ボクがレストランサーヴィスやってた時の話なんだけどね。
そのレストランで大分『先輩』だったボクは、月末ということもあり、倉庫の整理をしてたんだ。
場所は客室階の一階、ちょうどレストランの裏のエレベータを降りてすぐ右手なんだけどね。
そこがまた嫌な感じでさ。一階っつっても箱根の山だろ?傾斜にたってるわけで、その倉庫がある場所は完全に『地下』にあんのさ。
つまり昼間でも夜でも、関係なく真っ暗なんだわ。
全ての業務が終わり、やっと倉庫整理ができる。
時計を見ると『10時半』少し遅いが仕方ない。
サッサと片付けちまおう。
使わなくなったディスプレイ等、邪魔になるものをワゴンにのせて、ボクは倉庫に向かった。
倉庫の中はカビ臭く、電灯も部屋の真ん中に裸電球がひとつ、というイカにもタコにも、といった具合だ。
ボクは倉庫のドアを持ってきたワゴンで止めて、電気のスイッチをつけた。
作業を始めて20分弱。
なんだ思ったより早く終わりそうだな。
やっとこの薄気味悪い空間から解放される。
安堵の吐息を洩らした、刹那。
「…クッ……クックッ…」
ボクの耳に届いたそれは、例えるなら『圧し殺した笑い声』
もしくは音がでないように慎重に物をうごかしたような、そんな音。
考えすぎると怖くなってしまうので、思考をシャットダウン。
止めていた手を動かそうと荷物を見た
そのとき
バンッ!!!バチンッ!!!
辺りは闇に包まれた。
先ほどまで開けていたドアも、点けていたはずの明かりも。
ボクは慌ててドアを開ける。
人影はない。足音もしない。ただエレベーターの稼動音だけが聞こえる。
「…同僚の……イタズラ…?」
無理やりそう解釈して、ドアに手を伸ばす。
電気を点ける。
ふと疑問がのこる。
ドアが閉まる…電気がきえる。
そう、手順がボクと同じ。入ってきたボクと…
つまり…………
「……クックッ…」
作業もソコソコ、急いで外に出て、鍵を締め切りエレベーターに走る。
ボタンを押し、すぐに開いた扉のなかに飛び乗った。
高鳴る鼓動に、焦る思考に。
ボクは落ち着けと唱え続けた。
考えてみてよ。
さっきのエレベーターの稼動音…
どこに行っていたの…?
だって…
ボタンを押したらすぐに空いたじゃない…?
人影も………
見えない誰かが………来た…のか…?
キィ……
レストランに着くと、非常灯のみの薄暗い空間に
ワゴンが揺れていた…
そういえばオレの持っていったワゴン……
ドアを開けていた筈の………
キィ…
ここで記憶は途切れている。
怖い話投稿:ホラーテラー ダテコさん
作者怖話