これは、私の兄から実際に聞いた話で、特にオチというか事の顛末はわかりませんが、私の人生の中で唯一不思議な話だったので、投稿させていただきます。
私の兄の友人、仮にここではKとします。
Kの実家は不動産業を営んでおり、高校卒業後大学に進学することになったKは、そこで取り扱っているアパートに1人暮らしすることになった。
そのアパートというのは、学生マンションではなく、社会人や一般の方も住んでいたが、あまり人数は多くなかったそうだ。
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Kのアパートは3階建てで、ちゃんとした入口はなく、外付けの階段をあがって奥に向かって各階4部屋づつという構造だったが、各階の3号室の窓がちょうど隣の家の壁と重なり、まったく光が入らない原因となっていた。
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Kはそのまったく光が差し込まない2階の203号室に住んでおり、K宅に泊まりに行ったことのあるM曰く、常にカーテンを閉め切った状態だったとか…。
Mは高校時代からの兄とKの共通の友人である。
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そんなある日、MがK宅に遊びに行き、時間を忘れ夜遅くになってしまったそうで、そのまま泊まることになった。
その夜…
Mはたまたま深夜2時頃に目を覚ました。
コツ…コツ…コツ…
1番奥の部屋、204号室から階段のほうへ歩いて行くハイヒールの音。
Mはその時は特に気にせず再び眠りについた。
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翌朝Mは深夜に聞いたハイヒールの音の件をKに話した。
M「隣、女の人住んでんのか?」
K「ん?いや、男の人だけど?202号室だろ?」
M「ちげぇよ。204号室だよ。」
K「は?怖いこと言うなっつーの!そっちの部屋の人行方不明で今は誰もいねぇーんだよ。部屋は帰って来てもいいようにそのままにしてるみたいだけど。」
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Mが納得しないでいると…
K「じゃあ見て来いよ」
M「何をだよ。」
K「新聞受け。」
言われるままに部屋を出て、204号室の扉に目をやる。
どこにでもある扉の中央よりやや下部分にある細長い新聞受け。そこから新聞やらチラシやらが乱雑にはみ出ている。
Kの部屋に入る時はまったく気がつかなかった。
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そして、1階の階段脇にある各部屋の郵便ポストも新聞受けと同じようにチラシ類が溢れ出ていた。
明らかに人が住んでいる気配はしない。
Mは寝ぼけて聞き違いだったのかな〜とその時はそれで終わったらしい。
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またある日、MはK宅で2人で軽い飲み会をしていた。
そして知らぬ間に2人とも寝落ちしており、Mがふと目を覚ますと時計の針は深夜2時をさしていた。
ふぁぁ〜と大きな欠伸をし、再び寝ようと横になった時、
シャー!
隣の204号室からのシャワーの音でMの眠気は一瞬にして飛んだ。
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Mは瞬間的に以前のKの言葉がフラッシュバックした。
204号室の住人は…行方…不明…。
M「おいK!起きろ!」
K「…ん?なんだよ〜」
目を擦りながら言うKにMは即座に耳を澄ますよう促した。
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しかしKには何も聞こえていないようだった。
そんなわけはない!と、改めて自分も耳を澄ませるが、何も聞こえない…。
結局そのまま寝て朝を迎えたのだが、Mは204号室に対して何か異様なモノを感じるようになった。
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それからしばらくして事件が起きた。
Kが行方不明になったのである。
MはKと最近連絡がとれず、家のインターホンを押しても誰も出ないという。
そこでMはKの母親に連絡をとったそうだが、母親もKの居場所がわからず、警察に捜索願をだしていたそうだ。
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心配になったMは兄にKが行方不明になったこと、204号室の不可解なことを事細かに話した。
そこで、兄は仕事終わりにK宅に向かった。
着いた頃、時間は午後10時をまわっていた。
車からおりてアパートを眺めると、各廊下には4つ、天井から豆電球が等間隔に玄関前を照らすように並んでおり、どれも1つも切れておらず、夜中の廊下を照らしていた。
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Mから聞いた郵便ポスト。
未だに乱雑に新聞やらが飛び出している。
2階に着くと、何か近寄り難い異様な感覚がしたそうだ。
ちなみな兄には一切霊感はない。
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その時廊下の1番奥、204号室の前の豆電球が、先ほどアパート前から見た時はちゃんと点いていたはずが、まるで切れかかっているように点滅していた。
何か警告を発するかのように…。
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兄は1人怖がりながらも、Kの部屋へと向かい、インターホンを数回鳴らす。
ピンポーン…
ピンポーン…
未だに豆電球は点滅している。
兄「やっぱいねぇか…。」
結局Kは出てこず、駐車場に戻る。
車に乗り込む際、もう一度2階へ目をやると、豆電球は4つともしっかりと廊下を照らしていた。
作者セルティ
長文失礼しました。
余談ですが、スペアキーで入ったKの部屋を見た警察の方は、窓のカーテンを開けた時に、「これは良くない。」とつぶやいたそうです。
人にとって太陽の光は大切なようで、暗い部屋で生活していると、気持ちまで暗くなり、精神的に不安定になる方が多いそうです。そうなった方が、結局自殺をはかったりというケースも少なくないそうです。
Kが暗い部屋で精神的に参ってしまったのか、はたまたMが体験した204号室の不可解な現象と何か関係しているのかは何もわかりません。