これは自称"霊感が強い"元担任から聞いた話です。
担任の名前は林。
林は前からよく幽霊や、それらしきモノに遭遇してきたようだ。
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その日は友達と釣りに行っていた。
釣りに行った場所は、○○県では有名な渓流を通り、さらに山の方。
友達はこの山のふもとに住んでいる。
林は初めて行く場所だった。
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朝の7時から釣りを始め、二人で他愛もない話をしながら釣りを楽しんでいた。
お昼になり、友達の家で昼食をとることにした。
友達の奥さんが手料理をふるまい、満腹になるとまた釣りへ出掛けた。
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この日はなかなか釣れず、負けず嫌いな林は
『釣れるまでは帰らねぇぞ!』
と宣言した。友達も
『よし!俺も!』
と二人で意気込んだ。
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どれくらいの時間釣りに没頭したのだろう。
辺りはすっかり暗くなり、気温も下がって寒くなってきた。
時計を見ると、もう夜の7時。
さすがに二人は諦め"後日リベンジする"と約束し、帰路についた。
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渓流へ続く道に小さなパーキングがある。
そこで林は少し仮眠することにした。
朝から張り切りすぎて、釣りが終わった途端に眠くなってしまったのだ。
2時間ほど眠り、寒さで目が覚めた。
『よし!帰るか!』
林はよく独り言を言う。
車のエンジンをかけ、山道を下りはじめた。
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行きは朝だったため気付かなかったが、渓流に沿って曲がりくねった道はなんだか不気味だった。
しばらく走っていると、歩いてる人がいた。
『こんな時間に、こんなとこ歩いてどこ行くんだ?』
独り言を言いながら、その人の横を通り過ぎた。
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その5分後。
また歩いてる人がいる。
『街まで歩く気か?まだまだだぞ』
また独り言を言った。
そしてまたその人の横を通りすぎた。
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ようやく渓流の半ばあたりに差し掛かった時、また歩いている人が。
『外灯もないのによく歩くな』
また独り言を言う。
こんな時間に、こんな暗い道を歩いている。
しかも3人も。
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追い抜き際、スピードを緩め歩いてる人を見た。
短い髪。
上下ジャージ。
顔は暗すぎて見えなかったが、なんだか違和感があった。
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どうもその違和感が気になり、友達に電話をした。
『なぁ、俺今○○渓流のとこ走ってんだけどさ。こんな時間なのに歩いてる人いるんだよ。どっかに店でもあるの?』
しかし電話口からは応答がない。
『どーした?聞いてる?』
少し大きめの声で問いかける。
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少し間をおいて、暗く小さな声で友達が聞いてきた。
『何人見た?』
林が
『さっきので3人!なんでだ?』
と言うと、友達は
『・・・はっきり・・・見えたか?』
と聞いてきた。
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変な事聞いてくるな、と思ったが
『あぁ、見えた。どっかに店とかあるのか?』
と答えた。
するとさっきより少し大きな声で
『次また人が見えても、何も喋るな!前だけを見て、とにかく街へ出ろ。街まで行けば大丈夫だから!』
と、友達が言う。
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訳がわからない。
何が大丈夫なんだ?
林は少し困惑した。
どういう意味なのか聞こうとしたが、電話が切れた。
圏外になっていた。
仕方なく、訳がわからないまま走った。
渓流の終わりまでまだある。曲がりくねっているうえに、暗い。
走り慣れない道。スピードは40kmも出せない。
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『あっ・・・』
小さく声がでた。
4人目が前方に見える。
林は友達に言われた様に、今回は独り言を我慢した。
もうすぐ横を通りすぎようとした時こっちに気がついた。
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車の方を向く。
林は見てしまった。
目が合った。
一瞬だったが、確実に目が合った。
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心臓が"ドクン"と強く脈打つ。
すぐに視線を前方に移し、スピードをあげた。
無事に通りすぎた。
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そう思っていた。
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ふと、ルームミラーを見る。
shake
いる!!!
後部座席に、さっきの人が。
顔は見えない。下を向いている。
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友達の言っていた事が頭をよぎる。
"街まで行けば大丈夫"
きっとこの事だ。
林はハンドルを強く握り、後ろを気にしつつ街を目指した。
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すると、また人が・・・
よく見ると、髪が短くジャージを着ている。
この時はじめて気がついた。
今まで見てきた人は・・・みんな同じだ。
恐怖から悲鳴をあげそうになったが"何も喋るな"と言われた事を思いだし、ぐっと堪えた。
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横を通りすぎる。
今度はそっちを見ないよう、前方だけに集中した。手と額は汗でびっしょりだった。
無事に通りすぎた!!
小さく息を『ふぅ~』と吐いたが、次の瞬間には『ハッ!!!!』っと息を飲んだ。
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助手席にいる!!!
イヤでも視界に入る。
心臓が痛いほど脈打っていた。
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早く!早く終われ!街はまだか!!
心の中で叫びながら、無我夢中で運転した。
ようやく渓流が終わる。鳥居が見えてきた。
更にスピードをあげた。
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朝はさほど気にしなかったが、渓流道の入り口には大きな鳥居があった。
黒く大きな鳥居だ。
その鳥居をくぐり、渓流の外に出た!!
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その時。
ふっ・・・と、助手席にいたのが消えた。
しかしまだ安心はできなかった。
明るい場所へ、とにかくどこでもいいから明りがある所へ行きたかった。
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少し走ると24時間営業のスーパーがあった。入口近くに駐車し、走って中へ入った。
人がいる、ただそれだけで安心できた。
しばらく店内を歩き、気持ちを落ち着かせた。
友達に電話をしようとしたが、しなかった。
まだ”アレ”の事を話せる程、心に余裕はなかった。
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林から聞いた話はここまでだ。
その後の事は教えてくれなかった。
ただ『もうあの道は通りたくない』と言っていた。
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自称”霊感が強い”元担任の林は、私が中学2年の秋、突然の転勤でいなくなった。
転勤はあの出来事が原因ではないそうだが、それ以来1度も林に会うことはなかった。
作者祐羽
読みづらく、まとまりのない文章ですいません。
クラスの全員で聞いた話なので、もし他のクラスメイトが「その後」を知っていたら追記するかもしれません・・・