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中編6
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幽霊トンネルと神主

高校生の俺達はよく夜中から朝方になるまで遊んでいた、何をする訳でもないが他愛もない話でよく盛り上がってた

皆も経験があるかもしれないが、そんな夜を過ごす内に何回か肝試しに行こうと盛り上がることがあったはず、当然俺達にもあった

今回集まったメンバーは5人 仮に俺を省いてA B C Dとする

行き先に決まったのは大阪南部のとあるダム

かなり有名なので分かる人には分かると思うが、そこのダムを越えた辺りに幽霊トンネルと呼ばれる場所があった

噂は様々でいくら進んでもトンネルから出られないだとか、途中でエンジンが止まり子供の霊が出たとか、頭がおかしくなったとかいわく付きの場所だった

悪ノリした小僧を止められるものは何もない、「ジャン負けが懐中電灯一本持って歩いて行く事な!」とかバカな事を言ってた

調子に乗ってる時代なので無免でCの父親の車を拝借してトンネルに向かった

ダムに着くまでは結構距離がある、山道をひたすら進む

街灯の一つもなく車のライトを消せば辺りは漆黒に染まる、途中にある古びた電話ボックスを横切ると寒気がした

その電話ボックスも実は良からぬ噂のある場所だった

正直その辺から嫌な予感は漂ってた・・・・

ダムに着いた、もうすぐトンネルに到着する。夜のダムは一層不気味で俺達は言葉を失った

虚勢を張りたい年頃なので誰も怖いだの帰りたいだのは言わなかったが、皆そう思ってたんじゃないかな

そして俺達は幽霊トンネルに到着した

トンネルは俺達が絶句するには十分な存在だった

生憎霊感なんてものは持ち合わせちゃいないつもりだったが、五感が全力でトンネルに入ることを拒否した

ジャン負けが歩きで入るとか言ってたが、そんな事は不可能だと皆が瞬時に悟った

しかしながら折角来て引き返す手はない、俺達はビビリながらも車で侵入した

車内にも関わらずトンネルに入ると温度が下がった気がした、誰が書いたかは知らないが不気味な落書きにすら恐怖が過る

このトンネルはそこまで長いはずはないが、中々出口に着かない

Bは叫んだ 「何かヤバイ!これ以上進むな!!!!!!!!!」

そう言われてもトンネルでUターンなど出来るはずがないし、Bは日頃からヘタレだったので馬鹿にしながら先に進んだ

しかしBは 「やめてくれ!!!何かおかしい!!!!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!!!」

そう言いながらBはガタガタ震えだした

Bの異常な様子に流石の俺達も危険を感じた、Cは慣れない運転でバックでトンネルを出ることにした

慣れない事もあって、ゆっくりしたバック出来ない

その間ずっとBは叫び続けた 

「ヤバイ」から 「助けて!!」に言葉が変わっていくBを見て俺達は泣きそうだった

完全にパニック状態で俺達は取り合えずCを急かした

Cもパニック状態で 「気ぃ散るから黙っとけ!!」と怒鳴り散らしていた

その時Dが悲鳴にも似た声で叫んだ 

D 「おい!あそこに誰かいてる!!」

そこには割烹着の様な物を着込んだ老婆がいて俺達をじっと見つめていた

手には何やら鎌の様な物を持っている

俺達は叫びながらただひたすら怯えトンネルを後にした

帰りの車中 Bはずっと「寒い・・・」と言いながらガタガタ震えていた

結局その晩は皆でCの家に泊った

本当ならそのトンネルの話を面白可笑しく話してるはずなのに、誰もその事を話さなかった

Bは少し落ち着いたみたいだが、真っ青な顔で寝込んでしまった

その後、俺達は不安でしょっちゅう連絡を取り合った

俺達は何事もなく過ごしたが、Bには色々不幸が重なった

真っ直ぐな道なのにバイクでこけたり、信号無視して来た車に撥ねられそうになったり、40℃の熱を出したりと

Bは完全に怯えきって御祓いに行きたいと言った

御祓いは結構高いと聞いた事があるので微妙だったが、少し責任を感じた俺達は各自1万円ずつ持って一緒に着いて行く事になった

何より俺達も一緒に行った手前少し不安だったんだ

Aが悪霊退散で有名な寺がある という事で俺達はそこに向かった

神社に入れば 【厄払い】 と大きく書かれた垂れ幕があったので期待して中に入った

掃除をしていた若い巫女さん?がいたので早速神主さんを呼んでもらう事に

30分以上待たされて段々痺れを切らした頃に神社から白装束に身を包んだ初老の男性が出できた

早速事情を説明しようとBが近寄った矢先に、葉っぱがついた棒でBをさっさと払うと

「はい、もう大丈夫」と言い捨てるとその場を去ろうとした

Bは当然食い下がった

 

B 「いやちょっと待ってください、まずは話を聞いてください!」

神主 「聞かなくても分かる、払っておいたからもう大丈夫」

B 「え?払うという事は何か憑いてるんですか!?ちゃんと見てくださいよ!」

その時に神主は微かに 「あぁもう!」と呟いたのを俺は聞き逃さなかった

Bは矢継ぎ早に事情を説明した

~ダムのトンネルに行った事、その時に全身が寒くなり震えが止まらなかった事、老婆を見たこと、それから色々な災難に遭っている事

神主は何やら呪文の様なものを10秒程唱えた後にBの背中をバンバンと二回叩き 「危ないところに行かない様に」と言い、また去ろうとした

当然納得出来るはずもなくBだけではなく俺達も食い下がった

俺 「遠い所から来てるんですよ、実際Bには何か憑いてたんですか?詳しく教えて下さい」

神主 「低級な霊が憑いてるだけだよ、少し払えば逃げて行ったよ」

B 「じゃあこれからは何も起きないんですか?ちゃんとお金も持ってきてます。除霊にお金がいるなら払います、幾らですか!?」

神主 「あのね・・・・」

全員 「お願いします!!!!他に頼るところがないんです!!!お願いしま・・」

と言い掛けた所で神主が急に叫んだ

神主 「やかましいんじゃお前ら!!!!!!!!!!!!!」

いきなり怒鳴られ俺達は思わずビクッとした

神主 「どいつもこいつもいい歳してアホな事ばっかり言いやがって!ホンマにドアホ共が!」

そして続けてこう言った

神主 「幽霊なんかおる訳ないやろアホ!!!」

俺達は5人でハモった          「え?」

神主 「この世は命あるもんの世界じゃ!それやのにいい歳した奴らが幽霊や何やとピーピーいいやがって!毎回お前らみたいな奴がアホ話持ってきてうんざりしとんじゃ!」

「ええか!よう聞けよ!そのトンネルの事はわしも知っとる!夜のトンネルが怖いのは当たり前じゃ、気持ち悪ぅて寒くもなるわ!老婆を見たとか言うたな?あのトンネル抜けたら村があるんじゃ!人が通る事もあるやろ!」

俺 「でも鎌みたいの持ってこっちを見てましたけど・・・」

神主 「山道やからな、邪魔な草とか木を切りながらやないと進まれへん道もある!見とったんはお前らがアホみたいにギャーギャー騒いどるからやろ!」

B 「じゃぁ俺に不幸な事が起こるのは何故ですか・・・?」

神主 「偶然じゃ!ちょっとお前らこっち来い!」

そう言って連れて行かれた先で800円のお守りを買わされた、頭を下げて帰ろうとしたその時、Aが神主に質問をした

A 「あの~ 生きてるもんの世界で幽霊はいない・・・という事は神様とか仏様は?」

神主 「え?

おるよ・・・・」

このじじぃ・・・・・・

800×5=4000円

あの金がビールに化けて生臭坊主の胃に入ったかと思うと何やら体が熱くなる

でも10年過ぎた今でもあの神主は俺達の話題に上がる

強烈なおっさんだったよ

怖い話投稿:ホラーテラー SRさん

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