むかしむかし、あるところにつちのこ姫がおりました。
つちのこ姫は、大きな森に住んでいました。
大きな森のとなりには、小さな村がありました。
「つちのこ姫の姿は、たいそう美しい」
「つちのこ姫の声は、たいそう可愛らしい」
つちのこ姫を見た村人は、みんなつちのこ姫を褒めたたえました。
ある日、噂を聞いた殿様が村へやってきました。
「つちのこ姫はどこじゃ」
「つちのこ姫は、大きな森におります」
「連れて参れ」
殿様からの命令で、村人はつちのこ姫を探し始めました。
しかし、いくら探してもつちのこ姫は見つかりません。
それもそのはず。最初からつちのこ姫などいないのだから。
村人がつちのこ姫を探し続けて、あたりはすっかり暗くなってしまいました。
つちのこ姫はまだ見つかりません。
それどころか、村人は一人も帰ってきません。
長いこと待たされた殿様は、かんかんに怒りました。
「つちのこ姫はまだか。お前たちも探して参れ」
殿様は、お供をみんな森へと向かわせました。
お供がみんな森に着いたころ、村人の一人が殿様のもとへ帰ってきました。
「殿様、つちのこ姫を連れて参りました。」
「しかし、つちのこ姫はやんごとなき姫ゆえ、殿様から出向いてはくれませぬか。この小屋の外でつちのこ姫が待っております。」
殿様が小屋の外に出ると、村人がみんな集まっていました。
「さて、つちのこ姫はどこじゃ」
殿様が尋ねると、村人の一人が答えました。
「つちのこ姫は、わたしの娘でございます。」
「殿様に年貢を納めるために、米を食えずに死んだわたしの娘でございます。」
また別の村人は言いました。
「つちのこ姫は、わたしの母でございます。」
「薬を買うお金が無くて、病で倒れたわたしの母でございます。」
いつの間にか、村人は殿様を囲んでいました。
「つちのこ姫は、殿様を恨んでおられます」
「つちのこ姫は、殿様を怨んでおられます」
「呪っておられます」
それからそれから。
殿様はとうとうつちのこ姫と会うことができました。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話