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中編3
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『八ヶ杜に七つ首ってあるでしょう?』

吉野さん(仮名)は、老人施設の窓から見える山を指差しこう続ける

『ずいぶん昔の話になるんだけどね……』

吉野さんには子供の頃の忘れられない思い出があるといいます。

それは吉野さんが小学生だった時の話――――

当時、八ヶ杜の山道は生活の要となる道で、小学生だった吉野さんにとっては通学路でもありました。

うねうねと続く山道

枝葉をひろげた木々がトンネルをつくり、日暮れ時などはその場所から別の世界に行ってしまいそうな気がしたといいます。

友人との学校帰り、虎杖や蕨・薇といった山菜を(文字通り)道草をして見つけていたのですが、草をかき分けかき分け、道を外れ更に奥まった場所へずんずん進んで行く友人に

「春ちゃんこれ以上行ったら危ないよ」

と注意して、来た道を引き返そうとした時、ふと誰かの視線を感じて振り返ると大きな山桜の根元の横に、入り口をふさいだような何かがあるのを見つけました。

「あれ、なんだろう」

「本当だ。見えてるはずなのに気づかなかったねー」

その時は道草に夢中で気づかなかっただけだと思い、帰りが遅くなると両親に叱られるのでさっさっと帰ったのだそうです。

ただ、その場所が気になっていたのも事実で、他の友達にも話そうと思っていた吉野さん。

それは春ちゃんも同じだったらしく、近所に住むガキ大将の源ちゃんと物知り哲っちゃん、梅ちゃん花ちゃんの仲良しを集めて吉野さんの家で作戦会議を開き

「明日は土曜で学校半日だから帰りに行こう」

という事になり、

その日は授業も上の空で帰りの挨拶もそこそこにあの場所へと向かいました。

「動かせないよね」

丸く細長い石が山桜の根元に斜めに倒れ、朽ちた大きな木の枝が扉のようになっていて進めそうになかったのですか

「あ、ここからなら行けそう」

小さく身を屈めて小柄な春ちゃんが根元に空いた隙間に入って行きましだ。

「この石より根っこが……」

隙間に無理やり体を突っ込み、途中身動きできなくなったガキ大将の源ちゃんはみんなより少しだけ横幅がありました。

そんな源ちゃんの手をグイグイ引っ張り、すったもんだの末にようやく全員がなかへ入ったのでした。

穴のなかは暗く何も見えませんでしたが、しばらく経つと暗さに目が慣れ、やや急な斜面を源ちゃんを先頭にゆっくり、ゆっくり下りて行きます。

先へ進むと先の方から弱い光が差し込んでいました。

「それほど距離はないみたいだね。どこか外につながってるんだよ」

手探りで一歩一歩慎重に前進していく吉野さん達

「なんにもないねー」

「秘密基地にでもする?」

などと話ながら、興味と恐怖が混じり合いドキドキしていました。

ちょうど中央あたりに差し掛かった時でした。

「足元に骸骨が転がってるかもね」

と春ちゃんがボソッと言った言葉が冗談には聞こえず、自分の前を歩く春ちゃに声をかけようとして一歩近いた所で何かに足をとられて転んだそうです。

「大丈夫?」

痛みに蹲っていた吉野さんは心配して近寄ってきた友人達の姿を見上げ、ヒッと息をのみました。

唇が震え、歯がガチガチと音をたて体にはまったく力が入りません。

『怖い』

『大丈夫』

『……ら……て』

『…が……か?』

どこからか聞こえて来る声はまったく知らない人の声で、ざわざわとした気配を感じました。

逃げなきゃ!!

そう思っても体は鉛のように重く、指先すら動かせないまま、恐怖と後悔で押しつぶされそうになっていました。

「手、つないでいこ」

それは春ちゃんの声で、蹲っていた『自分ではないモノ』と手をつないで歩いて行きます。

違う! 春ちゃんそれ私じゃないよ!

みんな待ってよ!

置いてかないで……

必死に声を出そうとしても声にはならず、ヒューヒューと喉が鳴るだけ

遠ざかっていく足音を絶望的な気持ちでききながら、ぼろぼろと涙がこぼれ、膝を抱えて顔を押し付け、気持ち悪い声も聞きたくないから耳を塞いでいました。

すみません

字数の関係でいったんきります。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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