「実家にあるパソコンを自分の部屋に移したい」
先日ボクは、友人の頼みで車を翔らせていました。
出発地点は千葉の市川市。目的地は市ヶ谷駅付近のマンションの一室。
ほぼ真っ直ぐ道なりなのだが、なかなかどうして、初めての道というものは不安になってしまうものだ。
(ボクは重度の方向音痴に加え、地図も見れません)
お昼出発だったのだが、なかなか目的地につかない。そうこうしていると、右手に大きな鳥居が顔を覗かせていた。
かの靖国神社、らしい。
まっっっったく知らなかった、
「へぇー、でっけぇ鳥居〜」
見たまんまの感想を放ち、アホ丸出しのボクの横で、ケータイを見つつナビをしていた友人が口を開いた。
「そういやこないだな、ここらの道を歩いてたんだ。予備校終わった後だからもうまっくらでさ。気付いたらだいぶ森みたいなトコにきちゃって。人も居ねぇし道もわかんねぇしで、マヂ焦ったよー」
道間違って森行くなんてあなた…童謡じゃないんだから…ナビ頼んでよかったのかな…?
などと考えつつ、相槌を打つボクを横目に、彼は話を続けた。
「でな、怖かったから独り言洩らしてたみたいなんだよね、ここどこだよ〜、って。したらさ、靖国神社って聞こえたんだ。横からさ。マヂびびったよ、イキナリだもん」
何?霊的なサムシングかまされたの?
と食い付く俺に、彼はかおの前で手を振り、苦笑いで答えた。
「違う違う!親切な人が教えてくれたんだよ。実際人居たし。ビビって変な声出しちゃったし、恥ずかし次いでに聞いたの。でもあの人何やってたんだろうなぁ。」
そこは木ばかりの、文字通り『林道』だったらしい。
「暗くて顔も見えなかったけど、親切なひともいるんだな」
そう言い、微笑む友人に心の中でツッコミつつ、車を進めた。
カチッ
道なりに進む俺の車に、聞き覚えのある音が鳴った。
ウィンカーだ…
右に出てる……何故…?
ふと目をやると、
門(というか入り口?)がある
ああ…なるほどな…。
こいつ……気に入られちゃったんだ…。
彼はウィンカーに気付いていなかった。
ボクは、ウィンカーを戻した…彼が気付かないように。
違和感を覚えなければ日常足る事象だ。
彼の中では、この話は美談で終わるだろう。
ボクは何も言わない。
怖い話投稿:ホラーテラー ダテコさん
作者怖話