これは先週末のお話です。
天気はあいにくの曇りでしたが、久しぶりに彼女と二人で海水浴場にキャンプに行きました。
場所は地元民しか知らない様な超穴場スポットです。
あまり人が来ない上に、捨てられているゴミも少ないので、僕のお気に入りの場所でした。
現地に到着し、テントを張ってバーベキューと花火を楽しんでいると、すっかり深夜になっていました。
寝る前に砂浜を散歩したいと、彼女の提案で手を繋ぎながら深夜にの砂浜を散歩していた時です。
…馬鹿じゃねーの
…ぎゃはは
笑い声が聞こえてきます。前方の砂浜で数人の若者が馬鹿騒ぎしている様でした。
暗闇の中だったので、ハッキリと姿は見えないのですが、うっすらと人影が見えます。
彼女「ねぇ、酔ってるみたいだよ?」
ちょっと関わりたくない雰囲気だったので、少し若者達を避ける様に遠回りしました。
丁度、彼らの横を通り過ぎようとしていた時です。
バシャッ
バシャッバシャッ
「あはは何やってんだよ」
「ばーか。戻ってこいよ」
一人の若者が、真っ暗な海に入っていくのです。
そしてその若者を連れ戻そうと、次々と仲間達が海に入っていくのです。
思いがけない光景に、僕と彼女は足を止めて、若者達を見ていました。
バシャバシャバシャッ
「あはは待てって」
バシャッバシャッ
「ぎゃはは馬鹿だ〜」
バシャッ
バシャ…
…
…
僕「…あれ?」
若者が全員、海に入ってから数分が経った頃でしょうか…
海水を掻き分ける音も笑い声も聞こえてきません。
しーんとした静寂が辺りを包みました。
彼女「ヤバくない?」
警察に電話しようかと携帯を見ても圏外です。
これはマズイと海に走り出しました。
僕「おーい!大丈夫か!」
僕が海に一歩足を踏み入れた時でした。
彼女「ちょっと待って!」
後ろから彼女が凄い剣幕で、僕のシャツを引っ張ります。
僕「何?今の見てたろ!」
彼女「いいから!」
彼女に引っ張られ、若者が居た場所まで連れて行かれた。
彼女「これ見て!何もないよ!」
彼女が言う様に、若者達が居た筈の場所には、お酒や彼らの持ち物が一切ありません。
確かに少しおかしいとは思いましたが、こんな理由で僕を止めたのと納得がいきませんでした。
僕「…だからって!」
その言葉を遮る様に彼女が続けます。
彼女「違うの!ないの!」
取り出した携帯電話のライトで彼女が砂浜を照らしました。
…
ソコには、ある筈の若者達の足跡がありませんでした。
海に向かう足跡も、僕と彼女だけです。
真っ青になりながら、彼女と顔を見合せていた時です。
海から…
「お〜い」
「こっちだよ〜」
「早くこいよ〜」
…と先ほどの若者達の声がしました。
僕たちはダッシュで走り出し、テントも放置して車で逃げました。
近くのコンビニの駐車場で夜を明かし、ヘトヘトになりながら帰ってきました。
家に帰ってきた途端に、彼女がポツリと呟きました。
彼女「ねぇ…もしアレが生きてる人間だったらどうしよう?」
僕「…まさかぁ〜」
今度はその一言が引っ掛かり、ドキドキしながらテレビのニュースをチェックしています。
幽霊…
…だよね?
以上です。最後までありがとうございました。
怖い話投稿:ホラーテラー 店長さん
作者怖話