そのお宅はお金持ちでも地主でもない普通の家庭で、とてもなかのいい幸せそうな家族でした。葬儀も滞りなくすみ、火葬も終わり自宅飾りを手伝っていますと、とても今の今までなかがよかった家族とは思えない、罵声・怒号が隣の部屋から聞こえました。
「誰が今まで面倒みてやったとおもってるの!」
「病院で看病してたのはウチだろ、お前のせいで親父は死んだんだ、俺がみてれば…」
「ふざけるな!お前親父に金借りてるの知ってんだぞ」
「あんたは関係ないだろ!盆も正月かえって来たことないくせに…」
聞き耳をたて聞いてみると実家の権利の争奪戦でした。(後でわかったのですが道路の拡復工事に実家が引っ掛かっていました。かなりの金額が市から出たんじゃないかな)私は失望の中、祭壇に遺影を飾りさっさと帰ろうと思った時、ドサッ
ドサッ
なんだ?
大きな音にビックリした私は慌てて居間に駆けつけて愕然としました。
一人はソファーの上にうつ伏せで、もう一人は台所で倒れていました。
今の状況が理解できず私は恐怖も何も考えられず、ただ倒れている人を上から見ていました。
「…かあさん」
小さな声が聞こえ…!そこには80歳をこえた奥さんが自分の倍はある息子の背中にしがみつき後ろから鬼の形相で首を絞めていました。
幸い皆命には別状なく警察沙汰にはなりませんでしたが、今でもあの老婆の鬼の形相と息子の腹に食い込んでいた皮と骨だけになった足が忘れられません。
まさにそれは昔話に聞いたヤマンバそのものでした。
怖い話投稿:ホラーテラー 葬儀屋さん
作者怖話