これは僕が父親から聞いた実話です。
僕の父親はN市で市営バスの運転手をしていました。父は堅物の公務員でした。
そんな父親も今では定年退職しましたが、過去40年間働いて勤務中に一番怖かった話を聞かしてくれました。
N市には平和公園といって広大な敷地面積を誇る日本最大級の墓地があります。
それだけだだっ広いと当然敷地内には信号もありますし、バス停やら地図も設置されています。
それはある蒸し暑い夏の出来事でした…。
N市は微妙な都会ってこともあり市営バスの利用者も多く、最終バスを走らせ終える頃には深夜1時を回ってしまうそうです。
その日、父は最終バスを走らせお客さんも全員降ろし、車外の電光掲示板を『回送』にし、車内の電気を全て消しました。
回送の時にバスを走らせる時の消灯は社内の決まりです。
当然のようにその日も深夜1時を回り最終バス停から車庫に戻ろうとバスを走らせていました。
いつもは大通りを使ってゆっくりと車庫に戻るのですが、その日は母との結婚記念日とゆうこともあり(日はまたいでしまっていますが)平和公園の山の中を通り近道をしようと思いました。
自分で行動したとゆうよりは誰かに引き付けられて自然と通らなきゃいけない!と思えたみたいです。
もうすぐ平和公園へさしかかろうとした時に後方で
『カーン…カラカラカラ…』
と音がしました。
ビックリし、背筋が凍るようでしたが物体が確認でき
父『なんだ…お客さんが置いてった空き缶が転がったのかよ』
と思い一安心しました。
しかし何年働いても真夜中の真っ暗でお客さんが乗っていない広いバスほど殺風景なものはなく、40年間慣れることがなかったそうです。
その気持ちもわかりますよね?
僕たちだって深夜に一人で車の通りの少ない道を乗用車で運転してても『後部席に誰かいるんじゃないか?』と気配を感じてしまう時がありますからね…。
それがいろんな人を乗せる広いバスと考えるとゾッとします。
まだ転がった缶がコロコロと音を立てています。
『うるさいなー!ゴミくらい持って帰れよ』
と思いながら運転をしていると女の子っぽい人がバスの後方で座っているのがルームミラー越しに見えました。
『えっ!!!?』
と思い二度見しましたが、二度目の時には見えず
『今日はやばい…』と思いながらも時は既に遅く、平和公園へと入ってしまいました。
平和公園へとさしかかった途端に後方で
『クスクス…いいの?』
と女の子の声が聞こえました。
父『やばい!やばい!早く大通りに出なければ!なんでこんな道を通ってしまったんだ!』
とビクビクしながら運転をしていました。
公園も中盤へとさしかかり、左手前方にバス停が見えました。
昼に走るだけだったら慣れたバス停です。
そんなバス停へさしかかろうとしていたら、車内アナウンスが切ってあるにも関わらず…
『ピーーー、次停まります』
誰もいない車内で停車してほしかったらお客さんが押すボタンが反応したそうです。
余談ですが、車庫に着き忘れ物などを最終チェックしたときにふと思ったそうです。
『あれ?転がってるはずの空き缶がないぞ…?』
その日以来、父は回送時に平和公園を通ることはなかったみたいです。
怖い話投稿:ホラーテラー 雅也さん
作者怖話