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私は派遣で今有名所の窓冊子会社の工場で働いているんだが、実はここ
地元のオカルトブログとかに名前が出るくらい評判のスポットで、私も初出勤の時は正直ビビりまくっていた。
でも、幸か不幸か霊体験などは先日まで全くせず、「まぁ所詮噂か」程度に思っていた。
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雪が融け夏が近くなってきたせいか、窓冊子関係も今時期から最盛期を迎える。ので、今まさに凄まじい程忙しい。
私がいる部署(工場内では"ライン"と言うのだが)は新設部署なせいか不備も多く、余計に毎日忙しい。
私は派遣だが、1人でも欠けると厳しいので毎日23or1時過ぎまでの残業を余儀なくされていた。
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あの日も1時過ぎ(確か半を回っていたかな)まで残って作業し、「切りの良い所で終わらさせて下さい」と上司にワガママを言って
サービス残業で30分程残った。区切りの良いところまで出来たので、早速事務所で残務処理をする上司の所に足を向けた。
最後の休憩が22時だったせいもあり、小便を催したのでトイレに寄る事に・・・。
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時間も時間なので、当然トイレは人っ子一人おらず真っ暗。日中は作業機械が賑やかなせいで全然気にならなかったが、今は無音のせいで
忘れかけていた不気味さが脳裏に噂を過ぎらせた。
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トイレの構造は、入口入ったら両サイドに手洗い場が2つずつあり(この手洗い場の鏡が合わせ鏡でガクブル)、右手奥に小便器と左手奥に大の個室が並んでいるという感じ。
まぁぱっぱと済ませないと下半身のガクブルがヤバイなと思い小便のもとへ。そこからは頭で考えなくても身体が勝手に動くくらい手馴れた動作。
一人っきりの空間で私が織り成す滝のアンサンブルだけがこだまする。
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何事もなく小便を済ませた私は、手を洗おうと小便器側の手洗い場へ行き水を出し、そこに手をあてがう。
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「残業かい?」
背筋が凍るって表現が如何に適切な言葉かというのを私は痛感した。
自分の正面の鏡を見ると、私の背中越しに同じように手を洗う作業着姿の人が見えた。
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てっきり私は一人だと思っていたので、怖さ紛らわせに鼻歌なんぞ歌ってしまっていた。
故に素晴らしく気恥ずかしかったので、変に饒舌になっていたのを覚えてる。
私「いやーそうなんですよねーwそちらも残業ですか?」
相手「ええ、そうです」
妙に淡々と喋るというか、どこか情が無いというか、変わった喋り方をしていた。
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私「まぁ会社としては嬉しい悲鳴ってやつですから、今が頑張りどきですよねw」と、私はトイレから出ようとした。
相手「体に気を付けて下さいね」
酷く近い距離で言われた感覚、耳元くらいだろうか。吐息が耳にかかるレベルの距離だった。
はっ!と振り向いたらその人の姿は無く、その人が使っていた手洗い場は濡れた跡すらなかった。
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不思議と怖いという感覚がなく、なんかキツネに化かされたような不思議な気持ちになった。
最初に書いたように上司や同僚に話すも信じて貰えず、ここに書き込んだ次第です。
拙い文書で長々と申し訳ありませんでした。
作者退会会員