俺は自分でいうのもなんだが幽霊とかは全く信じていない方だ。
そんな俺は住むところを探すべく不動産を巡っていた。あるオヤジが「ここは訳ありなんだけど安くするよー」という。
聞く所によればどうも女の霊がでるそうで入居した人は一ヶ月と持たず去るという。
そんな話を客にするなんてマヌケなオヤジだと思いつつ月2万で2Kの部屋を借りられるという美味しい話に俺は飛びついた。元々霊等の類は信じていない俺にはそんな「訳あり」など便所の糞以下だった。
入居したその日早速その女の霊が現れた。
俺は驚いた。頭から血を流し体の関節が物理的に不可能な程折れ曲がり口からは血の泡を吹いているその様相にもだが何故かそんな異形を美しいと思う俺に何より驚いた。
思わず「お前、可愛いな」と呟くと女の霊は消えた。
俺は残念に思ったがどうせ明日も現れるだろうとその晩は寝た。
次の晩、俺は期待に胸を膨らませ霊を待った。深夜12時頃だろうか、女の霊が現れた。
またまた俺はびっくらこいた。
今晩の霊はなんと傷一つない姿だったのだ。
しかもアイドルと見まごうばかりの可愛さで胸はDはあった。
服装も洒落た感じでこのままTVのモニタに映ってもタレントとして通用しそうだ。
俺は思わず胸がどっきんどっきんとなってしまった。
すると女は何が不満なのか不機嫌そうな顔をした。
俺はとっさに「昨日のも良かったけど絶対今の方がいいって!」といった。
すると女は機嫌を良くしたのかコタツの前に座った。よく見ると足もある。
俺は「幽霊も脚あるんだね、てっきりないと思ってた」といった。
すると「私も足ないと思ってたよ」と霊も言った。
霊も喋れるのか!と驚きつつ俺はその霊と一時間くらい話をした。
どうやら女は交通事故で死んでしまったという事、彼の部屋であるここへきたが、彼は既に引っ越してしまった事、昨晩可愛いと言われて驚いた事。
今日もでてみたら何故か体は事故前に戻っていた事を知る事ができた。
それから毎晩俺達は話をした。
不思議と気があった俺は彼女にその日の出来事や自分の夢等を話した。
霊に何を話してるんだろうと考えた事もあったが気にしないで居た。
ある晩、俺はふと彼女に触ってみようとした。
するとなんと普通の人間のように触れるではないか彼女は驚いたようだったが抵抗はしなかった。俺はその仕草が可愛いと思った。
思えば彼女は幽霊になり孤独なままこの部屋で過ごしてきたのだ。
そして俺のような入居者達に忌み嫌われてきた彼女の事を思うと胸があつくなった。
俺は自然と彼女を押し倒していた。彼女は目をうるませていたが俺は無視した。
そのまま服を脱がせる俺に「ダメだよ、私幽霊だよ」と彼女は言った。
しかし俺は「俺がこれから一緒にいるから」というと彼女は黙った。
そしてその晩俺は彼女と寝た。
朝心地よい疲れと共に目が覚めると彼女はもういなかった。
そしてその晩から彼女は出なくなった。
俺はここを出る事にした。今思うと彼女の名前を聞きそびれていた。胸が痛かった。
それから俺は訳ありの物件(女が出るという噂の所)を片っ端から借りるようになった
相手は霊だが俺は女に不自由しなくなった。
霊と寝た次に日からそこに霊が出ることはなくなり俺は除霊師のように次々と不動産屋から除霊を頼まれるようになった。
今ではそれで食っていけるようになったがいつまで俺の息子がもつか気になる。
そして除霊(寝る)の後いつも最初の彼女を思い出す事に気づいた。
あれは恋だたのだろうか。生きてさえいれば、と思う。
この世に未練を残した彼女は無事に天国にいけただろうか。
怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん
作者怖話