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短編1
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患者A

俺の職業は精神科医なんだが、この前ゾッとするようなケースに遭遇した。

俺の家の隣に、60代の夫婦と30歳ぐらいのその息子のAさん一家が引越して来た。

息子はいわゆる引きこもりらしく、その姿を見かけることはあまりなかった。

その家族の口からは聞けないが、そういう世間体とか気にして越して来たんだろう。

その息子は日が経つにつれ、外に出る回数も減り、いつしか全く部屋から出て来ない完全な引きこもりになってしまった。

毎晩のように、息子の部屋から母親の怒鳴り声が聞こえる。

玄関先で母親に顔合わせたりすると、笑顔で挨拶してくれるが、明らかにやつれて来ていた。

隣の息子を見なくなってから、半年くらい経ったある日、隣の父親の方が「明日家の方に来て欲しい」とお願いしてきた。

個人宅に訪問して診察したことはなかったが、近所付き合いもあったし、了承した。

そして次の日、その家を訪れると夫婦揃って出迎えてくれた。

「こちらです」と母親に案内され、息子の部屋の前まで来た。

母親が「開けるわよ!」とドアを開けるなり、「いつまで寝てるのよ!」と大声をあげながらベッドの布団を剥いだ。

その姿を見たとき、俺は驚愕した。

ベッドには、顔のない裸のマネキンが1体横たわっているだけだった。

そして、父親にこう言われた。

「診て欲しいのは、現実を受け止められない私の妻です」

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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