澄んだ川の中で鮎が泳ぎ、黄緑色の葉が辺りに生い茂る。
側で私は鞠つきをする。ポーンポーン…と
お気に入りの赤い着物。椛の模様が描かれている。
鞠つきを止めると、川に足を入れ、ぼんやり空を見上げる。
トンボが空を飛び、夕日が沈む…ああ、もう夜だ。
私は家に帰らない。このままだと、化けたぬきか、狼か、人殺しか…幽霊なんかも出るかもしれない。
「殺される…かねぇ」
ガサガサと聞こえると、恐竜が出て来た。思わす苦笑してしまう。
(なんで恐竜?…おかしいわぁ…)
私の格好も、周りの様子も数百年くらい前の日本。明らかに、その恐竜は背景と合ってない。そのまま、私は踏み潰された。
私は昔、自殺した。学校で虐められていたから。友達5人グループでいつも行動していて、何時の間にか2人2人私に分かれ、そのまま虐めを受けるようになった。
嫌になって、面倒で…刃物を首に向けてそのまま…
目が覚めると、綺麗な衣装を着ていた。お姫様の様な。ふかふかの椅子に座って。
振り返ると、お付きの者…とでもいうのだろうか?男性が立っていた。そのまま首をソイツに締められ、また死んだ。
その後、私は沢山の人物になった。ある時は侍、ある時は幼稚園児、ある時は王様…
そして、毎回殺される。恐竜に踏み潰された今回も…
「桜ちゃんは、残酷なお話を良く書くのね」
先生に今日も書いた話を見せると、苦笑いされた。
私は、いつか小説家を目指して、こうやってノートに毎日お話を書いてる。
「そういう話書くの好きだから…幸せな話は嫌いなの。でもね、おばあちゃんにこの前ノート見せたら、このノートには魂が宿ってるって言われたんだよっ」
「本当?」
「うん。何でなんだろ…良く物に魂が宿るっていうけど、どこから来るんだろうね?」
「さぁ…でも、そのノートは大切にしないとね。もう、最後のページだけど。使った後もね」
「うん!」
イライラする、会話の内容が聞こえてきた。ああ、そういう事か…
ガキのノートに閉じ込められる、これが自殺した私に与えられた罰なんだろう。
ガキが、最後のページを書き終えた時、私はどうなるんだろう。同じ事が繰り返される?それか…他のガキの小説の主人公になるかもしれない。
でも…きっと、不幸な主人公なんだろう。
辛いとはそんなに思わない。
ただ、面倒なだけ。虐められたあの頃と同じだ…
怖い話投稿:ホラーテラー カルトさん
作者怖話