さんにお世話になってて。なっ!?」
「あっ、はい!!めっちゃお世話になってます!」
・・・俺のバカ。
また嘘ついちゃったよ。
ってか○○さんて誰だよ?
「あの、それで、これを渡すように言われてて」
Aは、あの包みをばぁちゃんに渡した。
「それは、○○さんからです。○○さんは忙しくて来れないので・・・あと、お父さんの法事の時、約束やぶってゴメンって言ってました。」
「あの子は元気なの?」
「はい!」
「そう・・・」
ばぁちゃんは涙をうかべていた。
帰りの電車内。
俺とAはしばらく無言だったが、俺は気になることがあった。
「A、○○さんって誰だよ?」
「お前の間の前にいるオッサンだよ」
マジか!!!
ガラガラの車内。
俺の目の前には誰もいない。
「何言ってんの?」
「今もいる」
マジかぁぁぁぁ!!!
「な・・・だって、お前、○○さんは元気だって言ってたじゃねぇかよ!」
「うん」
「本当のこと言わなくていいのかよ!?」
「うん」
「でもっ・・・」
「いいんだ」
Aは俺の前あたりを見ながら言い切った。
そして、今回のミッションは全部終わったらしい。
そっか。
今日は5月の第2日曜日。
エプロンはあのばぁちゃんへのプレゼントだったんだな。
若奥様プレイとか思ってゴメンな。
でも、あのフリフリはどうかと思うけど。
あと、もうひとつ。
「なぁ、そのオッサンが破っちゃった約束って何??」
「あ、スミマセン。それは個人情報なんで」
このヤロウ。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話