短編2
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つちのこ姫

むかしむかし、あるところにつちのこ姫がおりました。

つちのこ姫は、大きな森に住んでいました。

大きな森のとなりには、小さな村がありました。

「つちのこ姫の姿は、たいそう美しい」

「つちのこ姫の声は、たいそう可愛らしい」

つちのこ姫を見た村人は、みんなつちのこ姫を褒めたたえました。

ある日、噂を聞いた殿様が村へやってきました。

「つちのこ姫はどこじゃ」

「つちのこ姫は、大きな森におります」

「連れて参れ」

殿様からの命令で、村人はつちのこ姫を探し始めました。

しかし、いくら探してもつちのこ姫は見つかりません。

それもそのはず。最初からつちのこ姫などいないのだから。

村人がつちのこ姫を探し続けて、あたりはすっかり暗くなってしまいました。

つちのこ姫はまだ見つかりません。

それどころか、村人は一人も帰ってきません。

長いこと待たされた殿様は、かんかんに怒りました。

「つちのこ姫はまだか。お前たちも探して参れ」

殿様は、お供をみんな森へと向かわせました。

お供がみんな森に着いたころ、村人の一人が殿様のもとへ帰ってきました。

「殿様、つちのこ姫を連れて参りました。」

「しかし、つちのこ姫はやんごとなき姫ゆえ、殿様から出向いてはくれませぬか。この小屋の外でつちのこ姫が待っております。」

殿様が小屋の外に出ると、村人がみんな集まっていました。

「さて、つちのこ姫はどこじゃ」

殿様が尋ねると、村人の一人が答えました。

「つちのこ姫は、わたしの娘でございます。」

「殿様に年貢を納めるために、米を食えずに死んだわたしの娘でございます。」

また別の村人は言いました。

「つちのこ姫は、わたしの母でございます。」

「薬を買うお金が無くて、病で倒れたわたしの母でございます。」

いつの間にか、村人は殿様を囲んでいました。

「つちのこ姫は、殿様を恨んでおられます」

「つちのこ姫は、殿様を怨んでおられます」

「呪っておられます」

それからそれから。

殿様はとうとうつちのこ姫と会うことができました。

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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