「小学校の修学旅行で買ったものなんだけどね」
彼はポケットから、…何かはわからないけど、綺麗な白濁色の石のキーホルダーを取り出して見せた。
「綺麗だろ?オレのお気に入りなんだ(笑)
ただ…前はもっと、透き通るような…透明な石だったんだ」
そう言うと彼は語り始めた。
「オレさ、18の夏頃、少しだけ遊びまくってた時期があったんさ。
もちろん家になんて帰らなかったよ(笑)
花火したり、海で泳いだり飲んだり、まぁナンパは成功しなかったけどさ(笑)
んでな、夏も終わりだし、何か伝説…と言うか思い出だな。思い出作りをしようってことになってさ。
ある心霊スポットに向かったんさ…」
メンバーは
免許持ちで親がアマアマ、親の車乗り回しまくりのA
チョット頭が弱くてオレにライバル心燃やしてたB
Aの彼女のC子
向かった先はそこら近辺じゃ有名な、○○市民の森
森というより林な感じの、緑溢れる広場だ。
日中は市民の集う憩いの場。まさに「市民の森」なわけだ。
…だかそこは、陽が落ちると裏の「シミン」が顔を出す場所でもある、と。
(なんでも、裏手に殉職者やらの祠だか社だかがあるとか)
「深夜一時の中頃、オレ等はそこについたんさ。
回りは林と果樹園とかで、なんか『いかにも』なかんじだったよ……」
………肌寒い。
夏も終わり、といってもまだ9月。
この前夏休みが終わったばかりで、まだまだ夜は寝苦しい。そんな日々のなか、この一角は、違う空気を発していた。
さっきまで乗り気だった皆も、空気の変化に気付いたのか外に出ようとしない。
「早くいこうよ。ラチあかんし」
オレは少しビビリながらも、この押し黙った雰囲気がに耐えられず口を開いた。
「はぁ?フザケンナ、オレはヤだよ!お前が行けよ!!!」
キレ口調で返すのはA。彼女の前だというのにビビリ気味でオレに言う。
オレは腹が立ち
「ビビリは黙ってまってな(笑)」
とだけ放ち、林の獣道に入っていった。
二分ほど歩くと、道はなくなって、すでに回りに光源はない。
遥か後ろに入り口が見える。
頼りは木々の間からみえる月明かりと、握り締めた懐中電灯。
「ほんと…もう逃げたい…」
独り言も虚しく響き、更に「孤独」を意識させる。
「……ぃ……ぉ…い」
前方から何か声がする。
「ぉぉ…ぃ、ぉ〜い」
…?呼んでる?
誰が?あいつらか?
後ろには何も変わったことはない。第一何かあったらケータイにかけるはず。
「誰か……いるんですかぁ…?……なんてな居たら逆に怖いだろ(苦笑)」
「おいっ」
鳥肌がたった。
耳の、いや、顔のすぐ右側から声がしたのだ。
反射的に身を引き、右を見る。
社だ。
?????
一瞬放心し、ハッと我に帰り、先ほどの声を思い出した。
先ほどまで自分がいた場所を見ると…
なにか…影のような…
細長い、うにうにうごめく何かが『居た』のだ。
「玉さえ……」
ソレは何か言っていたみたいだったが
直感で「引き込まれるっ!」と感じたオレは、道無き道を猛ダッシュで引き返した。
車に着いたオレの言葉にできない、慌てた様子に少し戸惑ったが、Aはハッとした後、何も言わず急いで車を出した。
帰り途中、Aはゆっくり口を開いた。
「…お前、大丈夫か?」
いきなりの質問に言葉につまった。
「お前が出てきた所から人影みたいのがいっぱい出てきたぞ」
絶句
あそこで逃げてなきゃ…オレはどうなっていたんだろう?
………
「んで、家に帰って落ち着いて服を見たら右側だけ妙に汚れてんだよな。
いつもジーパンの右につけてる『コレ』の周り以外」
「まぢですか。つまりその件が石の色の変わった原因だと」
「そ。そういうこと(笑)因みにそのあとAは何回か見通しのいい一本道で仕事って廃車にしてる」
「ぇえっ!?…で、でもよかったですね。それもってなかったらどうなっていたんだか」
「…どうだろうね」
「えっ?」
「見てごらん…ここ。
ヒビ入ってるの…解る?」
「…あっ!」
「あの日を境にこの石に起きた変化は色だけじゃないんだよね」
「ちょ…コレって…不味くないですか…?」
「もうすぐ割れちゃうっぽいよね」
ミシッ
暗い闇と心臓の音がボクを支配した。
怖い話投稿:ホラーテラー ダテコさん
作者怖話