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中編3
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騒音の行方

私の家の裏側に細い道路を一本挟んで、三階建のこじんまりとしたアパートがあります。

私の部屋の窓は、だいたいアパートの二階部屋の窓と高さが同じで、お互い、部屋の中が見えてしまうくらいの近さなので、ほとんどカーテンは閉めっぱなしにしてあります。

アパート側の道路は普段あまり使わないし、なぜか住人さん達と顔を合わせることが滅多にないので、

どんな人が住んでるのかな……?

と、思っていました。

建物が近いだけあって、住人の声だけはいろいろ聞こえてくるのですが、多いのは夫婦(?)ゲンカの怒鳴り合いで、女性のヒステリックな甲高い声が夜中の1、2時に聞こえるのは、かなり迷惑です。

夏場、エアコンの風が苦手で窓を開けて寝ていると、気持ち悪いくらい相手のケンカの内容が聞こえたり、とにかくうるさい住人がいたのですが、小心者の私は文句が言いに行けず我慢していました。

ある晩…というより明け方に近かったと思います、また例の夫婦(たぶん)の口論が耳に入ってきたので、

「もう、ほんっとにいい加減にしてよっ!今日こそ一言注意してやるわッッ!!」

と決心した矢先、

『キャーーッ、誰かぁっ!!助けてぇーーッ!!

 助けてぇーーーーッ!!

 殺されるーーーッッ!!』

と、物凄い叫び声が近所中に響いたんです。まさに絶叫という感じでした。

私は心臓をバックンバックンさせながら、部屋の窓を全開にし、アパートの方を見ました。

女性がキャーキャー叫びながら階段を下りていき、その後ろを男がサンダルをカタカタ鳴らして

『オイッ、待てやーっ!!』と追いかけていったのです。

かなりの大声でしたが、不思議なことに、近所の家々からは誰一人として様子を見に出てくる人がおらず、焦った私は、寝ている父を叩き起こし、

『ちょ、お父さん来てッッ!!なんか大変やわ!!』

と早口で事情を説明しました。

父はステテコ姿で表に出ていき、夫婦に負けないくらいのデカイ声で

『あんたら、夜中に何やっとるんよ〜近所迷惑やわ〜』

と叫ぶと二人に近づいていきました。

父がボコボコに殴られるんじゃ…との心配をよそに、男は

『いや、夫婦ゲンカですわ。迷惑かけてすんません…』と女性を引きずるように抱え、アパートに戻ろうとしました。

女性が興奮して泣きわめいているのを見て、父もどうしたら良いのかわからなかったんだと思います。

『ケンカ言うても、あんまり酷いことしたら駄目やよ〜。本当に大丈夫なんかぁ?』

そんな言葉を残して父は帰ってきてしまいました。

一部始終を見守っていた私は警察に連絡しなくていいのか父に相談しましたが、とりあえずしばらく様子をみることにしたんです。

男は無理矢理女性を部屋に連れ戻し、また怒鳴り合いが始まったのですが、いきなり、ピタッと話し声が止みました。

あれだけ二人共興奮していたのに、途端に静まり返って。私はあまりの急激な変化を不気味に感じました。

その日を境に、腹立だしい程うるさかった夫婦ゲンカの叫び声は全く耳にしなくなりました。

近所からたくさん苦情が来て大人しくなったのか…、いづらくなって引越したのか、理由はわかりませんが、嫌な展開になっていなければいいけど…と静かになった夜を素直に喜べない私でした。

このアパートは、出来てから大分経ちますが、何かと住人のトラブルが多くて、ちょっと怖いんです。

心霊現象とかそういうのではないですが、他にも警察が来るようなことが数回あったし。

私はあまり超常現象等は信じない質です。

でも時々、「気」というか、良くないものが集まる流れ…みたいな感覚的な事は、もしかしたらあるのかもしれないなぁ…と最近思っています。

長くなりましたが、また別の機会にアパート絡みの他の話も投稿しようと思います。

最後に。叫び声を無視する、無関心な住人って…ちょっと冷たくないですか!?

みんな眠ってたのかな…

怖い話投稿:ホラーテラー 匿名さん  

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