中編3
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保養所

別荘地にある保養所のリフォーム工事の時、突然監督から食堂にある木製テーブルのニス塗りを急ぎで頼まれた。

全部で四つ、出来上がり次第他の保養所に持って行くらしい

俺と仕事仲間の二人で日曜日にやる事になった

日曜日ならば他の職人も入らず埃もたたない、

折角塗ったテーブルに乾く前に埃がついたら面倒臭い

朝から塗り始め一通り塗り終え乾き待ちをしていた

俺はテーブルとセットの三人掛け用の長椅子に、仰向にひっくり返って横になっていた

顔だけは椅子から出し、のけぞるように食堂の出入口を見てた

食堂の出入口の先に玄関が見える、しばらく見ていたらオジさんが入って来た

ビックリして飛び起き、慌てて挨拶のつもりで頭を下げた

「どうした?」

ベランダで煙草を吸っていた仲間が言った

「いや、誰か来たぞ!?業者の人かな?」

白いステテコのようなズボンに白いダボシャツみたいな上着、頭は少し禿げてほとんどが白髪だった

「まさか…今日は俺達だけのはずだぞ、この別荘地は日曜は仕事しちゃいけない規則だから」

「でも変なオジさんが入ってきたぞ」

「変なオジさんって志村ケンかよ(笑)」

仲間はそう言って笑ったが俺は突っ込む気にもならない

「マジだよ、見に行こうぜ」真剣な俺に仲間も「いいよ」と頷いた

食堂を出て玄関を確める、俺達の靴と業者用のスリッパが散乱しているだけだ

「裸足できたのか?(笑)」

仲間はそう言ってまた笑った

「バカ!泥棒だったらどうすんだよ!?」

俺のその言葉で仲間の笑いが止まり真剣な顔付きに変わった

「やばいじゃん!?」

玄関を抜け、通路を真っ直ぐ進むと突き当たりが非常口になってる

玄関側に玄関から二階への階段、倉庫、男子便所、女子便所となっていて

通路を挟んで大浴場が二ヶ所ある

一通り見たが誰もいない…

「二階かな?」

俺の見ていた食堂からは二階への階段は見えない

二人で二階に上がった

男子便所、女子便所、客室の三部屋、管理人用の小さな洋間、スナックのようなカラオケルーム…

全部を見たがやはり誰もいない…一階と二階の非常口にもシッカリ鍵が掛かっていた

「いないじゃん」

「おかしいなぁ…?」

「見間違えだよ(笑)」

「ちゃんと見たんだけどなぁ…変なオジさん」

「変なオジさん♪だから変なオジさん♪」

仲間は歌いながら食堂に戻って行った

俺は納得できず、また一人で全部見てみた

やはり誰もいなかった

仕事も一通り終り、帰る時に警備会社の防犯設備をセットし玄関に鍵をかけ帰った

途中で鍵を所定の場所に隠すのを忘れ、持ってきてしまった

もう家の近くだった為監督に連絡し、返却は明日の朝で勘弁してもらった

翌日、十時の休憩中に昨日の変なオジさんの話になった

「実は俺…仕事してると誰かに見られてるみたいなんだよね」

と大工さん

「俺も建物の中入ると何か落ち着かなくて気味悪いさぁ」

電気屋さんが続ける

俺達二人が建物の中に入ったのは、初日の打合せ以来昨日が初めてだった

大工さんが

「あのさ、昨日か一昨日誰か子供が来た?」

「昨日はわかんないけど一昨日は誰も中には来なかったよ」

電気屋さんが答える

「昨日も来てないよな」

仕事仲間が俺の顔を見ながら言った

「なんで?」と俺

「う〜ん…階段のさ踊場の壁に子供の足跡があんだよね…」

みんなで階段を見に行き確めた

確かに付いている、二メートル程の高さから十五センチ位の小さな足跡が

まるで壁を歩いたように三ヶ所…

「昨日あった…?」

俺が仲間に言うと

「わかんねえ、気付かなかった…」

頭を振りながら仲間が答えた

「誰かが鍵を開けて悪戯したとか…」

電気屋さんが足跡を見ながら言った

「鍵がないよ、俺達が持って帰ったから」

俺も足跡を見ながら答えた

続きは機会がありましたら…。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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