友人と車で海岸沿いの道を走っていた。
夏休み前の曇りだったので海水浴客はまだいないだろうと思っていたが、結構な人出。
水が冷たいのか海に入っている人はいなかったが、どうといったことのない平凡な海辺の風景だった。しかし私はその光景にかすかな違和感を覚えてもいた。
やがて海岸が見えなくなった頃、助手席の友人が聞いてきた。
「気付いたか?」
先ほどまでの陽気な口調とは異なり、その面もちはいくぶんこわばっている。
「海岸にいた連中、みんな海の方を見ていなかった。立っている者も座っている
者も、全員海に背を向けていたんだ…」
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話