夜の駅で電車を待っていた。
この辺りは昔は栄えていたが、
今はとうに寂れ、
見た目ばかり立派な線路を通る電車は、
せいぜい一時間に一本程度だ。
定時をとうに周り、
自分の他には駅員さえもいないホームは、
切れかけた電灯の瞬きさえも聞こえるほど静かだった。
と、突然、
プァーーーン
という警笛が、静寂を破った。
やれ来たかとベンチから立ち上がり、
切符をポケットから出しつつ、
腕時計を見た。
しかしまだ、
電車は到達するべき時間ではなかった。
はてと中腰のまま、
線路を見ていると、
ガタゴト、ガタゴト、ゴゴオーッと、
線路を走る音が近づいてくる。
しかし線路を照らす明かりは一向に見えない。
呆気に取られていると、
音だけがグングンと近づていきて、
目の前に迫り、
はたと止んだ。
沈黙の時が数秒、
流れた。
と、突然
ピィィィーーーッ!
と警笛音が響き、
再び「走る音だけ」が、
目の前を通過し、
駅を通過し、
先にある暗いトンネルに消えていった。
辺りには摩擦による、
独特の焦げ臭い匂いだけが漂っていた。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話