俺は高校の夏から3年程真由と付き合っていた。
今は30で立派かどうかはわからないが社会人として小さな会社で働いている。
真由と別れてから彼女は出来なかった。
俺は高校入学と同時に親の転勤で他県に引っ越してきた。
そのため高校には知った顔もなく暫く孤立していた。
そんなある日校外学習としてボランティア兼キャンプが行われその時同じ班でリーダーをしていたのが真由だった。
「木内くんはボランティアとかやった事あるの?」
「ないかな… やりたくないわけじゃないけど機会もないし探してまでやりたい程の興味もないしね」
「興味はあるけど機会がないって言った方がカッコいいのに」
真由はクスクス笑いながら言った。
「あぁ そっか じゃぁ 興味はあるよ」
「なにそれ もう遅いよ」
俺もつられて笑った。
この校外学習をきっかけに真由と仲よくなり付き合うようになったのだ。
真由もボランティアにそこまで興味があるわけではないが自分の出来る事の幅を広くしたいといろんなボランティアに参加していた。
そして俺もまた興味はないが真由と活動するのならと自然と参加していた。
そんなある日車椅子のお手伝い体験と言うイベントを見つけ真由を誘い参加した。
車椅子に身長170cm重さ65kgの人形を乗せ坂を上り下りしたり段差を通ったり とそんな体験
コースは町内1周程度で体験希望者とボランティアで来た経験者がペアで行う。
真由は年配のおばさんとペアになり進んで行く。
そしてそのまま帰って来なかった…
途中坂を下りた所で事故に巻き込まれたとの事だった。
俺がこんな体験に誘ったから真由は死んだ
俺は暫くふさぎ込んでいた。
でもいつまでもこんなんじゃいけない
きっと真由だってこんな俺は見たくないはずだ
都合がいいかも知れないけどそう考えると少し楽になれた。
そして俺は就職し同じ会社の女性と仲よくなった。
このまま付き合っても構わない
そう思えるいい女性だった
きちんと気持ちを伝えようと決心した夜
真由に合った
夢だったのかも知れない
真由は何も言わずに笑顔で僕を見ていた
真由は俺に新しい恋人が出来る事をどう思うだろうか
喜んでくれるだろうか…
いや
俺のせいで死んだ
その上新しい恋人なんて許すはずがない…
結局その女性は地元の同級生だと言うヤツと結婚して俺の恋は終わった。
それから俺は何度か恋をしたけどその度に真由は現れ笑顔で俺を見ていた。
結局どの恋も相手が結婚したり退職したりで恋は実らなかった。
そして今俺は新たに好きな女性がいる。
真由と同じようにボランティアに積極的で明るい女性だ。
可愛いと聞かれればなんとも言えないけど心の綺麗な人であるのは間違いない。
昨日真由に合った。
夢だったのかも知れない。
真由は笑顔で俺を見ている。
「真由… 俺 今好きな人がいるだ 許してくれないか?」
「許さない…」
「……」
「今度こそ幸せにならないと許さないよ」
「え…?」
「今までずっと諦めてきたでしょ? 木内くんは私がいないと何も出来ない?私が何か言わないと何も出来ない?」
「俺は… 真由が怒るんじゃないかと…」
「なんで怒るの?好きな人が幸せになるのを怒るなんておかしい」
真由はクスクス笑った。
「私はずっと これからもずっと木内くんが好き」
「俺も… でも…」
「いいの 木内くんは思い出の私を好きでいてくれればいい 他の人を好きになってもそれだけでいいの」
「…」
「ただ約束して 私を理由に自分の幸せを捨てないで」
それから数年後おれは結婚した。
結婚記念日は必ず会社を休み実家に顔を出している。
「毎年実家だけでごめん…他に行きたい所とかあるんじゃない?」
「私は実家がいい あなたの実家落ち着くしいろいろ報告しないといけないでしょ」
妻はクスクス笑いながら出かける支度をしていた。
そして実家に着き両親に挨拶をする。
荷物を置いて
「じゃぁ ちょっと行ってくる」
俺達は再び車に乗り報告に行く。
「ご無沙汰してすいません。先日夫婦喧嘩してしまいました。青がいいかピンクにするかって… くだらないですよね」
妻は笑いながら続ける
「でもまだどっちかわからないから黄色が無難って事で喧嘩は終わりました。私はきっと可愛い女の子だと思うんですよね 赤ちゃん」
妻はお腹を摩りながら微笑んでいた。
真由
今年はいい報告が出来てよかったよ
来年は3人でまたいい報告が出来るとように俺も頑張らないとな…
どこからか
クスクスと真由の笑い声が聞こえたような気がしたけど
きっと気のせいだろう
怖い話投稿:ホラーテラー 匿野名子 さん
作者怖話