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中編6
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悪魔の書

俺がまだ中学生のときの話。

親父が教会の神父やってたの。

神父にしては結構ざっくばらんな性格で人気があったんだ。

まぁ俺なんて信心深いほうじゃないし、一家の決まりといえば食事の前のお祈りぐらい。

ある日、姉貴がアンティークショップでファッション雑誌くらいの大きさの、古書を買ってきたんだ。

この姉貴が結構なオカルトマニアで、その手のものに目がないわけ。

何か買ってくるたびに親父は、

親父『聖職者の娘がこんな趣味にはしって洒落にもならん』

的なことを愚痴ってたんだ。

中には、結構ヤバいものもあったらしく、親父が

親父『これは今すぐ返してこい、処分しろ』

と注意することもあった。

今回買ってきたものも、どうやら洋書のオカルトめいた本らしかったんだ。(姉貴は英語堪能)

早速買ってきたその夜、俺と姉貴(俺もむりやり付き合わされた)で、

〈悪魔を呼び出す方法〉ってのをやったんだ。

30分くらいやったかな。

特に何も起こらなかったので、興ざめして2人でTVでもみることにした。

んで夜になって、親父が帰ってきた。

開口一番に、

親父『何だこの獣の匂いは?犬でも連れ込んだのか?』

そう言うと、姉貴の部屋から匂いがすると言って、部屋に入るなりその洋書を見つけた。

親父『〇〇子(←姉貴の名前)、ちょっとこい!!』

親父はすごい剣幕で怒鳴り、姉貴と俺は急いで姉貴の部屋に向かった。

親父『…〇〇子、おまえこれがどんな物か分かってるのか?』

姉貴『いや…ただの降霊術の本でしょう?』

親父『馬鹿野郎!!

この本のカバーは本物の人皮だし、書いてあることは全部邪悪な黒魔術だ!!

いいか?

ただの黒魔術の本なら対して害はないが、

これはおそらくアンチキリストの教団か人物が本気で呪いを込めて作った本だ。

普通、人皮なんて本当に使おうなんて思うヤツは滅多にいるもんじゃない…すぐに処分する!!』

そう言うと親父は、本を取り上げて家から少し離れた教会へと向かっていった。

一時間ほどして親父が帰ってきた。

親父『獣の匂いがまだ消えてない……

お前ら、まさか本に書いてあることを何かやったか?』

姉貴が渋々、白状すると親父の平手打ちが飛んだ。

親父の暴力は初めてみた。

『オカルトにはまるのは別にいい。

だが自分が実行してどうする!!

お前は賢い子だから、知識を得るだけで満足できる子だと思っていたが……』

そう言うと親父は、泣く姉貴に、明日〇輔(←俺の名前)と一緒に教会に来なさい、といってその日の話はそれで終わった。

その夜のこと。

トイレに起きた俺がボーッとしてると、誰かが家のなかを歩き回る音が聞こえた

親父か姉貴だろ、と思いたいして気にしなかったんだけど、玄関のベルが鳴った。

3回。

夜中の3時すぎだ。

こんな時間に訪ねてくる人なんていない。

俺は玄関に見にいったんだけど、誰もいない。

部屋に戻ろうとすると、今度はトイレの[内側]から3回ノックの音が。

すぐさま調べたが誰もいない。

今度は台所から[ピシッ]という乾いた音が3回。

流石に怖くなってきたところ、親父が二階から降りてきた。

親父『悪魔は3という数字を好んで使う。

心配するな。

まだ[進入段階]だから。

[制圧段階]に移る前に…』

『ぎゃぁぁぁあぁぁぁぁぁッ!!』

親父の言葉を遮るかのように、二階の姉貴の部屋から絶叫が聞こえた。

俺と親父は急いで姉貴の部屋に向かった。

ドアを開けると姉貴がいた。

一瞬姉貴かどうか疑った。

姉貴のような姉貴のようでない者がいた。

姉貴はベッドに座ってこちらをみていたが、何かおかしかった。

数秒たって気づいたが、目が全部真っ黒だった。

白い部分がなにもない…

舌をだしていた。長すぎる……

わけのわからない言葉でわめき散らしていた。

親父『進入段階をこんなに早く終えて、制圧段階に移行するなんて……

〇輔!!

〇〇子を今すぐ教会に連れて行くから手を貸せ!!』

親父の命令で俺は、姉貴が暴れて傷つかないように手足を縛り、姉貴を担いで車庫に置いてあるランクルへと急いだ。

車内でも姉貴は暴れに暴れ、取り押さえるのがやっとだった。

運転する親父に

俺『取り憑かれたの??』

と聞くと、

親父『そうだ』

と言い、

俺『叫んでるこれ何語?』

と聞くと、

親父『正確なことはいえんが十中八九、ヘブライ語』

と答えた。

>

教会に向かう途中、ランクルで3回黒猫を轢いた。

信号が青になったばかりなのに、すぐ赤に変わったり、3回エンストした。

親父は冷静に運転し、なんとか教会に着いた。

暴れまわる姉貴を教会の椅子に縛り、親父は奥の部屋からいろいろな道具を持ってきた。

俺『まさか映画とかでやってるような悪魔祓いやんの?

やったことあんの?』

親父『一度だけある』

俺『成功したの?』

親父『そのとき1人じゃなかったんで、上手くいったと思う…』

俺『俺に手伝えることは?』

親父『人間の霊じゃないんだから、迂闊なことはするな。

〇〇子の後ろにでも立ってろ。

もし万が一、ロープを引きちぎったりしたらすぐ押さえつけろ』

そういうと親父は、よく映画でみるような[父と子と精霊の〜]的なことを読み上げて、姉貴に聖水を振りかけたりした。

聖水が顔にかかる度に姉貴は凄い形相で吼え、

姉貴(悪魔)『あの女が承諾するからいけないんだ(イエスを身ごもったマリアのこと?後で親父が教えてくれた)』

とか、

『あいつが死んだりしなければ俺たちは王になれたんだ(死んだイエスのこと?これも親父から)』

などと叫んでいたらしい。

30分ほどたっただろうか。

ふと姉貴が我に返ったように

姉貴『お父さん、助けて!!』

と叫ぶようになった。

俺が姉貴に近づいて話しかけようとすると、

親父『エクソシズムの最中に悪魔に話しかけるな!!

〇〇子かもしれんし、悪魔かもしれん。

無視しろ。』

と親父が注意した。

そして、親父は必死に悪魔の名前を聞き出そうとしていた。

名前がわかれば、悪魔の力が激減するらしい。

親父も俺もビッシリ汗をかいていた。

姉の口からは糞尿の匂いがした。

親父『汝の名を名乗れ!!!

聖なる…………の名において命ずる、汝の名を名乗れ!!』

姉貴(悪魔)『いーーーーーーーーーっいっいっいっーーーーーー』

親父が、聖遺物のキリストが死後包まれた布の断片(親父も本物かどうか知らんが、効果はあるから聖なる物にちがいない)を姉貴の額に押し付けた。

すると、とたんに黒目の姉貴が椅子をロープごと引きちぎって叫んだ。

悪魔『おまえ等は8月に死ぬ!!』

それと同時に、教会の窓とゆう窓が

『コツコツコツコツコツコツコツコツコツコツ』

と鳴りだした。

何かと思ったら、窓の外にカラスがビッシリ張り付き、くちばしで窓をつついていた。

この真夜中にカラスが一斉に行動するなんてありえない。

さすがに限界だった俺は、眠るように気絶したらしい。

気が付いたら病院にいた。

姉は脱臼してたので、あの後すぐに親父が病院に連れて行ったらしい。

俺『姉貴に憑いてたヤツはどっか消えたの?』

親父『あぁ、今のところはな』

俺『また来る?』

親父『来るかもしれんし、来ないかもしれん。

あっちの世界に時間軸はないからな』

俺『8月に死ぬって怖くない?』

親父『思ったより短時間で済んだんで、そんなに強い悪魔じゃなかったんだと思う。

下級のヤツのつまらん捨て台詞だ。

気にすんな。』

俺『結局のところ、悪魔ってなんなの?』

親父『分からん…分からんがああいうのがいることは確かだ。

一つおまえに言っておく。

今回はまだ憑依の途中だったんで、〇〇子の人格がまだ残ってたから上手くいった。

将来お前が神父になるとは思わんが、もしも[完全憑依]されたヤツに出会ったら、その時は……』

俺『その時は?』

親父『逃げろ!』

その後、姉貴にも俺にも変わった様子もなく、8月に家族の誰も死ぬことはなく、普通に暮らしていた。

三年前、できちゃった結婚で姉貴が結婚した。

その子供の体に666の刻印が…なんてオチはないが、

3歳になった息子が先日妙なことを言ったのだと言う。

『ママ、海に行くのは止めようね』

と…………。

怖い話投稿:ホラーテラー 迫狼さん  

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