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いわくのない部屋〜gluc編〜

中編3
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いわくのない部屋〜gluc編〜

ちょっと流れに甘えました。動物園のときは参加できなかったもので。

またか、イライラする。

「(引越しは業者に任せます!)」

電話の向こうで女性が怒鳴る。

「分かりました。…でもあの部屋にいわくなんて本当にありませんよ?噂なんて気になさらない方か…」

「(出たんです!本当に!神社にもお寺にも行ったんです、でも何も憑いてないすよって、もうあの部屋しかないじゃないですか…。)」

今度はすすり泣く声が聞こえる。

幽霊が出るといって出て行く人はこれで何人目だろう。

「恐縮ですが、どんな幽霊だったか教えてもらっていいですか?いや、ほら、お払いの参考にでもなればと思って。」

「(…老婆が、出たんです。最初は部屋の隅でじっとしているだけだったんですけど。最近は部屋中を動き回るようになって、この前なんて夜中に目が覚めたら私のこと覗き込んでたんです。気持ち悪い笑顔浮かべて!)」

嗚咽で息をするもの辛そうだ。最後に見たやつれた顔が目に浮かぶ。

「すみません、ありがとうございました。」

受話器を置くと同時にため息がでる。

また老婆か。でもあの部屋にお年寄りが住んでだことは無いし、あのアパート自体そんなに多くない。入院だったりホームに行くとかで退去した人はいるが、部屋で亡くなった人はいないし。

「そもそも、あのアパート結構いい家賃だからいわくのありそうな人自体住んで無いんだけどなあ。」

もう呆れて笑えてくる。

そのとき来客を告げるベルが鳴った。

「いらっしゃいませ。…お婆ちゃん、またきたの?」

「お花が綺麗に咲いたから、またお店に飾ってもらおうと思ってね。」

「あぁ、いつもありがとう。ホントよく手入れされてるなあ、よくベランダでこれだけ育つね?」

「そりゃあ手間をかけてるからね。それにしても、お隣また引越しかい?」

「そうだけど、なんでそのこと。」

「いやね、お隣が騒がしいと思ったら引越し屋さんがねぇ。」

「え、参ったな。…教えてくれてありがとう。ごめんねお婆ちゃん、ゆっくりしていって。」

お茶でも出してあげてと事務の女の子に声をかけて急いでアパートへと向かう。

あの部屋は幽霊が出るとアパート中で噂になっている。しかし子供が走りまわるとか、女がすすり泣くとか支離滅裂だ。所詮思い込み、良くない噂の部屋に住めばそりゃ参ってくるさ。人の入れ替わりが激しくなれば噂もまた、もう悪循環だ。一度本当にお払いでもすれば噂も収まるかな。

「それにしても部屋を歩き回る老婆か、あのお婆ちゃんとはえらい違いだな。ま、話し好きすぎるのが玉に傷だけど。」

費用はどれくらいだろうなどと本気で考えながら道を急いだ。

「怖いわねぇ、あの部屋に幽霊が出たんだよ。」

「そんなこと無いわよ。そうだ、このお菓子おいしいよ?」

「本当だってば。」

「じゃあ、どんな幽霊がでたの?」

「何だかね、男の人の声が聞こえるの。前に挨拶してくれた彼氏さんとは違うのよ。あんな良い子が浮気するわけ無いでしょうし、きっと幽霊だったのよ。」

「わかったわ。作業そんなにかからないと思うからそれまでゆっくりしてね。」

「ありがとうね。ところでねぇ……」

怖い話投稿:ホラーテラー glucさん  

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