長編8
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山奥の廃墟

* 始めに、結構長くなると思います。長いのが嫌な方はご遠慮下さい。

上記を踏まえて、読みたい方は読んでください。

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『ジリリリリーン!』

夜の11時過ぎごろ、けたたましく鳴り出した目覚ましの音で俺は目が覚めた。

あくびをしたあと服を着替え、顔を洗って家をでる。

今日の昼の話、大学のサークルで知り合って以来、仲良くしているM達と喋っていたときだ。

ふとMが面白い噂を仕入れて来たとかってみんなに話しはじめた。

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Mは霊感など持ち合わせていないが、オカルトが大好きなやつで、たびたびみんなを集めて心霊スポット巡りなどを企画する。

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俺もオカルトが好きで、よくMについていくんだが、俺は霊感がないわけでなく、見えたり聞こえたりというくらいのことはしばしばある。

とは言うものの除霊したりとかそういった力はない。

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M曰く、隣のF県の山奥にある廃墟とのことだが、詳しくは話してくれない。

何だか歯痒さを覚えながらMに再度聞いてみるが、行く途中で話すから…とはぐらかされてしまう。

仕方なく折れた俺達は、来週から夏休みが始まることもあり、夏休みにあわせてMについていくことにした。

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…………家の前にはTの車が止まっていた。

中から顔を覗かせてるのはMだ。

Mの隣に座りぐっすり寝ているのはB。

Bは家系的にも霊感が強く、簡単な除霊などお手の物で、俺達のオカルトツアーでも非常に頼りになる。もっも本人は乗り気じゃないんだけど…

俺を含め、四人でTの愛車に乗り込み、俺達は目的地に向かった。

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高速に乗るとMがようやく詳細を語りはじめた。

以下Mの話。

廃墟っていったけど、実は……一つや二つじゃないんだ。廃村てやつ?

なんでも、第二次世界大戦あったころに、村に怪我をした兵士さんが辿りついたらしい。兵士さんの怪我は相当酷く村人達は必死に看病したんだってさ。

兵士が目を覚ましたのは、村に着いてから2週間目くらいで、身体の傷はそこそこ癒えたものの、心の方はそうはいかず、錯乱してたらしい。

治りきっていない傷だらけの身体で錯乱した兵士は、起き上がると、看病してくれていた村人達を次々に殺していった。

20人ほどの村人を殺したあと、兵士はその場にうずくまるようにして倒れた。

兵士のお腹には鎌のようなものがささってたらしい。

そんな凄惨なことが起き、生き延びた村人達も、一人、また一人と数を減らし廃村になったってわけ。

今では地図にすらのってないよ。

俺が仕入れてきた噂話ってのはこんなもんだよ。

テンションを上げて話すBを尻目に、運転手のTは若干青ざめていた………。

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青ざめたTは置いといて、一つ聞いてみた。

似たような話聞いたことあるよ。杉○村だっけ?あれもそんなような話だよね。

M[杉○村ね、昔流行ったよね。テレビとかで特集したりさ。今回のとこは杉○村とは全く関係ないよ]

そうなのか…なるほどね。ふと隣を見ると未だに起きないBがスヤスヤと寝息をたてている。

そろそろ目的地付近だ。

ガソリンスタンドで給油した後店員に道を教えてもらった。

〇〇山峠にいくの?店員は少し心配そうな顔をしていたが、親切に道をおしえてくれた。

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ガソリンスタンドから車を走らせること30分、周りには何もなく山々が続いてる感じ。

杉林に囲まれた暗い道、緩やかな上り坂を上がると、脇にそれる山道をみつけた

山道の入口には私有地に付き立入禁止と書かれた看板が、風化した姿で立ち尽くしていた。

Mに従い、ハンドルを切るT、およそ舗装してるとは言い難い山道を、ガタガタと音を立て上っていく、幸にも道幅は思ったより広く、車がギリギリですれ違えるくらい。

途中で猪や鹿なんかがでてきて、その度に悲鳴をあげる運転手のTを見て、Mと笑った。

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しばらく山道を進むと道が段々狭くなってきた。それでも普通に走る分には支障がない程度だが…

ふと隣をみると、先ほどまで寝息をたてていたBがパッチリ目を開け、車の進む先を睨んでいた。

ど……どうしたの?

思わずBに声をかけてしまう。

いや……なんでもない。

本当にこのまま行くの?

Bの言葉に少し不安な気持ちが湧いたが、ここまで来て帰るわけにもいかないと言い聞かすと、そうか…とBはつぶやき、また眠りについた。

更にしばらく上がると少しひらけた原っぱのような場所にでた。

少し休憩しようってことになり、車を止めた。

外にでてタバコに火をつける。Bも目を覚まし、並んでタバコを吸っていた。

Mはというと、周りをキョロキョロとみわたしながら、ちょっとしっこ……っていいながら少し奥の方に向かっていった。

暗闇に沈む山の中で、つかの間の休憩。

さぁ、目的の場所まであと少しらしい。

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Mの話によると、車を止めた広場からは歩いて進むしかないらしい。

何本か山に向かって伸びる細い道の中で、Mが指差した道の前に全員であつまる。

道の脇には古ぼけた祠?みたいなものがあった。

事前に準備していたポケットライトで足元を照らし、獣道と呼んでもいいような山道を4人で上っていく。Bは仕切りに肩のあたり掻くように手を動かしていたっけな…

細道に入って20分ほど歩いたあとに再び広場に出た。どうやら目的地に着いたようだ。

周りを見渡すと、朽ち果てた家が何軒かポツポツと点在している。

何十年も前に廃村になってるだけあって、中を探索出来そうな家は数軒しかない。

その中の一軒、見るかぎりでは1番大きな家の前にMははしゃいで駆け寄っていった。

3人でMに続いていくと、グルグルと葉っぱに覆われた家が姿をあらわした。

入口には木が交差するように打ち付けてあり。侵入を阻止していたが、二人ほどで引っ張ると簡単に剥がれた。

どうやら打ち付けた先の方が腐っていたらしい。

Mがゆっくりとドア?(ガラガラって横に開けるタイプ)をあけた。相変わらずにビビってるTと何か機嫌の悪そうなBを連れ、Mに続く。

家の中は暗く、嫌なかび臭さが鼻をつく。

とりあえず中を探索しようってことになって、いろんな部屋を見て回った。

これといってめぼしい物はなく、霊がでてくることもなく一軒目の探索を終えた。

外に向かい歩き出した時、後ろでBが叫んだ。

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shake

走れ!!!

慌てて全員が走りだした。半泣きになりながら走るTの後ろで、Bは走りながら自分の腕に巻いた数珠をちぎり、一粒づつ後ろにに投げている。

全員が家の外に出ると、四方八方から何か嫌な視線を感じる。

Bはずっとお経のような物を唱えていた。

ポケットから予備の数珠を取り出し、再びちぎると、俺達の周りに、円を書くようにならべていった。

恐らく結界をはったんだろう。

闇に目が慣れ始め、嫌な視線を感じる先々に目を向けると、血まみれになり、恨めしい目でこちらを睨む者が何人も見えた。

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あるものは腹を切り裂かれ臓器を垂れ流し。

またあるものは頭の半分を吹き飛ばされたかのような状態でこちらを見ていた。

発狂しそうな光景の中、Bを見ると、Bは憔悴したような表情を見せていた。

朝まで、日がのぼるまで、この数珠の外にでるな。叫ぶのも禁止。

Bがいつになく真剣な表情でみんなに言うと、Mはとても申し訳なさそうな顔でつぶやいた。

ごめん…

四人で身を寄せ、朝がくるまであいつらと睨めっこだ……。

俺とBにしかみえていないのが不幸中の幸だった。

日が昇るまであと4時間くらいか………

あいつらが何かしてこないかと、気をはりながら周りを見渡すが、こちらを襲って来るような感じはしない。

Bが突然ガタガタとふるえだした。

大丈夫か?

声をかけると小さく頷いた。

突然周りのあいつらが一斉に後ろを振り向いた。

奴らの視線の先には一人の軍服を纏った血まみれの兵士が立っていた。

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兵士はゆっくりと俺達の方へ近づいてきた。

膝が笑う……腰が抜けるってのはこう言うことか…そんなことを考えながら俺はその場にへたりこんでしまった。

Bの張った結界のおかげで、兵士は中には入って来れないものの、以前として俺達の周りをグルグルと周り続けている。

兵士が右手に持っている鉄の棒のような物が地面に擦れ、ガリガリと嫌な音を立てる。

MとTにも音は聞こえるようで、Tは今にも泣き出しそうな顔をしていた。

俺達三人がブルブル震えているよこで、Bは静かに目を閉じ、ぶつぶつとお経を唱え続けていた。

兵士の足が止まり、上体だけを倒す用にして俺達の方をじっと睨みつける。

あまりの恐怖に叫びだし、今すぐ走って逃げ出したい衝動をなんとか抑えこみ。ギュッと瞼をとじる。

これは見てはいけない。そう咄嗟に判断した。

Bのお経に混じり何やらぶつぶつと他の話声が聞こえ出した。

一人ではなく、大勢の声が聞こえる。

ゆっくり瞼を開くと、兵士の周りを取り囲む様にして、先ほどまでいた村人達が集まっている…

ふと耳に、薄れた声で、だがはっきりと声が聞こえた。

助けてくれ……

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その直後目の前で悲惨な光景が繰り広げられた。

兵士を囲んだ村人の霊達が一斉に兵士に襲いかかったのである。

ボコボコにされる兵士…村人たちは手に持った鉈や鍬などで容赦なく兵士をいたぶった。

兵士は見る見るうちにただの肉塊にされ、村人達が一斉にこっちに向きなおる。多数の視線を浴びたところで俺の意識は飛んだ…

目が覚めたころには日が昇っており、Mが泣きながら俺の手を握っていた。

Bは疲れきった顔で、もぉ大丈夫だから……

そういってくれた。

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当たりには何もなく、村人達はおろか、兵士の肉塊もなく、まるで夢だったかのように静まり帰っていた。

鉛のように重たい身体を起こし、急いで車に戻る。

俺達は逃げる様に山を後にした。

帰りの車の中、Bがあの廃村で起こった本当のことを話してくれた。

傷付き、さ迷いながらなんとか集落に着いた兵士は村人達に助けを求めた。

兵士に寝床を与え、休ませた。

その晩、兵士が騒々しい音に目を覚ますと家の周りを村人達にとり囲まれていた。

鍬や鉈を持った村人の姿を見て。兵士は悟った…

殺される…と。

兵士は咄嗟に転がっていた棒切れを掴むと、走って外にでた。

村人達に囲まれてなお、必死に応戦したが数に勝てるわけもなく、息絶えた。

兵士は助けられたどころか、殺されたのだと…

そして村人達はその大半が犯罪者であり、徴集を拒否し逃げ延びてきた人間だったのだと…

最後に聞こえた助けて…と言う言葉が、今でも耳にのこっている……。

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後日…全員でBの家に集まり、Bのお婆さんにお祓いをしてもらった。

こっぴどく叱れたものの、だれかしらに異常があったわけでもなく、俺達はまだ懲りもせずに心霊ツアーを続けている。

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こういうところには行きたくありません。

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